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戦国異伝供書

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第百二十二話 大友家動くその十一

「間もなくな」
「そうしますか」
「堂々とな」 
 ただ姿を現すのではなくというのだ。
「その様にする」
「そうしますか」
「そしてな」
 それでというのだ。
「敵の度肝を抜くぞ」
「そうしますか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「敵をここで驚かせるとな」
「敵の動揺を誘えます」
「そうなります」
「そしてですな」
「そのことでも先んじますな」
「そうじゃ」
 家臣達にも答えた。
「そうなるからな」
「ここはですな」
「是非ですな」
「堂々と姿を現す」
「そうしますな」
「耳川の北にな、敵も我等が来るとわかっておる」
 大友家の方もというのだ。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「間もなく来るとはですな」
「思っておりませんな」
「まだ先だと思っていますな」
「そうじゃ、それなのに出て来ればな」
 それでというのだ。
「敵は驚き惑う、そこで策も乱れるわ」
「そしてですな」
「その乱れを衝く」
「そうしますな」
「そうじゃ」
 こう家臣達に話した。
「戦は乱れれば負けるな」
「どの様な軍勢でも」
「そうなります」
「ならばですな」
「敵のそれを誘う」
「その為にも」
「ここはこう仕掛ける」 
 こう言ってだった、義久は。
 軍勢を先に進ませた、そしてだった。
 高城攻めに血眼になっている彼等の前に堂々と姿を現した、その際島津家の軍勢は四兄弟が総出で来て着陣したことを叫んだ。
「又三郎様ご着陣!」
「又四郎様ご着陣!」
「又六郎様ご着陣!」
「又七郎様ご着陣!」
 こう叫んだ、すると。
 大友家の軍勢は遠くから見てもわかるまでに驚いていた、それは声なき声となって出ていた。それを見て。
 義久は弟達に確かな声で言った。
「まずは先を制したな」
「左様ですな」
「我等の到着に驚いています」
「これだけでもかなり大きいです」
「うむ、ではこれより戦に入る」
 義久は強い声で言った、そうしてだった。
 耳川に布陣した、そのうえで戦に入った。耳川での戦がはじまろうとしていた。


第百二十二話   完


              2020・11・15 
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