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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第74話 天国への階段か、地獄への奈落か。目指せ、天空の野菜畑ベジタブルスカイ!

 
前書き
 73話の最後にギャスパーの性別について話すオマケを追加したのでお願いします。 

 
side:ギャスパー


 土曜日の朝、僕達は今飛行機に乗ってベジタブルスカイという場所を目指しています。強い猛獣とか危険な気候がいっぱいって聞いて正直怖いけど……でも僕も皆みたいに強くなりたい、だから頑張ります!


「凄く速いですね、あっという間に雲が過ぎ去っていっちゃいます」
「IGOの捕獲専用機だからな、これなら後十分ほどで目的地に到着するぞ」


 アーシア先輩は外の景色を楽しそうに見ています。ぼ、僕はちょっと怖いので遠慮しておきます……


「でもテリー達はお留守番なのは残念ですね」
「テリーもオブも親父が修行できる場所に連れて行ったから暇ではないだろう。あいつらも強くなるさ」
「ユンユーン」
「ユンも強くなりたいの?でも今は私が守ってあげるからね」
「ユーン」


 小猫ちゃんは足元にいる小さなペンギンにそう言って抱きしめた。初めてテリーやオブを見た時は驚きましたけど、直ぐに仲良くなれました。他の猛獣はもっと獰猛らしいですのでこうはいかないようですが……


「でも黒歌さんはこなかったんですね」
「ああ、黒歌はグルメ界に入ることが出来るらしいからな。俺達の修行でしゃしゃり出たら皆の邪魔になると言って基本ノータッチで行くようだ」
「えっ、じゃあ黒歌ってイッセーよりも強いの!?」


 ルフェイさんが小猫ちゃんのお姉さん、黒歌さんが今回の旅に同行しなかったことに首を傾げ、イッセー先輩が自分から辞退したと話しました。するとリアス部長がイッセー先輩より黒歌さんの方が強いのかと言います。


「いや、黒歌は戦闘力も高いがそれ以上に環境への適応が上手いらしい。実際にグルメ界でまず死ぬ要因になるのは猛獣よりも様々な自然環境が原因らしいからな」
「一龍さんに依頼された食材はそういった過酷な環境に適応できるようになるための修行だったね」
「ああ、だからアイスヘル以上に危険な場所もあるかもしれない。皆、心しておけよ」


 イッセー先輩の話に祐斗先輩が今回の修行の目的を話しました。話によるとこのG×Gにはグルメ界と呼ばれるとても危険な場所があるらしく、イッセー先輩達はそこに行けるようになるために修行をしているみたいです。


「おっ、見えてきたぞ!」


 イッセー先輩が何かを見つけたようで僕は窓から外を見ました。すると天空から垂れているツルを見て驚きました。だって上を見上げても大地なんてないのにツルが垂れ下がっているんですから。


「なにあれっ!?どうして空からツルが垂れているの!?」
「あれがベジタブルスカイへの入り口ですよ。さあ着陸しますよ」


 すると飛行機は大きな葉の上に着陸しました。かなりの重量があるはずなのにビクともしないなんて……凄い生命力です。


「凄いですわね……上を見上げてもどこからツルが伸びて来ているのか全然見えませんわ」
「このツルは『スカイプラント』から伸びたもので通称『天からのいざない』と呼ばれています」


 天からのいざない……とてもロマンチックな名前ですね。


「まあ実際は激しい気候や環境の変化で有名な場所で、本当の意味で天国に行ってしまう奴も多いらしいけどな」
「今から登ろうとしているのにそんな情報を言わないでよ!」


 イッセー先輩の捕捉にリアス部長が怒ってしまいました。ほ、本当に大丈夫かなぁ……


「もしかしなくてもこれを登っていくのよね?」
「ああ、そうだ。飛行機じゃ大型の怪鳥や激しい気流で直に墜落しちまうからな。ベジタブルスカイに行くには直接登っていくしかない」


 ティナさんの問いにイッセー先輩はそう答えました。上なんか全然見えないけど一体どのくらいまで高いんだろう。


「各自準備は出来たな?そろそろベジタブルスカイに向かうぞ!」


 い、いよいよ冒険が始まるんですね。初めての挑戦だけど僕も強くなるために頑張ります……!



