瞳の中の想い
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第三章
「是非な」
「それでは」
「ああ、私は父親になり」
そしてとだ、博士は微笑んで話した。
「妻もだ」
「母親にですか」
「なる、これからもな」
こう言ってだった、博士は妻のメアリーと共にミドリを育てていった、すると。
ミドリは笑顔も知って言葉も知ってだった、そうして。
喋れる様になった、それで博士に言うのだった。
「お父さん」
「何だい、ミドリ」
博士はミドリに優しい笑顔で応えた。
「どうかしたのかい?」
「私はアンドロイドよね」
自分のことを尋ねるのだった。
「そうだよね」
「そうだ、しかしな」
「しかし?」
「お前は私達の娘でだ」
それでというのだ。
「そしてだ」
「そして?」
「人間だよ」
「アンドロイドでも?」
「身体はそうだけれどな」
それでもというのだ。
「心が人間だから」
「人間なの」
「そうだよ、人間は心でなるんだ」
身体でなく、というのだ。
「お前は人間の心があるからな」
「人間なの」
「誰かに何か言われても」
アンドロイドは人間でないとだ、こう言われることは博士もあると見ていた。もっと言えば絶対に言われると考えている。
「それでもだ」
「私は人間なの」
「そのことを覚えておきなさい」
こう言うのだった。
「いいね」
「わかったわ」
ミドリも頷いた、そしてだった。
ミドリは自分を人間だと思い暮らしていった、だが。
その彼女を人間ではない、アンドロイドと言う者も多かった、それで星は博士に彼等のことを話した。
「どうしたものでしょうか」
「いや、もうだ」
「もうっていいますと」
「わかっていた」
博士は星に落ち着いた声で答えた。
「ああしたことを言う人達が出ることはな」
「そうですか」
「何故ならだ」
博士はさらに言った。
「ミドリの身体は紛れもなくだ」
「アンドロイドですね」
「身体がそうだからな」
それでというのだ。
「言う人が出るとだ」
「もうですか」
「わかっていた」
「そうでしたか、なら」
「身体では判断出来ない」
「人間かどうか」
「そのことをな」
まさにというのだ。
「今からだ」
「そうした人達にですか」
「私が話す」
「そうされますか」
「私はミドリの父親だ」
それ故にというのだ。
「娘を守ることが父親だな」
「だからですね」
「私が出てだ」
そうしてというのだ。
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