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Fate/WizarDragonknight

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残念ですがさようなら

 
前書き
これを最初に書いたのは、去年のことです。時世との一致はあくまでたまたまです。 

 
 もうすぐで十二月。
 クリスマスという稼ぎ時を目前に、ラビットハウスは日々の営業に追われていた。

「はい! Bランチお待たせしました!」

 今日もニコニコ笑顔で接客。ココアは、元気にお客さんの前にランチを並べた。

「ハルトさん! お客さんのオーダー取って!」
「ハイ只今!」

 ココアの掛け声に、唯一の男性店員であるハルトは急いで別席へオーダーをもらいにいく。ココアが一足先に厨房に戻ると、チノと可奈美がいそいそと注文の品を作っていた。

「ココアさん、これお願いします」

 チノから、コーヒーとサンドイッチのセットを受け取る。ココアはウインクして、

「了解! 4番テーブルだね!」
「私への合図はいいから早く持って行ってください」
「はーい!」
「ごめん、チノちゃん! まだグレープジュースの残りってあったっけ?」

 ココアとの入れ違いに、今度はハルトが厨房に駆け込んだ。チノの彼への返答を待つことなく、ココアは盆にのせたサンドイッチたちをテーブルへ運び込む。

「お待たせしました!」

 続いて、別のお客様よりオーダー。同時に、カップル一組が、会計のためにレジ前に立っているのを視界が捉える。

「可奈美ちゃん! 会計入れる?」
「え? ちょ、ちょっと待って!」

 オーダーを受けながら、ココアの視界の端で可奈美が大急ぎでレジ前に立った。

「あ、ココアちゃん、お疲れ」

 オーダーを届けに厨房に来た時、ハルトがぐったりとした表情で戻ってきた。

「今日はなんでこんなに……あ、只今!」

 愚痴をこぼすことなど許さぬとばかりに、お客さんがハルトを呼んだ。注文を受け、いそいそとチノではなくココアへ伝える。

「ココアちゃん! ココアブレンド二つ! これって、チノちゃんでも作れるんだっけ?」
「お姉ちゃんに任せなさい! 私が作るよ」

 ココアが袖をまくる。手馴れた手つきで、二の腕を見せつける。
 だが、そんなココアに、チノの冷たい声が降ってきた。

「今はココアさん、接客をお願いします。私がやりますから」

 チノが尖った声でココアとハルトを厨房から押し出し「え俺も?」、そそくさとドリップを始める。
 それから二十分、ココアはハルトとともにラビットハウス内を走り回ることになった。

「今日は忙しいね」

 一通りの注文の品が行き渡ったころ、ココアは厨房入口で水分補給をしているハルトに行った。

「そうだね。なんで今日、こんなに? 観光客でも多かったのかな?」
「突然の雨だもん。みんな、どこかに雨宿りしようとしたんだよ」

 ココアは窓の外を眺めながら言った。冬の寒い時期に、さらに冷たい雨。見ているだけで、体に寒気が走る。

「それにクリスマスも近いから、当日の下調べでもしているのかな?」
「まだ一か月も先だよ? 早すぎない?」
「そんなことないよ! きっと、当日はみんな馴染みのところで過ごしたいんだよ!」
「へえ……そういうものか……」

 ハルトは頷いた。ココアは顎に手を当て、

「もしかしてハルトさん、あんまりクリスマスとかに興味ない人?」
「興味ないというか、あんまり特別な日って感じはしないかな。旅に出てから日にちの感覚もあんまりなかったし。季節さえ分かってればって感じだったから」
「ふええ……」

 ココアは顔をぽかんと開けた。

「そういえば、ハルトさんがどんなところを旅してきたのか、あんまり聞いたことなかったかも」
「語ることでもないからね。まあ、この繁忙期ではないときに言うよ」
「ありがとう!」

