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戦国異伝供書

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第百二十話 三州奪還その五

「抑えるぞ」
「それ三国が我等の手に戻りますな」
「ようやくな、しかし戦国の世が終わるな」
 義久は肝を食いつつ神妙な顔になり述べた。
「何時終わるかわからなかったが」
「織田殿が尾張を統一されて十年ばかり」
「それだけで、ですな」
「もう天下は定まりますな」
「あっという間であるな、天下が泰平になれば」 
 今度は酒を飲みつつ述べた。
「それでな」
「民達も安らかになりますな」
「戦の世でなくなれば」
「もうそれで」
「それはよいことじゃ、もう戦国の世になることはな」
 このことはともだ、義久は話した。
「ないで欲しいのう」
「全くですな」
「もう二度と」
「そうなって欲しくないものです」
「やはり泰平が一番じゃ」
 何といってもというのだ。
「まことにな」
「はい、では」
「我等もですな」
「三国を戻せば」
「それでよい」
 こう言うのだった。
「我等は」
「左様ですな」
「それではですな」
「織田家の天下の中で」
「日向も取り戻そうぞ」
 義久は言ってだった。
 そうして弟達と杯を酌み交わし肝を食べた翌朝出陣した、他の城は置いておいてまずは高原城を目指した。
 大隅を出て日向に入った時にだ、義久は兵達を見て言った。
「よいな」
「はい、どの者も目が生きております」
「戦う気に満ちております」
「それならばですな」
「戦になっても」
「充分に働いてくれてな」
 そしてというのだ。
「敵を倒してくれる」
「左様ですな」
「そうしてくれますな」
「これまでの戦の様に」
「充分以上に働いてくれますな」
「うむ、幾ら策があり鉄砲が多くともじゃ」
 それでもというのだ。
「やはりな」
「兵が弱く、ですな」
「そして戦う気がなければ」
「それではですな」
「勝てませぬな」
「そうじゃ、弱兵で士気が低いなぞ」
 そうした兵達はというのだ。
「ものの役にも立たぬ」
「幾ら数があろうとも」
「それでもですな」
「ものの役にも立ちませぬな」
「どれだけ武具がよくとも」
「異朝の宋を見るのじゃ」
 かつてあったこの国をというのだ。
「兵の数は多く武具もよかったな」
「はい、実に」
「その二つはよかったです」
「馬は少なかったですが」
「それでも」
「しかし兵は弱く士気も低く」
 それでというのだ。
「戦になると我先に逃げた」
「そうした兵達ばかりでしたな」
「それで宋朝は弱かったですな」
「戦をすれば常に弱く」
「しきりに敗れていますな」
「だからじゃ」
 義久は諸将に話した。 
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