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Fate/WizarDragonknight

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一緒に来てくれる方はいませんか?

「ただいま」

 喫茶店、ラビットハウス。見滝原の木組みでできた建物が多い地区の一角にあるこのお店は、先月末の被害も大きかった。
 だが、すでに営業できるほどに回復を終えており、街とともに、復興へ勤しんでいた。

「あ、お帰り」

 ハルトにそう声をかけたのは、ラビットハウスの赤い制服を着た少女だった。短い髪を頭上で黒いリボンで束ねており、明るい顔は少し暗さを宿していた。
 同年代の少女と比較して、引き締まった筋肉をしている彼女は、常連客のテーブルにコーヒーを置くと、ハルトへ駆け寄った。

「買ってきてくれた?」
「ああ。これでしょ?」

 ハルトは少女へビニール袋を手渡す。ついさっきスマホで頼まれた追加の買い足しの塩胡椒を確認した少女は、「うん。ありがとう」と礼を言った。
 衛藤(えとう)可奈美(かなみ)。ラビットハウスにて泊まり込みで働いているバイトというのは仮の姿。御刀(おかたな)と呼ばれる日本刀、千鳥(ちどり)に選ばれた刀使(とじ)である。
 可奈美が厨房に入ったのに続いて、ハルトもそのあとを追う。

「あれ? チノちゃんとココアちゃんは?」
「今日はココアちゃん入ってないよ? チノちゃんは倉庫」
「ああ、そっか。……手伝おうか?」
「大丈夫だよ。手伝ってもらうほど忙しくないから」
「ああ。そう……クリスマスの飾りつけとか、しなくていいのかな?」

 ハルトはほとんどがらんとしている殺風景な店内を見渡しながら呟いた。
 十二月もそろそろ一週間目が過ぎようとしている。だというのに、見滝原のほとんどのところではクリスマスムードになっていない。雪も降っているのに、とても寂しく感じられた。

「どうなんだろうね? 私も、飾りつけ早めにやった方がいいと思うんだけど……」
「やっぱり不謹慎かな……?」

 ハルトも同意した。
 サーヴァント、バーサーカー。その細胞より作り上げられた溶原性細胞(ようげんせいさいぼう)が町中に広がり、大勢の人々が人喰いの怪物、アマゾンにさせられてしまった。もうおおよそのダメージは回復したものの、まだまだ傷が残っている人は多い。

「……ハルトさんは、あんまり引きずっていないんだね」

 可奈美が小さな声で言った。
 ハルトはお客さん___今日も今日とて、いつものテーブル席で原稿用紙と向き合っている常連さん___から目を離す。

「……引きずっていないって言えば嘘になるけど。……救えなかった人のことをどうこう言っても、先には進めないから」
「割り切りは結構早いんだね」
「……まあ、昔救えなかったことがあって、そこから救えなかった人より、これから救う人のことを考えるようにしてるだけだよ」
「そう……私は、ちょっと難しいかな」

 可奈美は少し顔を落とした。

「せっかく木綿季(ユウキ)ちゃんと仲良くなれたのに、あんなのって、ないから……」
「……でもさ。可奈美ちゃんは可奈美ちゃんで、木綿季ちゃんのことを必死に形として残そうとしているんだから、それはそれで乗り越える方法の一つじゃない?」
「どうなんだろう……ん?」

 唯一の客が、こちらに歩み寄ってきた。
 不思議な雰囲気の小説家、青山(あおやま)ブルーマウンテンさん。会計だろうかと思うと、

「元気のないお二方へプレゼントです~!」

 博物館のチケットを手渡された。



「博物館のチケット?」

 そう首を傾げたのは、ハルトと可奈美よりも先にラビットハウスで働き始めた少女、保登(ほと)ココア。青山さんから渡され、今はテーブルの上に置いてあるチケットに興味津々の目線で見下ろしている。

「『滅びの文明特別展』? なんか面白そうだね! これどうしたの?」
「なんか、青山さんも取材のために行く予定だったんだけど、編集さんの分だけのつもりが、取りすぎてしまったらしいよ。このまま捨てるのも勿体ないから、くれたんだよ」

