幻の月は空に輝く
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サスケからの敵認定
ズルズルと引き摺られるように歩いていた、まだ体重の軽い子供な私と、迷いのないイタチ。
そう。それもさっきまでの話し。
今は何故か大きめのテーブルを挟んで、イタチとサスケ兄弟とお茶を飲んだりしてたりとかね。しかし、人数が増えた割りに相変わらずな沈黙。
寧ろ、サスケからの探るような――なんて可愛いものじゃなく、ギンッと睨みつけられる視線は居心地が悪い。
そういえば君、イタチに修行とかつけてもらいたがってたっけか。
弟の自分が次回に回されたのに、見ず知らずの自分よりも小さな子供を連れてくれば機嫌も悪くなるよね。それが、弟の遊び相手確保だとしても。
まぁ、正直私には関係ないし同じ年だし。
お茶請けが美味しいのがまだ救いだと、私は目の前の風景にフィルターを掛けてお茶とお菓子を楽しむ。
今度抹茶でも点ててもらおうかなぁ。久しぶりに飲みたいなぁ。
ちなみに、私とサスケの邂逅は今から30分程前だった。
イタチの帰還に喜びを隠さないまま家から飛び出してきたサスケは、引き摺られるように歩く私を見て驚愕に目を見開く。
あぁ、うん。吃驚するよね。自慢の兄ちゃんが子供を引き摺って歩いてたら。
それは私も同感だよと思ってたんだけど、その後のサスケの行動は正直予想外だった。いや、ある意味予想内なのかな? どっちだ??
兎に角、サスケは私を遠慮なく睨みつけながら、声だけでイタチに問う。
「そいつ、誰だよ?」
そんな刺々しいサスケに慣れているのか、イタチは私に自己紹介しろと言わんばかりの視線を向けてきた。
いやいや。聞かれてるのアナタでしょ。
けれど私が口を開かないと話しが進まないと、気が重いなぁ、なんて思いながらサスケに顔を向けた。
「夜月ランセイ」
とりあえず自己紹介。
本当にシンプルな、名前しか言わない自己紹介だけどイタチからの突っ込みはない。これでいいのだろうかと、自分でそれしか言わなかった割にイタチを見上げれば…。
あぁ、良いんだね。
イタチの表情でこれでいいんだと納得する。
「お前に聞いてない」
しかしツンツンなサスケは、私が答えた事に不満なのか、殺気と呼ぶには可愛らしいものを向けてくる。
しかしさっきから会話が成り立たないな。
というかやっぱりただの兄ちゃん大好きっ子か。
お家に帰りたいなぁ…。
そう私が思った時点で、イタチが茶を煎れよう、なんて言いながら台所に行ってしまう。容赦なく私に背を向け、場の空気なんてまったくといっていい程考慮もせずに。
少しは空気を読めと叫びたい。
っつーか、サスケもイタチにくっついて台所に行けばいいのにと、心底思っていたんだけどサスケは動かない。頼むから動いてほしい。正直、空気が重たいのよ。
「……」
私を探るようにジッと見てくるサスケ。
だから殺気を混ぜるな、と思わずため息が漏れた。
中身が大人だろうとなんだろうと、気まずいものは気まずい! そんなわけで、結構重たいため息になったけど、ギンッと更にサスケに睨まれる。
仕方ない。事情説明と、後はサスケが嫌なら断ってほしいと伝えてみよう。
「俺と同じ年の弟がいると聞いた。手合わせをしてほしいと。アンタが嫌ならイタチさんに断ってくれ」
面倒だと言わんばかりの態度と口調。
多少大人気ないかもしれないけど仕方ない。
「……お前が俺の相手になるのかよ」
あぁ。そっちの心配か。
「さぁな」
肩を竦めながら答えてみたけど、心境としては通行人Dに聞くなといった所。私のそんな態度が余裕綽々に見えたのか、サスケの唇の端がクイッと上がった。
ん? 何だその表情。
「イタチ。コイツをへこましたら俺と手合わせしろよ?」
おや? いつの間にか戻ってきたイタチに、サスケがフフン、と自信あり気に胸を張りながら何か言ってる。
ちらり、とイタチに視線をながして見れば、イタチも口元の端を上げるだけの笑み。
兄弟は似るもんだしコミュニケーションをとるのも大いに結構。だがしかし、部外者を置き去りにするのは止めてもらえないだろうか。
「ランに一撃でも与えられたらな」
あれ?
いつの間にかサスケと私が手合わせする事決定な感じ。別にいいんだけどね。サスケが相手なら、今の自分の立ち位置も分かりやすいし。
ナルト相手だと、正直上忍レベルに差し迫って年相応からかけ離れてるから、基準にならないんだよね。
幾らサスケが一線を賀してるとは言っても、基準に出来ない程じゃない。
「ラン。手加減するなよ?」
「……イタチさん。面倒な事押し付けないで下さい」
恐らくだけどね、あのサスケから一撃ももらわずに倒せという事なんだろうなぁ。流石に買いかぶり過ぎなんだけどと目を細めてイタチを見れば、相変わらず何を考えてるか分からない笑みが返ってきた。
「まぁ…その為に呼ばれたんで、手合わせはしますよ」
なんとなく、自分が里抜けをする前に遊び相手を確保しようっていう印象を受けるんだけど、私の考えすぎなのかどうなのか。
「あぁ。その前に茶の準備が出来た」
「………イタチさんってマイペースですよね」
このまま手合わせかと思ったら、お茶ですか。
いや、飲みたいよ? 飲みたいけど、今の流れはお茶じゃないだろうと思うのは私の気のせいかな。
そんなわけで冒頭に続くわけだけど…。
「逃げるなよ」
既に私がお茶を飲みながら寛ぎモードに入っている事に気付いてるのか。それとも面倒だと思っている態度が表に出てるのか。サスケが態々と念押ししてくる。君はそんなにイタチと手合わせをしたいのか。
「逃げた所で無駄、だろ」
どうせイタチに捕まるし。
「余裕だな」
というか、隣で無責任に煽らないでくれないかな。
「チッ。舐めやがって」
いやいやいや。私が言ったんじゃないから。
一体この兄弟は私を何だと思ってるのだろうか。君たちみたいに主役級にはなれない通行人なんだけど。
しかもAからDに格下げになったばかりの私に対して余裕だのなんだのと。イタチとサスケの目は節穴か。
最近多くなった脳内でのやりとり。気が付けば、イタチとサスケの両方から穴の開くような視線を向けられていた。
「ラン。茶菓子はどうだ? お前の勧めてくれた場所の菓子だ」
って…そんな真面目な表情して茶菓子か。
いや、イタチらしいけどね。なんかすっごくイタチらしいけどね。
「美味しいですよ。新作ですね」
皿に置かれた菓子を改めて見てみれば、色とりどりなお菓子。私が見た事ないから多分新作だよね。
「そうか」
「チッ」
………。
ヲイ。そこの兄弟二人。私に対して温度差激し過ぎないか?
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