おっちょこちょいのかよちゃん
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122 大戦の日までに
前書き
《前回》
三学期が始まり、かよ子は新年最初の登校をする。始業式で校長の長い話を聞いた後、帰って来たかよ子の元には異世界の人間・フローレンスとイマヌエルからの手紙が届いていた。その内容は共に異世界にて戦い、戦争主義の世界の撲滅、剣の奪還、そして行方不明の藤木茂の救出と言うものだった!!
オリジナルキャラ紹介・その5
祝津ゆり (はふりつ ゆり)
羽柴家の長女でさりとありの姉。初登場62話。二人の妹の纏め役。実家にいた頃は妹達の喧嘩を止める役をしていた模様。現在は結婚して神戸に住んでいる。武装の能力を持つ。現時点ではどのような武器を所持しているのかは不明。好きな食べ物は押し寿司、ケーキ、カステラ。
かよ子は手紙を読み終えると母が部屋に入って来た。
「かよ子、手紙を読んだのね」
「うん・・・」
「お母さんの方にも来たわ。私も行く事になるの。かよ子、向こうの世界に行くという事は今まで以上に危険な戦いになるわ」
「うん、おっちょこちょいして迷惑にならないか心配だよ・・・」
「でも、隣のおばさんの家にも来ているし、隣のお兄ちゃんも一緒に来てくれるわ」
「うん、私、今まで以上に頑張るよ!」
かよ子の決心は並ならぬものだった。
三河口は居候中の家に戻って来た。
「只今帰りました」
「健ちゃん、お帰り。そうだ、健ちゃんにも手紙が来てたよ」
「え?はい」
三河口は部屋に行き、手紙を見た。内容はかよ子の所に来たものと同じ内容だった。
(向こうの世界に行くのか・・・。この大戦の時は必ず訪れると俺は予感していた。だが・・・)
三河口は内容にふと気づいた。
(藤木茂ってかよちゃんのクラスメイトだよな・・・。奏子ちゃんの近所に住む笹山かず子って女の子を好きになっていた・・・)
三河口はふと電話を掛けた。
「もしもし。徳林奏子ちゃんのクラスメイトの三河口と申します。奏子ちゃん、いますか?」
掛けた相手は奏子だった。
『もしもし。三河口君、どうしたの?』
「実は帰ったところ、俺宛てに手紙が来ててね。それも異世界からで内容はその手紙を受け取った者は異世界に来てそこの人間と共闘して欲しいというものだったんだ」
『あ、私の所にも来たよ』
「そうか、これは必然か偶然なのか・・・。それより、その手紙によると赤軍は政府に異世界の道具・杯・杖・護符を渡す事と引き換えに行方不明の藤木茂って子を返すとの事だ。これで俺は藤木君は異世界に連れて行かれたと確信したんだが・・・」
『うん、私もそれは嘘じゃないと思う』
「その藤木って男子は確か奏子ちゃんの近所に住む笹山かず子ちゃんが好きだった男子だよな?」
『うん、そうよ』
「やっぱりか・・・。奏子ちゃん、俺達が異世界に行く日が来たら一緒に戦おう』
『うん、私も頑張るわ!』
「それじゃ、失礼」
『うん、またね』
お互い電話を切った。三河口は叔母の元に行く。
「おばさん、これから大変な事になりますね」
「手紙を読んだんね・・・。でも、大丈夫よ。赤軍でも異世界の敵でも、必ず勝たなきゃって思わんとだめよ!」
「はい・・・。ですが、文化祭の時、赤軍の奴に俺の能力を複製され、その機械を量産して奴等も俺と同じ能力を持つとなると・・・」
「大丈夫!そんなんで気にしちゃあかんよ!その対策をこれから練りゃいいんだから!」
「・・・はい」
長山の家にも手紙が来ていた。長山にもその字は読めた。長山は威圧の能力を持っているゆえに三穂津姫から神通力の眼鏡を貰っていたからだろう。
(遂に戦うのか・・・。そしてやっぱり藤木君は異世界にいたのか・・・!!)
長山はこの依頼を断るとバチが当たると思い、決意を固めた。
冬田にも異世界からの手紙が来た。
(ええ、始まるの・・・!?)
冬田は恐怖を感じた。
(大野くうん、私、どうすればいいのかしらあ・・・?)
すみ子の家にも異世界からの手紙は届いていた。
「お兄ちゃん、異世界の人からの手紙が来てたよ・・・」
「ああ、俺もだよ」
「お兄ちゃん・・・、私達、大丈夫かな・・・?」
「そう信じるしかない。兄ちゃんも行くし、すみ子の友達も行くだろ?きっと大丈夫だ」
「うん・・・!!」
すみ子は兄の言葉によって異世界の戦いに参戦すると決めた。
ブー太郎の家にも手紙は来た。
(異世界の剣・・・?もしかして山田かよ子が持ってる杖とあの名古屋の姉ちゃんが持ってる護符と同じ最強の強さを持つ物なのかブー?)
そしてブー太郎もその文を読む事でもう一つのことを理解した。
(ふ、藤木、やっぱり異世界にいたのかブー!!)
