歪んだ世界の中で
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第七話 洋館の中でその十一
「太陽の光が大好きだから」
「そう。それにね」
「それに?」
「向日葵の皆は今楽しんでるだけじゃないよ」
「ええと。その他には」
「わかるよね。今の皆の考え」
「うん、これはね」
彼等が何を考えているのかをだ。希望はだ。
彼等を見上げながらだ。こう答えたのだった。
「喜んでるね」
「どうして喜んでるの?」
「僕達に笑顔で見られて」
それでだというのだ。
「喜んでるね」
「そうよ。笑顔ってね。皆感じるから」
「だからだね。そうだね」
「笑顔はね。誰が見ても嬉しいものだから」
それでだというのだ。千春は。
そしてだった。そのうえでだ。希望はだ。
その千春も見てだ。言うのだった。
「笑顔も。今まではね」
「あまりなかったんだね」
「笑顔になれなかったよ」
とてもだった。それは。
「友井君と。それとおばちゃんにだけはね」
「向けられたのね」
「本当に二人だけだったよ」
それがこれまでの希望だった。笑顔はなかった。
だがそれでもだった。千春は。
その希望の笑顔を見てだ。そして言ったのだった。
「けれど今は千春ちゃんに」
「皆にもだよね」
「うん、笑えるようになったよ」
そこまで変わったこともだ。今の希望はだった。
喜べた。そしてその喜びと共にだ。
向日葵達を見るのだった。そしてその感情を受けながらだ。千春と共にいた。
この日はこうして植物園で二人で楽しんだ。それを終えてからだ。
また夕方からの日課を進めた。その中でだ。彼は一つ驚くことがった。そしてその驚いたことをだ。次の日だ。間も無く退院することが決まった真人にだ。こう話すのだった。
「いや、不思議にね」
「走ることがですか」
「凄く楽になったんだよ。どうしてかな」
「毎日しているからですね」
今では身体を起こせた。そうしてだ。真人は希望に話したのだった。
「遠井君は今毎日走っておられますね」
「うん、そうしてるよ」
「毎日走っていて。体力がついて」
「体力が」
「それに鍛えられたんですよ」
「これまでそんなこととは無縁だったのに」
「それにですね」
今の彼の顔を見て。そのうえでの言葉だった。
「今の遠井君は痩せましたよ」
「僕が痩せた!?」
「はい、体重計で計ってみられればおわかりになられますが」
そのうえでだというのだ。
「遠井君、本当に痩せましたよ」
「僕が。そんなに」
「少なくともお腹もお顔も」
そういったものがだというのだ。今は。
「すっきりとした感じになってきておられますよ」
「ううん、そうなんだ」
「痩せて。つまり贅肉が落ちて筋肉がつけば」
「さらにいいんだね」
「今水泳もされてますよね」
「殆ど毎日ね」
これもだった。いつも千春とプールに言っているからだ。
「泳いでるよ」
「それも大きいです。水泳は身体全体を使いますから」
「痩せるんだ」
「それに筋肉もつきます」
「何でもないようだけれど」
「それでもです。上城君は本当に変わってきてますね」
その彼の変わってきている顔を実際に見て言うのだった。その真人の顔はとても温かい笑顔だった。その笑顔を彼に向けて。そのうえで話しているのだ。
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