不良でも屑じゃない

「この子は女の子ですね、あと野良猫みたいですが」
「はい、俺達ボランティアの手伝いしてまして」
「元々この娘探していたんです」
　掛布と岡田が答えた。
「そうしていまして」
「それで、です」
「引き取って里親探してくれますか」
「そうします」
「そこはやらせて下さい」
「ああ、俺が引き取ります」　
　真弓が前に出て来る感じで言ってきた。
「そうします」
「君がですか」
「はい」
　獣医に対して言い切った。
「うち丁度猫飼おうって話になっていて」
「では退院したら」
「引き取ります」
　その様にするというのだ。
「絶対に」
「ではお願いします」
　こうしてだった、猫は治療の後で真弓の家に引き取られることになった。そのことが決まって病院を出てから。
　掛布と岡田は真弓に対してまさかという顔で言った。
「お前が猫引き取るなんてな」
「想像もしなかったぜ」
「お前猫嫌いじゃないんだな」
「そうなんだな」
「好きだからな、というかお前等もな」
　真弓は真弓で二人に言った。
「ボランティアしてるんだな」
「姉ちゃんに言われてな」
「俺は掛布に誘われてな」　
　二人はそれぞれ真弓に答えた。
「それでやってるんだよ」
「高校に入学してからな」
「柄悪いからそんなことしてるとは夢にも思わなかったぜ」
「それはお前もだろ」
「実際喧嘩っぱやいしな」
「俺達とも何度も喧嘩したしな」
「お互い嫌いだしな」
「ああ、だからお前等と会ってな」　　
　学校の帰りにというのだ。
「嫌な奴等と会ったって思ったぜ」
「それはこっちもだよ」
「お互い様だろ」
「全く、こんなところで会うなんてな」
「腹立ったぜ」
「けれど猫頼むぜ」
「ちゃんと面倒見ろよ」
　二人は真弓にこうも言った。
「折角家に迎えるんだからな」
「最後までちゃんと一緒にいろよ」
「わかってるさ、あいつは俺の家族だ」
　真弓も真剣な顔で答えた。
「これからな」
「そうしてか」
「それで暮らしていくんだな」
「親父とお袋と俺とあいつの四人でな」　
　そうすると言ってだった。　
　実際に真弓は猫が退院すると家に迎えた、そうしてだった。
「ユキか」
「その娘の名前そうしたんだな」
「ああ、そうしたよ」
　真弓は家に来た掛布と岡田にその子猫を見せつつ話した、ユキは今は真弓の膝の上にいて喉を鳴らしている。
「ちょっと考えてな」
「それでか」
「その名前にしたんだな」
「色は白じゃないけれどね」
　ユキ即ち雪の様にというのだ。
「違うけれどな」
「それでもユキか」
「その名前にしたんだな」
「俺が名付けたんだよ」
「そうか、正直センスないな」
「茶色の毛の娘にユキなんてな」
　二人は真弓に率直に言った。
「どうもな」
「そこは他の名前にしろよ」
「うるせえ、あと小倉死んだぞ」
　ユキの目に接着剤を付けた彼はというのだ。
「前に盗んだ車の中でシンナーやった後で煙草吸ったら引火してな」
「爆発してか」
「それでか」
「ああ、車の中で火達磨になってな」
　そうしてというのだ。