そしてブー太郎は自分も異世界で戦わなければならないと自覚する。そして電話を掛ける。
「大野君」
『どうした、ブー太郎?』
「大野君の所に、異世界からの手紙、届いたのかブー?」
『ああ、来たぜ。俺は行くつもりだ。こんなの断るわけにはいかねえ。俺達の未来もかかってんだからな』
「解ったブー。オイラも行くブー!!」
『サンキューな、ブー太郎。流石俺達組織「次郎長」の一人だ!』
「いやあ、それじゃ、ブー」
ブー太郎は電話を切った後、今度はもう一人の親分、杉山に電話を掛ける。
「もしもしブー、杉山君?」
『おう、ブー太郎、どうしたんだ?』
「実は、オイラの所に異世界からの手紙が来たんだブー。杉山君の所にも来ているのかブー?」
『ああ、来たぜ。俺は行くぜ。この頼みを聞いたなら断るわけにはいかねえんだ』
「そうですね、ブー。オイラも頑張るブー!」
『そうだな、一緒に元の世界を取り戻そうぜ!』
「はい、宜しくお願いしますブー!」
ブー太郎は電話を切った。
さくら姉妹の所にも異世界からの手紙が来ていた。
「ええ、異世界行くのお~、面倒くさいなあ・・・」
「あんたねえ、そんな呑気な場合じゃないのよ。そうやってぐうたらできるのも今のうちかもしれないのよ」
「いいじゃん、お姉ちゃん、一人で行ってきなよ~」
「バカ言ってんじゃないわよ!あんた、前に異世界の敵が来た時、あの高校生の人から叱られたでしょ!ちょっとはその石持ってる事に責任持ちなさいよ」
「え~、じゃあ、お姉ちゃんにあげるよ」
「要らない」
緊張感を持つ姉と怠惰な妹であった。
北勢田は異世界からの手紙を読む。
(遂に大きな戦いが来るのか・・・)
北勢田は決意する。この手紙の依頼を断るわけには行かないと。
かよ子の家に三河口が訪れた。
「こんにちは」
「あら、こんにちは」
「お、お兄ちゃん・・・」
「山田さん、そしてかよちゃん・・・。そちらにも異世界からの手紙が届きましたか?」
「ええ、届いたわよ」
「わ、私の所にも来たよ!」
「やっぱりな、藤木茂って子は異世界にいる。彼は確かかよちゃんのクラスメイトだったよな?」
「うん・・・」
「俺の所にも同じ手紙が来た。きっと、今まで以上に激しい戦いになると俺は思う」
「うん、私も気を付けるよ」
「そして、あの剣も絶対に取り返そう。俺の従姉達も来るとの事だよ」
「あの剣・・・!!」
かよ子はその剣を覚えていた。自分の持つ杖と同じ最上位の能力を有する道具である事。夏に赤軍に奪われ、赤軍の長がクリスマス・イブの日に名古屋で使用していた事。
「うん!」
「それじゃ、失礼します」
三河口は家を出て行った。
(絶対にその剣を取り戻し、藤木君も連れて帰る!!)
かよ子は決意した。
杉山はブー太郎と電話をする前にその手紙を読んでいた。そしてブー太郎との電話を終えた後、もう一度手紙を読んだ。
(戦いか・・・)
そして杉山は自分を好きになっている女子が頭に浮かぶ。そして東京のあの気の強いピアノが特異な女子も。
(あいつらもきっと大変な目に遭うんだろうな・・・)
杉山は夏休みに会ったその女子に悪戯はしたものの、どこかで違う思いを感じていた。しかし、あのおっちょこちょいの女子の事も見捨てずにはいられなかった。そして部屋のドアがノックされる。
「さとし」
姉が入って来た。
「ああ、姉ちゃん」
「あんたのとこにもこの手紙来たでしょ?」
「ああ、うん・・・」
「勿論、手段は一つって解ってるわよね?」
「ああ、行くつもりだぜ・・・」
「なら、必死で頑張るのよ。それから大野君とも喧嘩しちゃダメよ」
「わ、解ってるよ」
「そうよね・・・」
姉は部屋を出て行った。
(俺は何の為に異世界に行く?そうだよな、あの赤軍のバカな事を成功させない為、元の日常を取り戻す為だよな!!)
杉山は己を振り返った。
大野はにも異世界からの手紙を読むことはできた。
(行かなきゃダメだよな・・・。杉山達と共に・・・)
大野も覚悟を決めた。自分の為にも親友の杉山の為にも、そして多くの友達、この日本の為にも元の日常を取り戻すと・・・。その晩、大野家の夕食にて・・・。
「父さん、母さん、俺は異世界に行かなくちゃいけないんだ。元の日常を取り戻す為に、この異世界からの手紙がその証だよ」
「あら・・・。そうなの」
大野の両親は息子の決意に反対はしなかった。大野の両親は戦いとは無関係の人物ではあるが、息子の勇気ある行動や山田かよ子を襲おうとした異世界の人間を親友の杉山達と共闘した事、それから様々な事件に巻き込まれながらも打ち勝っていった事から息子を心配するどころか、応援していたのだ。
「解ったわ。頑張っていきなさい」
「でもな、けんいち・・・」
大野の父が少し小声になって言った。
「父さん?」
「実はさっき母さんには言ったんだけど・・・。父さん、四月から東京へ転勤なんだ・・・!!」
大野は父の報告に寝耳に水どころかえっ、と思った。
後書き
次回は・・・
「転校の噂」
かよ子の母は商店街で大野の母と遭遇する。大野の母から主人が転勤で東京に行くという話を聞き、それをかよ子にも報告する。大野の転校も免れないと気づくかよ子ではあるが、その転校の話は広がり、杉山の耳にも・・・!!
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