 ココアはにっこりとほほ笑んだ。
 しばらくは新しい人も、追加の注文もなさそうだ。ココアは、カウンター奥の厨房へ顔を覗く。

「これ美味しいです!」
「本当? ありがとうございます!」

 奥では、可奈美がカウンター席の客と話している。可奈美が作ったパフェが、どうやら好評のようだった。

「新人さんよね? ここまでのもの、もしかしたらココアちゃんよりも上手かもしれないわ」
「ありがとうございます!」
「ゔ……」
「はい就業時間中にすさまじくぶっ倒れたりしないでね」

 気絶しようとしたココアの口が、ハルトに塞がれる。
 その時。

『親愛なる見滝原市並びに全世界へ』

 突如、天井付近のテレビの画面が真っ赤に書き換わった。静かだったクラシック番組は、赤い髪をもつ男性に取って代わられた。

「?」
「あれって……」

 談笑していたお客さんたちが一斉に見上げる。

「何あれ?」
「変な髪形」
「何か、ライオンみたいだな」
「あれでクソコラ作ってみようかな?」
「あの人、今話題の病院の院長じゃない?」

 それぞれが多種多様な反応を見せる中、ココアの隣でハルトが呟いた。

「フラダリさん?」

 それで、ココアは思い出した。
 フラダリ・カロス。人喰いの怪物で話題の見滝原中央病院の院長だ。何度かニュースで見かけて、インパクトのある外見だなと思った。

「たしかあの怪物って、この前病院とは別のところに出たから、病院は関係ないって話になったんですよね」
「……」

 だが、ハルトはココアの言葉に反応しなかった。口をきっと結び、テレビを凝視している。

『我が名はフラダリ・カロス。この世界を美しく作り変える者である』

 ココアには、彼が言っている言葉が全く理解できなかった。

『人喰いの生物。名はアマゾン。異世界より来たりし神の遣い。私は、秩序の執行者として、このアマゾンと手を組んだ』

 アマゾンと手を組んだ。その言葉に、客たちの間にどよめきが生まれた。

『すでにこの世界の秩序は乱れている。人々は愚かに過ぎず、一つしかないものは分け合えない。分け合えないと奪い合う。奪いあえばと足りなくなる』
「違うよ……」

 ココアは無意識に呟いた。

「この世界、そんなにひどくないよ……?」
『争わず、奪い合わず、美しく生きていくには、命の数を減らすしかない』

アマゾン(選ばれた者)だけが、明日を手に入れる!』

 選民思想。今、ココアの中にその単語が思い浮かんだ。

『私は、アマゾンの力とともに、その制裁を実行する。秩序の乱れたこの世界をリセットし、美しい世界を作り上げるのだ』

 フラダリは最後に、この言葉とともに消えた。

『アマゾン以外の皆さん。残念ですがさようなら』

「うわああああああ__________」

 その時。突如として店内から悲鳴が上がった。
 全身から蒸気を吹き出す人物。駆け寄る人を突き飛ばし、肉体から耳を塞ぎたくなるような音が聞こえる。
 そして。

「アマゾン……」

 客は、アマゾンの姿となり、すぐ近くの客へ襲い掛かった。
 だがそんなアマゾンを、ハルトが抱き留める。

「可奈美ちゃん! 千鳥取ってきて!」
「分かってる!」

 彼の声に、可奈美は脱兎のごとく上の階へ走り去る。
同時に彼は、アマゾンを蹴り飛ばした。店のガラスを割りながら、アマゾンは店の外へと飛び出る。

「ココアちゃん!」
「な、何!?」

 状況が分からないココアは、ただ、返事しかできない。

「お客さんをここから出さないで! いいね!?」
「は、はい!」

 こちらの返事を聞いてか聞かずか、ハルトはアマゾンを追いかけて店の外へ飛び出した。
 同時に、細長い赤い棒を持った可奈美もそのあとを追う。

「どうなっているの……?」
『臨時ニュースです』

 二人が出て行ったあと、テレビ番組がニュースへ切り替わる。

