おっちょこちょいのかよちゃん
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124 「次郎長」の内紛
前書き
《前回》
買い物の途中で大野の母にあったまき子は、夫が東京へ転勤になるという情報をかよ子に伝える。かよ子はそこで大野が転校してしまうという事実を知る。大野の転校の噂はクラス中に広まり、杉山にもその噂は耳に入る。そして大野に問い詰め、否定しなかった大野に対して杉山は大野と運動会以来の喧嘩をしてしまう!!
オリジナルキャラ紹介・その6
徳林奏子 (とくばやし かなこ)
三河口が通う清水市内の高校の友人の一人。初登場30話。笹山の近所に住む。三河口に好意を寄せている。防御特化の武装の能力を宿す。77話にて異世界の人物・エレーヌより貰った防御・迎撃・飛行が可能な羽衣を使用する。好きな食べ物は肉団子、パフェ。
大野と杉山は校舎の裏へと行く。それを追う、かよ子、ブー太郎、まる子、そしてたまえ。
(杉山君・・・、止めて、大野君と喧嘩しないで・・・!!)
かよ子は願う。運動会の時のように喧嘩などすると自分の心まで傷ついてしまうからである。
「もしかして、あの石、使ってるかな・・・?」
「だとしたら、ヤバいブー!」
大野と杉山は校舎裏に来た。
「大野、俺はお前がいなくても大将だという事を解らせてやる」
「こっちだってお前みたいな解らず屋全力でぶっ飛ばしてもらうさ」
お互いは異世界の石を持っている。
「この野郎!」
大野は草の石の能力を行使した。草が伸びて杉山を巻き付こうとする。対して杉山は雷の石の能力を行使する。大野が出した草に電撃を通す。だが、草には全く聞いていなかった。実は植物は電気を通さないのだ。杉山は草に巻き付かれる。そして大野は杉山を巻き付けた草で杉山を振り回した。
「うお、うお・・・」
杉山は目が回りそうになった。だが、このままやられるわけにはいかない。杉山は振り回されながらももう一度電撃を行う。今度は電撃は槍のようになって大野を狙った。
「させるかよ!」
大野は目の前に大木を出して電撃を防いだ。そして大野は杉山を校舎の壁にぶつけようとした。だが、その時・・・。
「大野くうん、やめてえーーー!!」
冬田が急に現れた。そして大野に掴みかかった。
「は、放せよ、冬田!」
「嫌よお!こんな事で喧嘩するなんてえ、大野君らしくないわあ!」
冬田は涙目で訴えた。その一方、杉山は壁にぶつけられようとされた所で草が解けて地面に落ちた。
「やってくれたな・・・!!」
杉山は大野に電撃を浴びせようとする。だが、何者かが妨害した。
「や、山田・・・!!」
かよ子がその場に立って遮っていた。杖を使った様子が見られない。おそらく彼女に宿されている防御特化の武装の能力が行使されたのだろう。
「杉山君、お願いだから喧嘩しないで・・・。これ以上やるなら私も本気出すよ・・・!!」
かよ子は杖を今でも使おうかと考えていた。
「大野君、杉山君、止めるブー!!」
ブー太郎、まる子、たまえもその場に到着した。
「やめてよ、こんな事で喧嘩するの・・・」
「そうだよ、二人共落ち着いてよ!」
「う、うるせえな・・・。あいつが勝手に東京に行っちまうから・・・」
「親の転勤なんだから仕方ねえだろ!!」
「同じ事繰り返し言ってんじゃねえ!」
杉山は雷の石をもう一度使って放電しようとした。その時・・・。
「よさぬか!!」
上から声が聞こえてきた。森の石松だった。石松は刀で杉山の放電を吸収した。
「い、石松!?」
「醜い内紛などしおって・・・。この大事な時にそんな事をしておる場合なのか!?」
「う・・・、く・・・」
二人は石松の正論に何も言えなかった。
「内輪揉めを続けるのであるならば、お主らの石を没収するぞ!!」
「う・・・、わ、解ったよ・・・!!」
杉山は雷の石を捨てるように投げた。
「俺はこんなのなくても大将なんだ!!」
そう言って杉山は走り去った。
「す、杉山君・・・!!」
かよ子は追いかけようとした。
「待て、山田かよ子」
「え?」
「お主にも伝えておかねばならぬことがある」
「伝えておかなきゃいけない事って・・・?」
「フローレンスとイマヌエルからの手紙を読んで存じていると思うが、その杖は赤軍が政府によこせと命じておる。だが、二人はその対策として偽物を総理大臣とやらに寄こした。こちらの策が知れたら水の泡となる為、約束の日までにその杖の使用を控えてくれぬか」
