歪んだ世界の中で
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第六話 明らかな変化その三
「酷いね、相変わらず」
「そうですね。ですから」
「今あの娘さんに下手に話すと危ないね」
「横浜が負けていると不機嫌そのものになられますからね」
「それがサービスとかには影響しないからいいけれど」
「ですがその表情が」
憮然としたものになる。だからだというのだ。
「困ったものですね」
「まあそれもあのお店の特徴だけれどね」
「そうですね。ですがお楽しみメニューは」
「試合があるとね」
もうそれだけでわかるというのだ。横浜の試合がある。それだけでだというのだ。
「負けることが決定だから」
「横浜はかつての阪神よりもまだ弱いですね」
「そうだね。何であんなに弱いのかな」
希望も横浜のことについて少し苦笑いになってコメントした。
「幾ら何でも弱過ぎるよね」
「やはりフロントのせいでしょうか」
「それが大きいかな」
「長期的なチームを考えることがありませんから」
「監督は二年でいつも交代だよね」
「あれはよくないです」
客観的だが冷静にだ。真人も述べる。
「やはり一人の監督でじっくりとチームを育成するべきですね」
「そうだね。さもないとね」
「まともなチームにはなりません。選手も育ちません」
「そしてチームの士気もあがらない」
「結果として負けてしまって」
「余計に監督の責任が問われてね」
フロントがだ。そうしてだというのだ。
「新しい監督になって」
「それで選手の育成やチーム戦略等がまた一からやり直しになってです」
「チーム全体が混乱してそうして」
「選手が育たず士気が落ちてです」
「負けますね」
「本当に悪循環です」
「それじゃあ本当に一時の阪神より酷いね」
真剣に考える顔でだ。希望は話した。
「だからあれだけ最下位になるんだね」
「残念ですね。横浜には巨人に勝って欲しいのですが」
「あれじゃあ勝つどころかね」
「勝ち星を謙譲してしまっています」
未来ではなく現在を語る言葉だった。
「巨人にも負けていますからね」
「阪神にも負けているけれど」
「巨人にだけ勝ってくれればいいのですが」
「困ったことだね。横浜にも」
「全くです」
二人が横浜の弱さを心から嘆く理由はそこにあった。彼等は横浜に巨人を負かせて欲しいのだ。そうして巨人を全チームが粉砕することを望んでいるのだ。
しかしだった。今の横浜では。
「あれだけ弱いのは困りものです」
「どうにかなって欲しいけれど」
「しかしそれは一年や二年では無理でしょう」
「どうせだったら巨人がそうなればいいのにね」
「全くです。僕は巨人は大嫌いです」
「僕もだよ」
これは二人共だった。巨人についてはだ。
どこまでも嫌いでだ。一致している価値観の一つだった。
そのことも確認しながらだ。二人でだった。
真人が退院してから何処に遊ぶのかを考えていた。そうしたのだ。
希望は真人が退院するその時を楽しみにしだしていた。その中でだ。
千春とのデートも楽しんでいた。今日はというと。
千春にだ。こう言ったのである。
「今日はプールとは別の場所に行かない?」
「別の?じゃあ海?」
「海じゃなくてね」
そこではなくだというのだ。
「泳ぐ場所じゃなくて他の場所に行かない?」
「他?何処がいいの?」
「山はどうかな」
海とはまた別にだ。そこはどうかというのだ。
「山。神戸には山も多いから」
「だからなの」
「うん、どうかな」
今日のデートはそこはどうかとだ。千春に恐る恐るといった感じで提案する。
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