「只今、アマゾンへ変異してしまう原因が判明しました。見滝原中央病院周辺に設置されている、ウォーターサーバーに、溶原性細胞が混入していました」

 見滝原中央病院。
 チノがこの前まで入院していた病院の名前だった。

「飲んだ覚えのある方は、焦らず、他の病院へ診断を受けてください。繰り返します。飲んだ覚えのある方は……」

 突如として、ガシャンと、コップが割れる音がした。
 そんなミスなど想像できない、チノがその発生源だった。接客中だというのに、盆を地面へ滑り落とし、それを拾おうともせずにテレビを見上げている。

「見滝原中央病院……私、つい最近まで入院していました」

 真っ青な顔で震えるチノ。彼女はそのまま、両手で頭を抑える。

「病院の水で、怪物になる……怪物になる……」
「チノちゃん? チノちゃん!」
「ココアさん……私、この前まで中央病院にいました……もしかして……」
「大丈夫だよ! きっと……」
「私、一週間も入院していました。水だって、向こうで沢山飲みました……」

 店員が変異していく。その可能性に怯えた客たちは、一目散に逃げて行った。だが、誰一人としてその食い逃げを追うことができない。
 ココアが、チノの肩に手を置いた。

「落ち着いて、チノちゃん。まだ、そうと決まったわけじゃ……」
「止めてください!」

 チノは、ココアの手を拒絶した。チノは叩いた自身の手を見下ろし、それを掴む。

「嫌です……! 私……私……!」
「チノちゃん!」

 ココアが怯えるチノを抱きとめる。だが、チノは止まらない。

「私、人喰いの怪物になんてなりたくないです! ココアさんを……ココアさんを……!」
「大丈夫! 大丈夫だから!」
「嫌です! そんな……」

 チノはギュッとココアの腕を握っている。

「チノちゃん!」

 ココアの大声に、チノははっとする。彼女の顔をじっと見つめるココアに、チノの呼吸が落ち着いた。

「私がいる。私がいるよ」
「ココアさん……」
「チノちゃんが嫌いになっても、怪物になっても。私がずっとずっと、傍にいるよ」

 いつしか、二人きりになったラビットハウスで、チノの呼吸の音だけが響いていた。
 
 

 
後書き
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「何かしら?」学校廊下
まどか「その……いつも終わったらいなくなるから、たまにはゆっくりお話ししたいなって……」
ほむら「悪いわねまどか。忙しいの。失礼するわ」
まどか「そんな……そ、そうだ! たまにはこのコーナー、一緒に担当しよう!」
ほむら「悪いけど、私は貴女に構っていられないの。担当するなら一人でやりなさい」←前回まどかをストーカーした人
まどか「そ、そんな……あ、それじゃ、今日のアニメ、どうぞ!」



___もう一回こっち向いて 言いたいことがもっとあるから もう一回こっち向いて 本気が揺れる愛のFuture___


まどか「変態王子と笑わない猫! あ、ほむらちゃん!」
ほむら「2013年の4月から6月のアニメね」スタスタスタスタ
まどか「あ! ほむらちゃん! 待って!」
ほむら「まどかが私を追いかけている……うれしい!」(邪魔をしないでまどか。今私は急いでいるの)
まどか「本音と建て前が逆転しているよ! あ、アニメは、こんな風に本音と建て前が自由にできなくなった横寺(よこでら)陽人(ようと)君と、筒隠(つつかくし)月子(つきこ)ちゃんと、あと小豆(あずき)(あずさ)ちゃんのお話だよ! あ、待ってほむらちゃん!」
ほむら「だから私は……待ってまどか」
まどか「うわっ! いきなり止まってどうした……の……?」
男子生徒「うおおおおおおおお________!」変貌
まどか「あれって……」
ほむら「アマゾン……! キャスター!」
キャスター「はいマスター」
ほむら「殲滅しなさい!」 
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