―――――――――

――――――

―――


「つ、強くなれるか不安になってきました……」


 ベジタブルスカイを登り始めてそれなりの時間が立ったけど、一向に頂上が見えてきません。腕や足もパンパンになってきたし凄く疲れました……


「ギャー君、大丈夫?無理はしちゃだめだよ」
「疲れたらおぶってあげるからファイトだよ」


 小猫ちゃんとイリナさんが励ましてくれるけど、この二人は疲れを感じさせないんですよね。同じ人間であるゼノヴィアさんは体力がありそうですが、アーシア先輩やティナさんといったか弱そうな人たちもまだ余裕そうです。一体どんな危険な場所を冒険してきたら体力が付くんだろうと思いました。


「ギャスパー、大丈夫か?お前はG×Gは慣れていないから疲れたらすぐに言うんだぞ」


 イッセー先輩にそう言われましたが、強くなりたいと言った手前直に諦めるのは流石に恥ずかしいです。


「大丈夫ですよ、イッセー先輩。まだ行けます……」
「……そうか、根性あるな」


 イッセー先輩はそう言うと僕の頭をクシャッと撫でました。こんな風に撫でてもらったのはあまりなかったな、何だかお兄ちゃんが出来たみたいです。


「そういえば、イッセー先輩は赤龍帝の籠手を宿しているんですよね」
「ああ、俺は今代の赤龍帝だ」
「すごいなぁ……僕なんて全然神器をコントロールできないから羨ましいですぅ……」


 僕はイッセー先輩が赤龍帝だと聞いたとき驚いた。話だけしか聞いたことがないけど赤龍帝たちは皆力に飲み込まれて悲惨な最期を迎えたって聞いていました。


 でもどうやら先輩は力に溺れているようではないみたいです。それを知った僕は先輩は神器をコントルール出来る凄い人なんだと思って羨ましくなりました。


「コントロールできているのかは分からないが、俺は最初の頃ドライグとは仲が悪かったから今よりずっと扱えていなかったぞ」
「そ、そうなんですか……?」
「ああ、今はドライグと和解したから何とかなっているがそれでも倍加以外の能力は苦手なんだよな。炎を長い時間吹けばかなり体力持っていかれるし、翼で飛ぶのも苦手だし……後『赤龍帝の贈り物』とか他の能力も使い慣れていないし……俺なんてまだまだだ」


 イッセー先輩も上手くできないことがあるんですね。なら僕ばかりが駄目駄目だなんて思わないようにしよう。


「うんしょ……こらしょ……」


 それからも何とか頑張ってツルを登っていきます。


「ふぅふぅ……」


 息を乱しながらちょっと休んでいると、横から何かが近づいてきました。


「ふえっ?」
「カォオォォ」
「ひゃっ……!」


 僕の横に不気味な顔をした鳥が飛んでいました。僕は咄嗟にあの子を出してしまいその鳥に殴りかかっていきました。


「おっと危ねぇ」


 でもあの子の攻撃をイッセー先輩は片腕で防御しました。小猫ちゃんでも防げないあの子の一撃を難なく防いじゃうなんて……リアス部長にイッセー先輩はあの子に殴られても平気だったと言われたときは驚きましたが、実際に見ちゃうと余計に驚いてしまいます。


「ギャスパー、落ち着け。こいつは『ルバンダもどき』と言ってな、顔は怖いが強くはない猛獣だ
。こっちから手を出さなければ襲ってはこない。無視してさっさと登ってしまおうぜ」


 イッセー先輩はそう言って僕を抱っこして上に登っていきます。僕は先輩の腕の中でどうしてさっきイッセー先輩はあの子の攻撃を防いだんだろうと疑問に思っていました。


「先輩、どうしてさっきルバンダもどきへの攻撃を防いだんですか?やっつけても良かったんじゃ……」
「ん?単純にアイツが不味いから殺したくなかったのさ」


 不味いから殺したくなかった?どういう事だろう。


「俺は食うつもりが無くても命を奪ったのなら、どんな生物だろうと食う。それが俺のルールだ」
「先輩のルール……」


 イッセー先輩の言葉が僕の心に響いた。


(こんな人初めて見た……吸血鬼たちが命に感謝することなんてないから新鮮な気持ちだ……)