 ハルトは食器を洗いながら答えた。
 するとココアは頷き、

「いいね。私とチノちゃんも一緒に、四人で行こうよ! 今週日曜日に!」
「待ってください」

 元気なココアを、背の低い青髪ロングの少女がなだめた。薄い肌の少女の特徴は、何と言っても頭に乗せているアンゴラウサギだろう。

「今博物館なんてやっているんですか? この前の事件で、色々閉まっていますよ?」

 ラビットハウスの看板娘である香風(かふう)チノの言葉に、可奈美はスマホで調べていた。

「えっと……あ、この見滝原博物館、北区にあるから、アマゾンの被害あんまり受けてないらしいよ」
「そうなの?」

 可奈美の言葉に、ココアが目を輝かせた。

「じゃあ行こうよ! この特別展!」
「あれ?」

 そこで、可奈美が声を上げた。

「ねえ、ハルトさん。この特別展、チケットにはいつまでって書いてある?」
「ん? えっと……あ」

 ハルトは、チケットに記されている日付に、目を点にした。

「これ……今週日曜じゃない?」
「ええっ!?」

 ココアが悲鳴に近い声を上げた。

「それじゃ、明日と明後日しかないじゃん! そんなぁ……」
「青山さん、こういうこと確認しないで渡したのか……」
「今のシフトだと、私とハルトさんが土曜日のお休みですね。日曜は可奈美さんだけがお休みですね」

 チノが無慈悲な事実を述べた。すると、ココアがさらに白目を剥く。

「ガーン……みんなで行ってみたかったよ……」
「あはは……」
「ラビットハウスもありますから、無理ですね」
「ひどい!」
「えっと……」

 可奈美は頬をかき、

「だったらさ。チノちゃんは行ってきたら? せっかくのお休みなんだし」
「いえ、私正直あまり興味ないので」
「え?」

 チノにも断られた。

「マヤさんの検査が明日なので、それに付いていきたいんです。ですから」

 こうなっては、ハルトに次に告げられるのは一つ。

「ハルトさん。誰か連れて行ってきてください」



 聖杯戦争という戦いの場で、サーヴァントとは使い魔であり、文字通り(servant)である。それを証明するように、令呪と呼ばれる三回の絶対命令権があり、それがなくとも、サーヴァントは基本的に召喚主であるマスターに従う。

『悪い! 今日俺バイト入ってるんだ』

 だから、アッサリフラれる前例なんてあったのだろうか。

「マジか……真司さんもダメなのか……」 

 ライダーのサーヴァント、城戸真司(きどしんじ)。アマゾンの時も、事件解決のために大きく貢献していたが、平時はただの記者を目指すフリーターである。

「じゃあさ、友奈ちゃんは?」
『友奈ちゃん……も今日はバイトだ』
「バイト? 友奈ちゃんもバイト始めたの?」
『ああ。新聞配達』
「新聞配達って……そもそも友奈ちゃん、本来だったら中学生なんじゃ?」
『まあ、そこは気にすんな。それより、悪いな』
「ああ。……まあ、しょうがないよ。それじゃあ。バイト頑張って」

 それを最後に、ハルトはスマホの通話を切った。
 すでに見滝原北駅にバイクを停め、博物館へ向かうルートに入っている。このまま一人で行くのもいいが、チケットが一枚余ってしまった。

「仕方ないか。……一人で行くか」

 そういって、博物館の方角へ歩き始めた。
 博物館へは、どうやら商店街を通過していくらしい。ハルトはそのまま、見滝原北商店街と記されたアーチをくぐった。

「うわ……すごい人混みだな……」

 ハルトは、その人数の多さに舌を巻いた。
 ラビットハウスがある見滝原西の人が全員こっちに移動してきたのか。そんな錯覚さえも覚える。

「えっと……ここを真っすぐ……」

 だが、壮絶な人だかりに、ハルトはなかなか前に進めない。やがて、腕時計と睨めっこしながら進もうかとしていると、

「おお! すごい、これはすごいぞ!」

 無数の声がなだれ込んでいるにも関わらず、その強い声は迷うことなくハルトの耳に届いた。

「みたきた商店街名物! ラーメン大食い競争!」

 それは、ラーメン屋だった。それもただのラーメン屋とは言い難い。
 看板に、巨大ラーメンが名物と銘打ってあるそれは、一つ一つがとても巨大な器に盛られていた。現物は、店の前の長テーブルの上に。数えるのもバカバカしくなるほどの器に、これでもかと言わんばかりのラーメンが盛られている。


