オズの木挽きの馬
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第八幕その九
「わしも好きだぞ、こちらの世界では殿や他の連中と一緒によく食っている」
「そうなんだ」
「魚は何でも好きでな」
「河豚もだね」
「うむ、しかし大坂以外では生の魚は食わなかった」
「それはどうしてかな」
「昔山国では新鮮な魚は食えなかったからな」
「それでなんだ」
「わし等は山国の上田にずっといて和歌山にもおってな」
それでというのです。
「山におることも多くてな」
「その大坂以外ではなんだ」
「生の魚は食わなかった」
「そうだったんだね」
「うむ、しかし今は違うぞ」
「お刺身もよく食べるんだ」
「大好きだ、特に青海の奴が食うぞ」
小助さんは笑って言いました。
「あ奴はな」
「その人も十勇士だね」
「ずっと一緒にいる仲間だ」
小助さんは笑って言いました。
「殿にお仕えしているな」
「前に佐助さんにお会いしました」
ここで恵梨香が言ってきました。
「渡し守をしていました」
「あいつも修行に出ているからな」
「はい、とても気さくな方ですね」
「あいつは十勇士で一番剽軽な奴でな」
「そうなんですか」
「よく悪ふざけをする、しかし殿への想いは同じでな」
それでというのです。
「我等十人共にな」
「幸村さんにですね」
「お仕えしておる、殿とは外の世界でも同じでだ」
「オズの国でもですね」
「同じだ、我等十人殿とは決して離れぬ」
小助さんは恵梨香に笑顔でお話します。
「何があろうともな」
「大坂の陣でもでしたね」
「皆生き残ってな」
「実はそうで」
「薩摩まで逃げ延びておった」
「そうでしたね」
「殿そして大助様もな」
こう言うのでした。
「あの方も」
「大助様って?」
「幸村さんの息子さんよ」
恵梨香は木挽きの馬に答えました。
「この人も勇敢な人だったの」
「そうだったんだ」
「そうなの、それでね」
「幸村さんとだね」
「十勇士の人達ともね」
「戦っていたんだ」
「そうだったの、この人も大坂の陣でお亡くなりになったってね」
その様にというのです。
「言われているけれど」
「その実はなんだ」
「生きておられたのね」
「そうなんだね」
「よかったわ、幸村さんも大助さんも生きておられて」
恵梨香はにこりと笑って言いました。
「本当に」
「日本のヒーローなんだね」
「本当にね、私幸村さんも十勇士の人達もね」
「大好きなんだね」
「ええ、皆生きておられて嬉しいわ」
「ははは、そう言ってもらえると嬉しいな」
小助さんも笑顔で応えます。
「わしもな」
「そうですか?」
「とてもな」
「それは何よりです」
「それにしてもあんた達明るいわね」
ガラスの猫は小助さんにこう言いました。
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