歪んだ世界の中で
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第七話 洋館の中でその八
希望は見上げて。そして話すのだった。
「こんな大きなお花になって」
「草も木もね」
「大きくなるんだね」
「千年杉だってね」
今度は木の話だった。それだった。
「最初は小さな種で。それが頑張って生きてね」
「生きてそうして」
「立派な木になるんだよ」
「生きること。それ自体が努力だよね」
「木にとってはね」
千春は半ば自分のことの様に希望に話す。
「そうだからね」
「そうだね。じゃあ」
「希望も努力すればね」
「何時かは。絶対に」
「そのおばちゃんが言うみたいにね」
その人、まだ会っていないがその人のことをだ。千春はあえて話に出した。
そしてだ。また言うのだった。
「できるようになるよ」
「やればだね」
「うん。向日葵になりたいよね」
千春も向日葵達を見ていた。その大輪達をだ。
そうしながらだ。言うのだった。
「何時かは」
「できたらね。お花じゃなくても」
「それでも?」
「今よりもずっと。よくなりたいね」
何もできなくてだ。馬鹿にされている今よりもだというのだ。
「そうなりたいよ」
「そう。それじゃあ」
「うん、じゃあ今日も頑張るよ」
「そして明日もね」
「毎日やっていけばね」
変われる、希望はこのことを信じられる様になっていた。そのことに自分でも気付いてだ。
そしてだ。こうも言うのだった。
「じゃあ今日も帰ったらそうするよ」
「そうしよう。今日はそれでね」
「それで?」
「泳がないよね」
そのことはどうかというのだ。日課のそれはだ。
「プールでね」
「そうだね。今日は植物園にいるから」
「プールには行かないのね」
「行きたい?」
希望は向日葵から千春に問うた。そうしながらだ。
その明るい、向日葵にも負けないと希望が思える笑顔を見ながらだ。笑顔の持ち主に尋ねたのだった。
「そこにね。後で」
「ううん。それは」
千春は少し考えてからだ。それからだ。
明るい笑顔にその思考の色も入れてだ。そして話したのだった。
「ちょっとね」
「止めるの?」
「今日は植物園にいよう」
千春が選んだ選択はこれだった。植物園だった。
「ここで歩いてね」
「歩いて?」
「それで身体動かそう。それにね」
歩くだけでなくだ。他にも目的があった。それは。
「植物園の中にいるとね」
「植物園の中?ここにいると?」
「千春。皆と一緒だから」
向日葵だけでなく今二人がいる部屋のだ。全ての植物を見回した。身体を回転させながら。
そのうえでだ。こう言ったのだった。
「だからね。凄く楽しいから」
「凄くなんだ」
「そう。凄く楽しいから」
また言う千春だった。そしてだ。
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