 僕の知る限りでは吸血鬼は自分達以外の全ての生物を見下していた。それこそ食料となる人間なんか家畜同然の扱いだった。感謝なんか絶対にしないし、ある意味では純潔悪魔以上に人間を見下して馬鹿にしているくらいだ。


 だから命を大事にするイッセー先輩は凄く眩しく見えてしまう。


「イッセー先輩、もう大丈夫です」
「おっ、そうか?なら下ろすぞ」


 僕はイッセー先輩に下ろしてもらい自力でツルを登っていく。


(僕も強くなるんだ!イッセー先輩や皆のように……!)


 そうして何時間もかけてツルを登っていく。辺りの景色がどんどん変わっていき、地上は遥か真下に小さく見える程だ。


「ケェェェ!」


 すると大きな鳥の化け物が僕達に襲い掛かってきました。僕はビクっとしましたが、反対にイッセー先輩は美味しそうなモノを見つけたような嬉しそうな笑みを浮かべます。


「おっ、怪鳥『ゲゴン』じゃないか。丁度いい、あいつで腹ごしらえをしよう」
「じゃあここは私達に任せて!行くわよ、ゼノヴィア!」
「応っ!」


 イリナさんが空中を駆け巡り大きな怪鳥に蹴りを入れて吹き飛ばしました。


「はあっ!」


 そしてゼノヴィアさんが剣で見事に真っ二つにした。因みに二人がエクソシストだと言うのは飛行機の中で説明してもらいました。正直最初はすごく怖かったけど、焼き肉屋でお肉を巡って喧嘩していた二人を思い出したらそんなに怖くなくなりました。


「イッセー、美味そうな怪鳥をゲットしたぞ」
「サンキュー、イリナ、ゼノヴィア。なら昼飯にするか」


 イッセー先輩の吐いた炎で怪鳥がこんがりと焼かれていく。そして小猫ちゃんがそれを包丁で切り分けてお皿に移していった。


「はい、ギャー君」
「ありがとう、小猫ちゃん」


 はむっと怪鳥のお肉を齧ってみる……んー♡脂がのっていてジューシーで美味しいです……♡


「それにしても随分と高い所まで来ましたねー。私は普段は箒で移動しているんですけど、こんな高さまでは来たことないです」
「標高としては大体1000メートルくらいか。前に行った『へるスィ~』の店があったくらいの高さだな」
「あの時は夜景の美しさに感動したけど、ここじゃ恐怖の方が大きいわね」


 ルフェイさんが周りの景色を見ながらそう言うと、イッセー先輩が大体の標高を教えてくれましたリアス部長は前に行った焼き肉屋の風景と今の風景は同じ高さでも怖さが違うと話しました。


「皆良く食べられるわね……私、あんまり食欲出ないわ……」
「私もですぅ……」


 ティナさんとアーシア先輩はさすがに疲れたのか先程と違いゲンナリとしています。僕も疲れていますがイッセー先輩にフォローしてもらう事もあったのでまだ食欲はあるくらいには回復できました。


「しっかりと食べておいた方が良いぞ、これからさらに高い所に行くからな。高所に上がれば気温も下がり体力を奪われていくからな」
「なら食べるしかないわね。クルッポーも頑張って!」
「クポー!」


 ティナさんはそう言うと相棒のクルッポーと一緒に食事を再開しました。でもアーシア先輩はまだ辛そうです。


「アーシア、もし食うのが辛いのならチョコを食べるんだ。チョコは少量でもエネルギーを得られるからな」
「分かりました、イッセーさん」
「それと皆も覚えておいてほしいんだが、高所に上がると空気中の水分が減って乾燥しやすくなる。脱水症状を起こしやすくなるから水分補給はこまめにするんだ」
「了解よ、イッセー」


 アーシア先輩はイッセー先輩に渡されたチョコをゆっくりと齧っていきます。それにしてもイッセー先輩はとても頼りになりますね、知識も豊富だし凄く安心感があります。


(この人についていけば絶対に強くなれます……!僕も頑張らないと……!)