「うん、解った・・・」
「大野けんいち」
石松は大野に顔を向ける。
「その草の石はどうする?大戦の時までに自分が持っているか、それとも内輪揉めを続けるつもりなら某に返すか?」
「いや、使わねえよ・・・。約束すらあ」
大野は俯いた。かよ子は杉山が捨てて行った雷の石を拾う。
「大野君」
かよ子は自分が好きな男子の親友に質問を試みる。
「何だよ?」
「この『雷の石』、大野君が持っていてよ」
「何でだよ!?アイツの石なんかを俺が持ってどうすんだよ!?お前は杉山が一人でも十分大将だって認めたのか?俺が石二つ持ってねえと弱いってのか!?」
「そうじゃないよ!私は杉山君の大野君のコンビが一番なんだよ!それに私は杉山君が好きだし、きっとあのセリフも本心で言ったんじゃないと思うんだ!私だって杉山君と大野君がいたからおっちょこちょいしても立ち直れたんだよ!この杖をお母さんから受け継いだ時、アレクサンドルとアンナを倒せたのも、オリガを倒せたのも、大雨や文化祭の時に赤軍が襲ってきた時に返り討ちにできたのも、二人がいたから頑張れたんだよ!私一人だけだったらおっちょこちょいで何もできなかったもん・・・」
かよ子は涙目になる。そして深呼吸して話を続ける。
「だから、その証として大野君が持っていて・・・。捨てたり、しないで・・・」
「わ、解ったよ・・・」
大野はひったくるように雷の石をかよ子の手から取り上げた。そして先に、教室に戻って行ってしまった。
「もう、朝の会の時間だ、戻らなきゃ・・・。あ、石松・・・」
かよ子は石松に顔を向ける。
「今行った事、絶対に守るよ。そして・・・、絶対におっちょこちょいしないよう気を付けるよ!」
「承知した」
かよ子達は戻る。一方、冬田はまだ泣いていた。
「冬田さん、まだ泣いてるの?」
たまえが聞く。
「だってえ、本当は私だってえ・・・。大野君がいなくなっちゃうととても寂しいのよお・・・!!」
「冬田さん・・・」
「そ、そうだよな、ブー。オイラだって大野君と杉山君が最強のコンビが離れ離れになるなんて正直信じられないブー・・・。いや、信じたくないブー!!」
ブー太郎も涙目だった。
「ブー太郎・・・」
皆は大野が東京に行ってしまうと思うと寂しさが離れなくなってしまうのだった。
杉山は教室に戻ったきり、何もせず先程の喧嘩の回想に耽っていた。
《しょうがねえだろ!親が決めた事なんだ!》
《馬鹿野郎!お前みたいな約束破りどこかへ行きやがれ!!》
《俺はな・・・。お前なんかがいなくなっても大将なんだ!》
《俺だってお前みてえな解らず屋と一緒にいたかねえよ!》
杉山はふと肩が震えていた。かよ子達が教室に戻ると、杉山が肩を震わせているのが見えた。かよ子は思い切って杉山の所に行く。
「杉山君・・・」
「何だよ?」
杉山は僅かながらにも泣いていた。
「あの・・・」
雷の石を大野に預けたと言おうとしたが、余計に癇癪を起すと思い、別の話に切り替えようとした。
(あぶない、おっちょこちょいする所だった・・・)
「私、杉山君は本当は寂しいんでしょ?でも、素直になれなくてあんな事言っちゃったんじゃないの?」
「う、うるせえなあ、今は一人にしてくれよ!」
「う、ご、ごめんね・・・。でも、異世界には一緒に行ってくれる?」
「・・・さあな」
杉山はそれ以上は答えようとしなかった。かよ子もそれ以上質問するのは止めた。
かよ子は休み時間、まる子にブー太郎、冬田、そして長山と会話していた。
「ねえ、放課後、一緒に秘密基地行かない?」
「そうだなブー、オイラも丁度同じ気分だったブー?」
「なら、大野君も連れて行き・・・」
「冬田さん、止めといたほうがいいよ。大野君はそんな気分になれないと思うよ」
「う、うん・・・」
長山は大野の転校の噂が流れた後、大野と杉山が喧嘩したという事情をかよ子達から聞いていた。
「兎に角、僕達だけでも気晴らしに行こう」
「うん、そうだね・・・」
後書き
次回は・・・
「秘密基地での誓約」
秘密基地に向かったかよ子達は隣町の小学校の面々と顔を合わせる。そんな時、大野の転校の悲報を彼らにも伝えるのだが、その一人である、すみ子も転校することになるという事実を知る事になり・・・。
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