| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

おっちょこちょいのかよちゃん

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

119 届いた年賀状

 
前書き
《前回》
 大晦日の夜、1974年の終わりと1975年の始まりを過ごすかよ子は隣の羽柴家と共に御穂神社で初詣に出かける。その神社では、杉山に大野と出会い、共に初詣を行う。そして他の皆もそれぞれ戦いを終わらせたいという気持ちを持って参拝するのだった!!

 オリジナルキャラ紹介・その2
 羽柴奈美子 (はしば なみこ)
 かよちゃんの隣の家に住む女性。旧姓・三河口。初登場4話。三河口健は甥にあたる(奈美子の弟が三河口の父)。戦後、異世界の護符を手にして食糧不足を乗り越えてきた。現在、異世界の護符は三女のさりが受け継いでいる。好きな食べ物はゆで卵、りんご。 

 
 石松は三保の松原にて日の出を見ていた。
(新たな年が始まったのか・・・)
 だが、戦いは激しくなるばかりである。杖の所有者が御穂神社に初詣に来てくれた事は三穂津姫にとっても嬉しい事であろう。それによって勝利が(もたら)されるとよいのだが・・・。
(親分、某は何とか戦い抜いておられます・・・。『そちら』の方の状況は如何でしょうか・・・)
 石松は「向こうの世界」の親分や同志の者達、そしてそこの人間達の事を考える。向こうも戦いは激しくなっているはずなのだ。
(果たして、我々は勝てるのか・・・。そしてこの国を守れるのか・・・)
 それは石松にも出せぬ答えであった。

 元日の昼、かよ子の家族は届いた年賀状を整理していた。
「これがかよ子宛てのね」
 母はかよ子に彼女宛の年賀状を渡した。まる子やたまえ、とし子などの友達は勿論、学級委員の丸尾からも年賀状が来ており、「三学期の学級委員は是非私に一票をお願い致します!」とあった。一体どれだけ彼は学級委員になる事に拘っているんだかと苦笑した。そして、かよ子はある事に期待を寄せる。
(杉山君からの年賀状、あるかな・・・?)
 かよ子は探してみた。そして、あった。
(よかった、あって・・・)
 かよ子は落ち着いた。年賀状に書くとしてお決まりの文言「新年あけましておめでとうございます。今年もよろしく」は勿論、「困った事があったらいつでも助けてやるよ」とあった。
(杉山君、ありがとう・・・。私の年賀状も届いたかな・・・?)
 かよ子は自分が出した年賀状に杉山がどう反応するか気になった。そして年賀状を探る。そしてあの「杯の所有者」である東京の女の子からの年賀状もあった。その年賀状には「今度の休日にまた遊びに行きます」とあった。
(りえちゃんとまた会えるんだ・・・)
 だが、ここでかよ子は同じ戦いの仲間として、そして恋敵(?)としてりえとまた会える事を期待するのであった。

 一方、杉山の家。杉山は親友である大野から来た年賀状を見た。「運動会の時は悪かったな。でも、また今年も一緒に頑張ろうな」とあった。
(大野・・・)
 杉山はそして別の年賀状を見る。ブー太郎からも「今年も子分として宜しくお願い致しますブー」と書いてあった。
(あいつ、ここにも『ブー』って書くのかよ・・・)
 杉山は心の中で突っ込みたくなった。そしてあのおっちょこちょいの女子からも来ていた。
(山田・・・)
 杉山はかよ子からの年賀状の裏を見る。そこには「去年は色々私の事助けてくれてありがとう。今年も宜しくね」とあった。
(ははは・・・、あいつ、おっちょこちょいだからな・・・。でも、あいつは命懸けた戦いをしてるんだ・・・。俺も何とか助けてやらないと・・・)
 その時、不意に姉が現れた。
「あら、さとし。それ、あの山田かよ子ちゃんって子からのじゃない」
「ね、姉ちゃん!ノックぐらいしてから入ってくれよ!」
 杉山は姉の登場に驚いた。
「はいはい、ごめんなさいね。あんた案外、あの子の事、気にしてるのかしら?」
 姉はそう言って出て行った。
(確かに、あいつの事気にしてるかもしれねえな・・・。あいつが俺の事好きだからか?)