 新たに決意を秘めて、僕達はツルを登り始めました。猛獣や強い風、いきなりの激しい雨などかなり苦労しましたがそれでも負けずに上に上がっていきます。


「そろそろ夜だな。今日はここで休もう」


 あたりが暗くなってきたので先輩の指示で今日はここで野宿をすることにしました。


「うわぁ……!凄い景色ね!」


 夜空に輝く星々にリアス部長が感動の声を上げました。僕もこんな綺麗な星空を見たのは初めてです。


「ここは大体標高6000メートルだからな、地上と違い光が無いからあんなにも綺麗に見えるんだな」
「本当にロマンチックですわ……♡」
「私も見惚れちゃうよ♡」
「イッセーさんとこうして綺麗な景色を見られて幸せです♡」


 アーシア先輩はイッセー先輩の膝の上に、朱乃先輩とイリナさんがイッセー先輩の両肩に頭を乗せて寄り添っていました。も、もしかしてあの4人はそういう関係なのでしょうか?


「ティナさん、温めたミルクはどうですか?」
「わあ、ありがとうね。祐斗君」


 祐斗先輩も前は女の子には興味なさそうだったのに今は大人のお姉さんと仲良しになっています。祐斗先輩も本当に変わったんですね、だって前は自分は幸せになっては駄目だ、と思い込んでいた所があったのに今はすごく楽しそうですから。


「ギャー君、調子はどう?辛くない?」
「うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね、小猫ちゃん」


 すると小猫ちゃんが僕の側に来てミルクを渡してくれた。冷えた体に染み渡っていきます。


「こうやってギャー君と一緒に冒険が出来て私すっごく嬉しいよ」
「僕も皆と旅をするなんて封印されていた時は思ってもいなかったよ」
「そうだね。私もついこないだまではそんな事全然想像してなかったもん」
「確か小猫ちゃんが最初にイッセー先輩と出会ったんだよね?」
「うん。あの時偶然イッセー先輩に出会えたんだ。今思うと本当に運命を感じちゃうよ♡」


 小猫ちゃんは顔を赤くしながら嬉しそうに言いました。小猫ちゃんのこういう顔初めて見たかも……


「えっと……もしかして小猫ちゃんってイッセー先輩の事が好きなの?」
「うん。というか付き合ってるし」
「ええっ!?そうなんだ!」


 まさかのカミングアウトに僕は驚いてしまいました。あのおとなしかった小猫ちゃんが彼氏を作っていたとは……


「あとアーシアさんや朱乃先輩、イリナさんもイッセー先輩の恋人だよ。姉さまも先輩に惚れているし近い内に恋人に加わると思う」
「モ、モテモテなんだね、イッセー先輩って……」


 大人の女性と仲のいい祐斗先輩といい、僕の周りでピンク色の空気が漂っている気がしてきました。


(ヴァレリー……)


 僕は故郷に残された大切な幼馴染を思い出した。あの子は今何をしているのかな……


 吸血鬼の里にもう未練はないし戻りたいとも思わない、でも大切な幼馴染があそこにはいる。僕と同じハーフで唯一仲の良かった女の子、それがヴァレリーだ。


 僕は彼女と一緒に逃げたかった、どこか遠い所で二人で幸せに暮らしたいって思っていました。でもそれは叶わなかった。彼女を置いて一人で逃げだして挙句にはヴァンパイアハンターに見つかって殺されてしまいました。


 幸いにも運よくリアス部長を呼び出せたようで僕は転生悪魔として蘇ったけど、結局迷惑しかかけてこなかった。


 そんな自分が嫌で一時は死んでしまいたいとも思ったことがあった。


 でもイッセー先輩と出会い僕は変われるチャンスを得ることが出来た。まずは神器とスタンドを使いこなせるようになる、そしていつかヴァレリーを……


(僕は絶対に強くなる。そしていつか彼女を助けに行くんだ……!)


