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レーヴァティン

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第百八十六話 川を使いその五

「そうした商売の考えなんだな、お前は」
「そういうことや、それでうちもな」
「売春についてはか」
「せんわ」
 それを商売にはしないというのだ。
「やっぱりな」
「そうなんだな」
「女やとな、売春に関わるってな」
「やっぱり抵抗あるか」
「俗に忘八者って言うしな」
「遊郭やるなら人のそうした心は全部捨ててか」
「やらんとあかんて言うな」
 遊郭では俗にそう言われてもいた。
「やってたんや」
「難儀な世界だったんだな」
「そや、そこには確かに遊女やない女の人もおったけどな」
 所謂女衒という者達である。
「それでもな」
「あんまり関わりたくないか」
「それはあんたもわかるやろ」
「同じ女としてって奴だな」
「そや、それでうちもな」
「娼館はやらなかったか」
「今もやってへんわ」
 美奈代はいささか強い声で答えた。
「今言うた通りにな」
「抵抗があってか」
「そういうことや」
「それで本音を言うとか」
「そういうのはなくて欲しいけれどな」 
 女性として言うのだった。
「それでもな」
「必要悪って奴だな」
「そういうことや」
「難しい話だな、ないと困るしな」
「あるとあるでな」
「暗いものを感じるな」
「どうしてもな」
 実際に美奈代は暗い顔で述べた。
「そうなるわ」
「そうだよな」
「だがないとだ」
 正は現実を話した。
「今話している通りにな」
「大変なことにもなるな」
「だから必要だ、俺は入っていないがな」
「ああ、お前も結婚してるしな」
「そもそもそうしたところに入ることはな」
 正は久志に表情を変えずに話した。
「俺の趣味じゃない」
「そうなんだな」
「俺は相手は一人でいい」
「奥さんだけでか」
「それで充分だ、二人も三人もとなると」
 例え相手が娼婦でもというのだ。
「揉めごとの元だ」
「浮気とかはか」
「親戚に女好きがいてな」
「ああ、そっちで色々あったんだな」
「一度病気をもらった」
 性病をというのだ。
「それで奥さんにとなった」
「ああ、離婚危機だな」
「何とかしなくて済んだが大変な騒ぎになった」
「よくある話だな」
「それを見たからな」
「相手は一人でいいってか」
「思う様になった、病気なぞなりたくはない」
「そうした病気はそうだよな」
「誰がなりたいか」
 正は否定する声で述べた。 
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