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八条学園騒動記

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第五百九十六話 カルボナーラその五

「残念だけれどね」
「そうか、お互いもう食いきれないならな」
「これ以上の勝負は無理ね」
「引き分けだな」
「悔しい限りよ」
「俺もだ、引き分けはな」
 ラビニアを忌々し気な顔で見て彼女に告げた。
「負けと同じだ」
「それは私もよ」
「全く、ここまできたのにな」
「残念だわ」
「俺もだ、しかしな」
「しかし?」
「今度は負けないわよ」
 次の勝負ではというのだ。
「何でもね」
「この状況でもそう言うか」
「何度でも言うわよ、負けることは大嫌いだから」 
 それ故にというのだ。
「今度の勝負が何でもね」
「俺に勝つか」
「そうしてやるから」
 フックを見返しての言葉だ、その目は生き生きとしている。
「覚悟していなさい」
「そっちこそな。それで立てるか」
 フックはラビニアに問うた。
「今は」
「お腹一杯でも」
「十二皿食ったからな」 
 かなりの量であることは言うまでもない、一皿一皿が普通の量でも十二皿ともなると相当なものである。
「だからな」
「それはあんたもでしょ、間違ってもね」
 ラビニアも言った。
「吐かないでね」
「誰が吐くか」 
 実際に危ないと思ったがフックはこう返した。
「何があってもな」
「言うわね、じゃあね」
「これでだな」
「引き分けって判定が出たし」
 尚賞金等はなかった、ただの自由参加のイベントだったからだ。無料だったのでそれでよしとしろということだった。
「それじゃあね」
「もうこれでか」
「私は帰って」  
 ラビニアは自ら席を立って言った。
「クラスで休むから」
「そうするか」
「ええ、そして次の勝負に備えるわ」
「今終わったばかりでもか」
「勝負はもうはじまってるのよ」
 次のそれはというのだ。
「今の勝負が終わったね」
「その瞬間にか」
「だからね」
「そう言ったんだな」
「ええ、ただそれは」 
 まだ座っているフックに言い返した。
「あんたもでしょ」
「そのつもりだ」
 フックも否定しなかった。
「俺もな」
「そうね、じゃあよね」
「俺もクラスに戻る」 
 二年S1組にというのだ。
「それでな」
「休むのね」
「かなり辛いから胃薬を飲むか」
「それもいいわよ、私もね」
 ラビニアにしてもというのだ。
「もうね」
「辛いからか」
「だから胃薬を飲んで」 
 そうしてというのだ。 
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