 僕は星空を見上げながら胸に決意を秘めた。


―――――――――

――――――

―――


「よし、これでいいな」


 翌朝になって再びツルを登り始めたんだけど、途中でイッセー先輩にアーシアさんと一緒におぶられて進むことになりました。


「ここから先はさらに厳しい環境になるはずだ。二人は俺の背中にしっかりと捕まっておいてくれよな」
「はい、お願いしますね。イッセーさん」
「お、お願いします……」


 正直皆だけ自分で上がるのにこんな楽をしてもいいのかなと思いましたが、ここから先は本当に危ないようなので、まだこの世界に慣れていない僕では足手まといにしかなりません。悔しいですがここは先輩の指示に従いましょう。


「イッセー君、上から何か来るよ!」


 祐斗先輩が指を刺した方を見ると、大きなゴリラが群れを成して降りてきました。


「エアゴリラか、群れで襲ってくる厄介な奴だ。背中を狙われないように二人係でフォローをしながら戦うんだ!」
「了解だ、イッセー!因みに味はどうなんだ?」
「肉は固くて食えたもんじゃない」
「なら気を失わせる方向で行きましょう!」


 イッセー先輩は目の前の生物について教えてくれました。それを聞いたゼノヴィアさんが味の確認をすると固くて食べられないらしいです。リアス部長の指示に全員が頷きました。


「来るぞ!」


 イッセー先輩の声と共にエアゴリラたちが一斉に襲い掛かってきました。


「グァァァァ!」


 二体のエアゴリラが僕達に向かって拳を振り下ろしてきました。イッセー先輩は大きく跳躍すると攻撃を回避して上に向かいます。


「なるべく相手にはするな!危ないと思った奴だけ迎撃しろ!」
『了解!』


 目の前で立ちふさがったエアゴリラを殴り飛ばしたイッセー先輩は皆に指示を出します。


(皆凄い……!眷属だけじゃなく違う組織の人とも連携が取れている!)


 本来は敵対するはずの悪魔である祐斗先輩と、エクソシストであるイリナさんが協力してエアゴリラを撃退するのを見て僕は驚きました。


 他にもリアス部長の背後から襲い掛かったエアゴリラをゼノヴィアさんが迎撃したり、ルフェイさんが魔法を放つ際に朱乃先輩がフォローしたり、見事なコンビネーションで困難を乗り越えていきました。


「本当にここにいる人達は仲間なんだ……!」


 組織の垣根を超えてここにいる人達は強い信頼を築いていました。僕はそれを見て少し寂しくなりました。


「大丈夫だ、ギャスパー。お前も直ぐにあそこに行けるさ」
「イッセー先輩……」
「誰もお前を置いていかない、だから今は戦いを見るんだ。見る事もまた修行だ」
「……はい!」


 僕の気持ちを察してくれたイッセー先輩がフォローしてくれました。そんな先輩に優しさに嬉しく思いながらも僕は皆の戦いを観察し続けました。


 もし自分が同じ状況に置かれたらどうやって対応するべきか、そう考えながら脳内でイメージトレーニングをしていきます。


(普段だったらこんなにも安心して観察なんてできない。イッセー先輩や皆が作ってくれたこの機会、必ず自分の力にして見せる!)


 エアゴリラたちを退けながら僕達はスカイプラントを登り上がっていきます。


「しかし数が多いな。あまり体力は使いたくなかったんだが……」
「あっ、イッセーさん。また上からエアゴリラさんが下りてきました!」


 アーシア先輩の言う通り一体のエアゴリラが僕達の前に立ちふさがりました。でもその時でした、エアゴリラのすぐ側にあったスカイプラントのツルの一部に顔が現れてエアゴリラを食べちゃったんです!


「こ、これは……!」
「一体何が起きているの!?」


 祐斗先輩やリアス部長もこの異常事態に気が付いたみたいです。周りを見て見えると同じようにツルに顔が出てきた謎の生物がエアゴリラ達に襲い掛かっています!



