戦国異伝供書

「これよりな」
「わかりました」
「では島津家の速さ見せてやりましょう」
「薩摩隼人のそれを」
「今から」
「その様にするぞ」
　こう言って義久は耳川の方に軍を進ませた、四万の大軍であるがその足は速くすぐに日向に入った。
　その速さに弟達も言った。
「いや、これはです」
「見事な速さですな」
「当家ならではですな」
「織田家の軍勢も足が速いが」　
　このことには定評がある。
「しかしな」
「当家もですな」
「かなりの速さですな」
「薩摩隼人の足は」
「今はそれを発揮してじゃ」　
　そうしてというのだ。
「進んでおる、そして政でな」
「道もある程度ですが整えてきました」
　このことは義弘が言ってきた。
「そうしてきました」
「左様、やはり道がよいとな」
「その分ですな」
「進みやすくてな」
「足も速くなりますな」
「そうじゃ、わしはそのことも考えてな」
「道を整えていたのですな」
　こう兄に言った。
「そうですな」
「そうじゃ、それでじゃ」
「耳川にも」
「速く着くののじゃ」
「そうなりますな」
「織田家の軍勢は足が速い」
　よく弱いと言われるがこのことには定評がある。
「それは元々であるが道もな」
「整っているので」
「それでじゃ」
　まさにというのだ。
「こうしたことも考えてな」
「政においてですな」
「道を整えておいた」
「そうでありましたか」
「これなら足の速い薩摩隼人がより速く進める」
　そうなるというのだ。
「それこそ大友家の予想を超えてな」
「これはまさに織田家の政ですな」
　歳久が指摘してきた。
「左様ですな」
「そうじゃ、織田家を見てな」
「道も整えましたな」
「織田殿は戦も凄いが」
「それよりも政ですな」
「それが実に素晴らしい方でじゃ」
　それでというのだ。
「田畑も街も整え」
「堤に城に、そしてですな」
「道もじゃ」
　まさにそれもというのだ。
「整えられるからな」
「手本にされたのですな」
「そうじゃ」
　こう次弟に答えた。
「わしもな」
「それでこの進軍の速さですな」
「そうじゃ、ではな」
「このままですな」
「耳川まで進むぞ」
「いや、織田殿は瞬く間に天下の殆どを手中に収められましたが」
　家久もその信長のことを話した。
「それは戦ではなく」
「政でじゃ」
「手に入れられたのですな」
「そうじゃ、それがじゃ」
　まさにというのだ。
「凄くてな」
「天下人になられましたか」
「後は九州と伊予だけとなった」　
　信長が手中に収めていない国はというのだ。