魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第二百五十七話
コタンジェントが暦さんに伝えた合流場所は浪白公園だ。
真宵さんが居なくなったのを知りながら暦さんと彼女が初めて会ったあの場所を合流場所に指定するとは趣味が悪い。
「…集合場所、変えさせようか?」
「気にしなくていいよ」
「そう」
無言。
ひたすらの無言だ。
触れない方が良かったかもしれない。
駿河はまだ腕の中で眠っている。
そのうち起きるだろう。
「一夏君、君はあの鎧について知っていたのかい?」
「臥煙からは何も聞いていないよ。情報ももらってない。さっきも行ったけど俺が臥煙に依頼されたのは駿河に協力するように言う事だけだよ。
もちろん駿河が行くと言えば俺もちゃんとついていくつもりだった」
情報はもらってない。ウソハツイテナイヨ。
「その、君の千里眼で探せないのかい?」
「深淵を覗くとき、深淵もまた此方を覗いているのだ」
「気づかれるの?」
「可能性も0じゃない。あれは肉体ではなく精神を主体とする存在だろう」
なんせ400年も幽明の境をさまよったのだ。
「あちらは俺達が大人しく帰るにはおそらく手を出してこないはずだ」
「確証は?」
「今追撃を受けていない。それにさっきので彼方も撤退したということはあの焔をどうにかできない、つまりは本調子じゃない証拠だ。勿論俺達も。
今は一刻も早く臥煙と合流すべきだ」
ふよふよと飛行術式で浮遊しながら暦さんの後をついて言っていると、駿河が目を覚ました。
「おはよう。駿河」
「これは夢か?」
「二度寝したいなら、もっかい寝てもいいよ」
「いや、こうして居たいのは確かだが、ご主人様に負担をかけるわけにもいかないからな」
そう言うので駿河を地面に下ろしてやる。
駿河を下ろしたので、二人に目線が合う高さまで上昇する。
「駿河。体は大丈夫か? だるさや痛むところは無いか?」
「無い。むしろ学習塾跡に行く前よりも力がみなぎっている気がする」
「なら問題ないな」
吸血鬼の因子を含むエネルギーを注入したので一応注意して見ておこう。
「それで、これは今どこに向かっているんだ?」
と聞かれたので暦さんを顎でしゃくって指す。
「依頼人との集合場所だよ。名前は…ロウハク公園。神原なら知ってるんじゃないか?」
「ふむ…ロウハク公園か」
「もしかしたらナミシロ公園かもしれない」
「いや、聞いたことないな…。その公園にはバスケットゴールはあったか?」
「僕の知る限る無かったと思う」
「そうか。なら知らないな」
「でもあそこは戦場ヶ原のいえの近くだったからお前なら知っているかもしれないぞ」
「戦場ヶ原先輩の? しかし阿良々木先輩。それなら方向がまったく逆だぞ?」
その指摘に暦さんはぴたりと足を止め、間抜けな声を出した。
「阿良々木先輩、たまには歩かないとダメだぞ。自転車ばっかり乗っているとそうなるのだ」
「引き返してみよう」
そして引き返しては。
「あれ?」
また道に迷う。
「何してんの暦さん? 学習したら?」
「し、辛らつだな一夏君」
「何も感じないの? この不自然なまでに道に迷う状況に」
すると暦さんはハっとした表情になった。
そういう所はぱっと出るんだよなぁこの人。
頭はいいから多少ヒント出せば正解にたどり着けるが視野がやや狭い。
「迷い牛か⁉」
「ざっつらーい」
さっきからずっと弱い精神干渉魔法を受け続けていた。
鬼門遁甲系の方角を惑わす術だ。
「さっさと依頼人に指示仰ぎなよ」
「いや、それは..........」
「迷ってても仕方ないでしょ。物理的にも、精神的にも」
「ん?何の話だご主人様、阿良々木先輩」
「今こうやって僕らが迷ってるのは怪異の仕業かもしれないって話さ」
「それで今から悪辣非道な依頼人に指示を仰ごうって話さ」
暦さんをせっついて臥煙に連絡を取らせる。
『やあ、こよみん。待っていたよ待ち遠しかったよ。
そろそろ電話をかけてくる頃だと思っていたんだ』
と面白がるような声が聞こえた。
吸血鬼の聴力が捉えた内容は以下の通り。
一つ、織斑一夏ことユートピアは術を容易く破るだろう。
二つ、それをしないのは資質を見極めるためである事と敵を警戒しているからであって妨害ではない。
三つ、神原駿河の資質を見たいから彼女に任せてみると言い。
四つ、それでどうにもならないなら織斑一夏を頼れ。
電話を切った後の暦さんは何か言いたそうにこっちを見た後に、駿河に策を尋ねた。
「ふむ…道に迷わせる怪異か」
駿河はしばらく考えた後に。
「まずは現在地を確かめるべきだ。ご主人様」
「はいはい。まったくこれだから機械音痴どもは」
スマホを取り出してマップを開き、現在地を画面に出す。
「ここだよ」
「ふむ。これならいけそうだな」
そう言うと駿河は身軽な動きで民家の塀に飛び乗った。
「道に迷わせる怪異なら道を行かなければいい。道理だろう?」
その顔は非常に爽やかで、どや顔なのに嫌味のない笑顔だった。
ほめてほめてと尻尾を振る犬のようで愛らしかった。
「じゃ、その策で」
俺が駿河の後を風船のようについていくと、暦さんは大人しくついてきた。
暦さんも身のこなしは軽やかでとんとんと付いてくる。
「..........暦さん俺のワンピースの中覗いたら突き落とすからね」
「見ないよ。つか見えねーよ」
「見たら彼女さんと幼馴染さんにチクるから」
「社会的に死ぬからやめてほしいなぁ⁉」
「阿良々木先輩、大声を出すと」
「そこは大丈夫。遮音フィールドは展開済みだから」
「流石はご主人様だな」
そうして到着した公園に、臥煙の姿はなかった。
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