「こいつらは『邪悪な豆の木』!捕獲レベル46の植物獣類だ!この辺りはこいつらの縄張りだったのか!」
「こ、これも生き物なんですか!?」
「ああ、こいつらは植物に擬態して生物を欺き捕食する奴らだ!来るぞ!」


 すると邪悪な豆の木の一体が僕達に襲い掛かってきました。た、食べられちゃうよ……!


「正当防衛だ、悪く思うなよ!」


 でも先輩は慌てた様子は見せずに邪悪な豆の木を手刀で切ってしまい、更にそれを食べ始めました。


「もぐもぐ……枝豆みたいで美味いな……ゴクッ……ふう……皆!ここは邪悪な豆の木の縄張りだ!上空や足元のツルにも注意するんだ!」

 
 一瞬で邪悪な豆の木の一部を食べてしまった先輩は皆に指示を出します。


「ジョアアアアアッ!!」
「アーシア!ギャスパー!しっかり捕まっていろよ!」
「はい、イッセーさん!」
「うわああぁぁぁっ!?」


 イッセー先輩は僕達を担いでいることを感じさせない俊敏な動きで邪悪な豆の木達の攻撃をかわしました。さらに僕達に負担をかけないようにとても繊細な動きにまた驚いてしまいます。


「凄いです!イッセー先輩!僕達を担いでいるのに負担を感じさせずにこんな激しい動きが出来るなんて!」
「食材の中には繊細なヤツもあるからな、これも美食屋の能力さ!おらっ!」


 イッセー先輩はそう言いながら指を突き出して衝撃波のようなモノを生み出します、それを邪悪な豆の木の一体に突き刺しました。それはまるでフォークのように見えました、いや見えます!


(魔力も使わないであんなことが出来るなんて……!人間ってこんなにも強いんだ……!)


 そもそもイッセー先輩は神器を使っていないと今更ながらに気が付いて今日何度目の驚きか分からないくらいビックリしています!多分今まで生きてきた中でこんなにも驚いたことはありません!


「ゴァアアアッ!」


 するとまたエアゴリラが一体僕達に襲い掛かってきましたが、イッセー先輩は難なくエアゴリラを殴り飛ばしました。


「レッグナイフ!」


 更に足から大きなナイフのような斬撃を繰り出して数体の邪悪な豆の木を切断しました。


「ルフェイ!悪いが邪悪な豆の木の一部を異空間にしまっておいてくれ!」
「はーい!了解です!」


 やっつけた猛獣は何があっても食べちゃうんですね。あっ、先輩の足元に顔が……!


「先輩!足元に邪悪な豆の木が!」
「おっと」


 僕がそう言うと先輩は身をひねって邪悪な豆の木の奇襲を回避しました。でも一瞬の隙を突かれて邪悪な豆の木の触手が先輩の足に絡みつきます。


「うわあぁぁぁっ!?」
「め、目が回りますぅ~!」

 
 大きく振り回されて凄く気持ち悪いです……!うぅ……吐きそう……!


「くそっ!」


 イッセー先輩は手刀で触手を切り裂きましたが場所が悪かったです。何故なら今僕達がいたのは空中なんです。


「ちっ、極力修行中には頼りたくなかったんだがそうも言ってられねぇか!」


 イッセー先輩はドラゴンの翼を出して飛びました。


「イッセーさん!前から回転した鳥さんが来ています!」


 アーシア先輩が指を刺した方から回転する鳥が僕達に向かって来ていました。


「あいつは『ドリルバード』か!コンクリートの壁位なら簡単に穴を開けちまう固い嘴は厄介だな、ここはフライングナイフで……うおっ!?」


 イッセー先輩は攻撃しようとしましたが強い風が吹いて体勢が崩れてしまいました。そこにドリルバード達が突っ込んできて先輩の翼に穴を開けます。


「やべっ……!?」
「ぼ、僕に任せてください!」


 僕は悪魔の羽を出してイッセー先輩とアーシアさんを持ち上げようとしますが……だ、駄目ですぅ!重すぎて持ち上がらないよぅ!?どんどん落ちちゃう!?


