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幸せが逃げて当然

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第三章

 一年程経って美里の姉の夫、彼女にとって義兄である光彦濃いめの茶色のショートヘアで穏やかな顔の彼がこう言った。
「妻とはね」
「もう、ですか」
「この子を虐待するから」
 赤子を抱いて言うのだった。
「離婚することになったよ」
「そうですか」
「実家の両親も納得してくれたし。あちらが悪いからね」
 それでというのだ。
「慰謝料もね」
「姉が払ってですね」
「そうすることになったよ」
「酷い姉ですからね」
 タマに言ったこと、したことを思い出しながら言った。
「自業自得ですね、実は母も」
「お義母さんもなんだ」
「はい、最近ヒステリーにお金の使い方に家事の放棄が前から酷かったんですが」
 それがというのだ。
「もう手がつけられなくなって父も」
「離婚だね」
「やっぱり慰謝料は母が」
「そうなったんだ」
「父は物凄く穏やかで生きものは好きなので」
「こっちになんだ」
「暮らすことになりました」
 つまり同居することになったというのだ。
「そうなりました、主人もいいと言ってくれました」
「それはよかったね」
「父は母と暮らしていた家は売るそうです」
「じゃあお義母さんは」
「家がなくなります、それは姉もですね」
「そうなるよ、母娘で路頭に迷うね」
「ですね、けれど自動自得ですね」
 美里はやや俯き難しい顔で述べた。
「それも」
「そうだね、命を粗末にする様だとね」
「そうもなりますね」
「神様は見ているしね、それで僕は離婚して暫くしたら両親にお見合いを言われてるし」
「それで、ですね」
「この子とやりなおすよ」 
 その子供を見て言った。
「いい人とね」
「そうして下さい」
「それとタマは」
 自分が飼っていた猫、今は美里夫婦の家族である彼女の話もした。
「これからもね」
「はい、一緒に暮らしますので」
「宜しくね」
「わかりました」
「これまでもそうだったけれど時々会いに来ていいかな」
 タマにとだ、光彦は美里に申し出た。
「そうしても」
「はい、お義兄さんさえよかったら」
「それじゃあね、じゃあタマこれからも宜しくね」
「ニャン」
 美里の傍のソファーの上で丸くなっていたタマは彼に一声鳴いて応えた、それから。
 美里は夫との間に子供をもうけ父が来て一緒に暮らしはじめた、光彦は離婚してから再婚した心ある人と我が子の三人に新たに猫を迎えて幸せな生活をスタートさせた。タマは美里の家族とその彼に囲まれて幸せに暮らし。
 例の姉と母は慰謝料の支払いに四苦八苦しながら生きていった、仕事嫌いな二人だったが生活と慰謝料の為にそうしなければならず人間性故に周りから嫌われていた。だが美里はもう二人のことはどうでもよく夫と子供と父そしてタマに囲まれで幸せに過ごしていった。


幸せが逃げて当然   完


                   2021・1・21 
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