 かよ子は母にりえからの年賀状を見せた。
「お母さん、りえちゃんから年賀状が来たよ」
「あら、良かったわね。お母さんの所にもりえちゃんのお母さんからの年賀状が来たのよ」
「え、そうなの!?」
「『今度の休日にまた来ます』って言ってたわ。成人式の日があってその連休に来ると思うわ」
「成人式の日の連休か・・・」
 かよ子はりえとまた会えると思うと待ち遠しく、同時にまた何か大事な話でもあるのではと思った。

 大野の家では大野も自分に来た年賀状を確認していた。真っ先に杉山から来た年賀状を見た。「運動会の時は本当にごめんよ」とあった。
(あいつ・・・。やっぱり気にしてたのか・・・)
 大野は運動会の時に杉山と喧嘩した事があり、一時期は口を聞くことがなかった。しかし、クリスマスの合唱コンクールの時、自分が独唱する部分で声が出なくなってしまい、即刻で杉山が代わりに歌ってくれた。やはり、その間、自分も杉山もどこかで仲直りしたいという気持ちがあったのだろう。そして大野は次の年賀状を見る。冬田からだった。「大野君と今年も素敵に過ごせたらいいわね」と書いてあり、読むと気分が悪くなりそうな文だった。気を取り直し、ブー太郎からの年賀状を見る。「今年も子分として精一杯お役に立てるよう頑張りますブー」とあった。
(そうだな・・・、あの戦いも終わらせないとな・・・)
 大野は杉山やブー太郎達と共にあの戦いを終わらせ、元の日常を戻したい。そう思っていた。

 冬田は大野からの年賀状で自分の思いが伝わったか気になっていた。
(ああ、私の王子様、大野くうん・・・)

 笹山は自分に届けられた年賀状を見る。女子の友達の年賀状が多いが、その中で数少ない男子からの年賀状があった。その一人の中にあの行方不明の男子から来たものもあった。
(藤木君からの・・・)
 きっと行方不明になる前に書いて出したのだと笹山は思った。その中に「今年こそは卑怯な事しないように頑張ります」とあった。
(藤木君、今、どこにいるの・・・?)

 かよ子は正月の空を見上げた。
(こんなのどかなお正月なのに緊張感がする・・・。でも、またりえちゃんに会えるし、きっと一緒に戦える時が来るよね?それまで待っていよう・・・)
 かよ子は誓い続ける。絶対に元の日常を取り戻すと。そんな中、母が部屋に入って来た。
「かよ子、とし子ちゃん達よ」
「あ、うん」
 かよ子は玄関に出る。
「かよちゃん、明けましておめでとう」
「とし子ちゃん、明けましておめでとう」
 まる子とたまえもいた。
「皆で羽根つきやろうと思ってるんだけど、一緒にどうかな?」
「うん、やろう!」 
 かよ子は皆で近くの公園に行き、羽根つきして遊んだ。そして、羽根を変な方向に飛ばしたり、羽根を突く時に羽子板が手から外れたりしてしまうなどのおっちょこちょいをしながらも羽根つきを楽しむのであった。

 そして三が日が過ぎ、さりが名古屋へ戻る日が訪れた。さりの両親、そして彼女の従弟、そして山田家も新幹線の静岡駅にて彼女の見送りを行う。
「それじゃ、さり、気を付けるんよ。護符はちゃんと持ってるね?」
「うん」
「お姉さん、また会おうね・・・」
「うん、また休みができたら戻るよ」
 新大阪行きの新幹線が到着した。さりは乗車する。
「じゃあね」
 そして列車は発車した。かよ子はさりを見送ると共に三学期が近づいているとまた実感するのであった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「混乱する政府」
 平和を正義とする世界と戦争を司る世界。こちらでも激しい攻防が続いていた。その一方で、かよ子の住む世界では日本赤軍からの年賀状が内閣に届き、議会が騒ぎ出す・・・。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