「無茶だ、ギャスパー!俺は体重が250㎏あるんだ!しかも最近美味いモノばかり食べたから多分もっと重くなってるはずだ!」


 そ、そんなに体重があるんですか!?で、でも僕以外の皆はエアゴリラや邪悪な豆の木を相手にしていて動けないし、僕が何とかしないと……!


『無駄ァ!』
「えっ……?」


 するとあの子が突然現れて僕達を掴んでスカイプラントの方に投げ飛ばしてくれました。


「うおっ!?ギャスパー、スタンドをコントロールできたのか!?」
「わ、分かんないです!ただどうにかしようと強く思っていたら何故かあの子が勝手に……」
「もしかしたらギャスパーの強い思いがスタンドを動かしたのかもしれないな」


 僕の思いがあの子を動かしてくれた……?今までそんな事は一度も無かったのにどうして……


「イッセーさん!またドリルバードさん達が来ます!」


 ドリルバード達は再び回転して僕達に向かってきました。


「また来やがったか!今度はさっきのようには……!」
「イッセー先輩!お願いします!僕に……あの子に任せてくれませんか!」
「ギャスパー……?」
「今ならあの子が僕に応えてくれるような気がするんです。だから……!」


 僕は必至になって先輩にそう言いました。正直言葉では説明できないのですが、今ならあの子を少しの間ならコントロールできそうな気がするんです。


 イッセー先輩は一瞬考えるしぐさを見せましたが、直ぐに笑みを浮かべて頷いてくれました。


「分かった。お前の好きにやってみろ!」
「……はい!」


 僕は向かってくるドリルバード達に視線を向ける。こ、怖い……でも僕は変わりたい。皆みたいに強くなって誰かを助けられるような存在になりたいんだ。


「お願い……力を貸して!」


 僕はそう強く思い目の前にあの子が現れたことをイメージします。するとあの子が僕達の目の前に現れました。


(イメージするんだ……!敵を打ち倒すあの子の姿を……!)


 僕は再程のイッセー先輩の攻撃をイメージして両手をぐーにしました。するとあの子も両手をぐーにしてくれた。よし、これなら……!


「や、やあああぁぁぁぁぁぁっ!」


 僕は無我夢中になってぐーを前に突き出した。するとあの子も同じ動きをして一体のドリルバードを殴り飛ばした。


「まだです!もっと……もっと早く!」


 両手のグーを何度も突きだしていくとあの子は両手でのラッシュを繰り出しました。


「す、凄いですぅ……!」
「どんどん早くなっていくぞ!」
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無ァァァァァ!!!!!』


 僕とあの子の迫真の掛け声と共に無数の拳がドリルバード達に放たれました。何十匹といたドリルバード達を拳で次々と撃ち抜いていきます。


「わわっ……!これは大量ですねぇ!」


 ルフェイさんは忙しそうにドリルバード達を異空間にしまっていました。そして僕達は何とか無事にスカイプラントまで帰ってくることが出来ました。


「はぁ……はぁ……凄く疲れました……」
「良くやったな、ギャスパー!凄いパワーだったぜ!」
「はい、あんなにいっぱい居たドリルバードさん達を一瞬で倒しちゃうなんて凄かったです!」


 凄く疲れた僕をイッセー先輩とアーシアさんが褒めてくれました。で、でも今は返事をできないくらい疲れました……


 その後リアス部長達とも合流して安全な場所に上がり僕達は少し休憩を取っていました。


「ギャスパー、見ていたわよ。さっきの攻撃凄かったじゃない」
「うん、見ていた僕達も震えちゃったよ」
「凄い迫力でしたわ」
「さっきの凄いのはなに!?取材させてほしいんだけど!」

 
 リアス部長、朱乃先輩、祐斗先輩、ティナさんがそう言って褒めてくれた。しゅ、取材はちょっと遠慮したいです……


「ギャー君、凄くかっこよかったよ。もうヘタレなんて言えないね」
「ああ、吸血鬼というのは陰湿な輩ばかりだと思っていたがギャスパーは勇気ある少年だな」
「可愛い顔してるのにやるじゃない!」
「これは期待の新人が現れましたね~」