「舘島選手! ダウン! 紗倉選手、ダウン!」
「お……お願いマッスル……辛いこともある筋肉道……」

 ダウンした選手の一人が、遺言のように言いながら机に突っ伏した。
 そんな、一杯だけでも胃もたれを起こしそうなラーメンの大食い競争。無論、他の参加者も次々とギブアップをしており。

 そして。

「立花選手、文句なしのゴオオオオオオオオオル!」
「イエエエエエエイ!」

 知り合いが、それはそれはいい笑顔でガッツポーズをしていた。



「うおおおおお!」

 あたかも少年のように、立花響(たちばなひびき)は目をキラキラとさせていた。

「いやあ、本当にありがとうございます! 私もちょっと興味あったんだけど、ラーメン美味しそうだったから、そっちに行っちゃったんですよね。んで、食べているうちに入場費も使っちゃって、だったらもうここの大食い競争でもいいかなって思ったんですよ」

 結局、他に知り合いもいなかったこともあって、大食い競争で見事に優勝した響を連れていくことにしたのだった。
 すると彼女は二つ返事で了承し、

「すごい大食いだったね。あのラーメン、一杯だけでもかなりのボリュームだったけど……」
「え? そ、そう……?」

 響は頭をかいた。

「いやあ、最近コウスケさんのお手伝いで何度も大学に行ってさ。ちょっと疲れてお腹すいちゃったんだよね」
「まあ、渡りに船ならよかったよ」

 ハルトと響は、今見滝原博物館の前、入場の入り口に並んでいた。
 大勢の家族連れなどがいるなか、若い男女という組み合わせは、数少ない方の部類に入る。それもカップルではなく、ただ近くにいた知り合いを連れてきたというものは、相当珍しいのではないだろうか。

「今回のこの展示会、明日で終わりなんだっけ?」
「そうだよ。お客さんから昨日チケットもらったんだけど、勿体ないから誰か誘おうとしてさ。そういえば、コウスケは?」
「あー、今大学の準備で色々いそがしいみたいだよ? 年末の研究会があるみたいで」
「学生も大変だな」
「うーん、私も学生だった時思い出すなあ。みんな元気かな? もしかしてシンフォギアみたいな力に目覚めていたりして。歌じゃないとしたら……龍とか?」
「そんなアニメみたいなこと……お、俺たちの番だ」

 行列は終わり、ようやくハルトたちがチケットを渡す番になった。
 すんなりと無料で通してもらえたことに、青山さんに感謝しながら、ハルトは響とともに会場に入っていった。 
 

 
後書き
可奈美「よし! まだ準備まで時間あるし、今日も練習していこう!」早朝五時、見滝原公園
可奈美「えっと……えい! えい!」
可奈美「……だめだ……マザーズロザリオ、できない……あの時はできたのに……」
可奈美「だああああああ!」十字に突く途中で千鳥落とす。
可奈美「っ……!」腕痛む
???「あー、ちょっといいか?」
可奈美「?」
???「おたく、少し力みすぎてない?」
可奈美「え? そんなこと……あるかな?」
???「ああ。めちゃくちゃ。あ、俺ちょっとした自由を愛する高校生でさ。ちょっと剣には詳しくてな」
可奈美「はあ」
???「ちょっと失礼」
可奈美「うわ! え? 何? 痴漢?」
???「ちげえよ。ここと、ここ。力抜いて……魔弾……」
???「よし。これでやってみ。少しは気楽になるぜ」
可奈美「う、うん。……たぁ!」突き連続できた
可奈美「!」
???「うんうん。やっぱりおたくの剣すげえな」
可奈美「あ、ありがとうございます。えっと……あなたは?」
???「俺? 俺は……」



___君を止められない 引き留めても振り切ったら もう二度と誰も何も言えないのさ___


不道「納村(のむら)不道(ふどう)ってもんだ。あ、武装少女マキャヴェリズムをよろしく!」
可奈美「不動産屋さん?」
不道「うるせえ。分譲住宅紹介するぞ」
可奈美「あはは……えっと、ありがとうございます!}
不道「おう! あ、俺の放送期間は2017年の4月から6月な。刀使ノ巫女に負けず劣らずの刀アニメだぜ」
可奈美「天下五剣とかも普通に出てくるね」
不道「ま、抜くとこ抜いとけ。そうすりゃ、何とかなるもんだぜ。自由に生きようぜ、自由に。ほんじゃな」
可奈美「あ、ありがとうございました!」 
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