 小猫ちゃん、ゼノヴィアさん、イリナさん、ルフェイさんも褒めてくれて何だかくすぐったくなってきました。


「でも今はもうコントロールできそうにありません。あの子も引っ込んでしまいましたし……」
「でも少しの間とはいえスタンドがギャスパーの意志で動いたんだ。こんなにも早く成長できるとは思わなかったぜ。良くやったな、ギャスパー」
「助けてくれてありがとうございます、ギャスパーさん」


 イッセー先輩はそう言って僕を撫でてくれて、アーシア先輩が笑顔でお礼を言ってくれました。


「……ぐすっ」
「ど、どうしたんだ!?強く撫で過ぎたか!?」
「ち、違うんです……こんな風に何かを達成して褒めてもらえたのは初めてで……嬉しくなっちゃったんですぅ……」


 僕は嬉しくなって泣いてしまった。イッセー先輩が慌ててしまったがそれでも涙を止めることが出来なかった。僕はイッセー先輩の胸にしがみついてわんわんと泣き続ける。


 実の父親にすら褒められたことは一回もなかった。ヴァレリーは僕の事を可愛いと褒めてくれてそれで女装が趣味になったけど、容姿を褒められたから達成感はなかった。


 リアス部長や朱乃先輩に慰めてもらったり、祐斗先輩や小猫ちゃんに励ましてもらったことはあったが僕が誰かの助けになれた事は一度もなかった。


 でもこうやって僕の力が誰かのために役立ってそれで褒めてもらえたりお礼を言われたりしたのは初めてだった。それが泣いてしまうくらい嬉しいんです……自分を認めてもらえたと思えたから……


「まあ今日くらいは一杯泣きな。こんな固い胸でよかったらいくらでも貸してやるからさ」
「はいぃ……!」


 僕は暫くの間イッセー先輩の胸の中で泣き続けた。イッセー先輩はポンポンと背中や頭を撫でてくれてとっても温かかった。


 数分後にようやく涙が収まり僕はイッセー先輩に謝罪した。


「ごめんなさい、イッセー先輩……服を汚しちゃって……」
「気にすんな。俺達は仲間だろう?」
「仲間……ですか?」
「ああ、お前もG×Gを冒険する仲間だ。これからもお互いに助け合っていこうぜ!」
「は、はい!」


 出会ったばかりの僕を仲間だとはっきり言ってくれたイッセー先輩に、僕は満面の笑みで答えました。


「よし、再びベジタブルスカイに向かって頑張ろうぜ!」
『応っ!!』


 イッセー先輩の声に全員が力強く答えました。


「んっ?あたりが暗くなってきたね……」
「風も強くなってきましたね」


 祐斗先輩は辺りが暗くなったことに首を傾げて、ルフェイさんは風が強くなったと言います。


「きゃあ!?」
「さ、寒いですぅ!」


 すると突然冷たい風が僕達に吹いてきました。一瞬で体の体温が大きく奪われてしまうくらいの冷たい風でした。ライタースーツというのを着ていなかったら凍え死んでいたかもしれません。


「な、なにあれ!?」


 するとティナさんが驚いた声を出されたので彼女を見て見ると上の方を向いていました。釣られて上を見た僕は凄く驚きました。


「く、雲の化け物……!?」


 リアス部長の呟きの通り、まるで雲に大きな顔が現れて僕達を見下ろしているみたいでした。


「おいおい……親父の奴とんでもない場所で修行をさせやがるぜ」
「イッセー先輩、あれって……」
「あれは空の立ち入り禁止区域『積乱雲』だ!」


 小猫ちゃんの質問にイッセー先輩は冷や汗を流しながらそう答えました。

 
 

 
後書き
 イッセーだ。親父も人が悪いぜ、なにせ積乱雲に突っ込まされるとは思っていな突っ込まされる。

 
 だがグルメ界に入るためにはアレを攻略しなくちゃならない、覚悟を決めて行くしかねえ!


 次回第75話『空の危険区域、ベジタブルスカイに向かって駆けあがれ!』で会おうな。待っていろよ、オゾン草! 
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