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歪んだ世界の中で

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第四話 努力をしていきその六

「ジュースはお店で買った野菜ジュースだけれど」
「サンドイッチにコールドチキンはなんだ」
「千春が作ったものよ」
「僕の為に?」
 この質問は恐る恐るだった。まさかと思ってだ。
「作ってきてくれたのかな」
「そうだよ」
「嘘みたいだよ」
「だって。希望と一緒にいるから」
 それでだとだ。やはり笑顔で答える千春だった。
「だからそれはね」
「それは?」
「当たり前だから」
 本当に当然といった口調でだ。言う彼女だった。
「希望と一緒にいるから」
「何か嘘みたいだよ」
 狐につままれた、いや夢の中にいる様な顔だった。
 その顔でだ。彼は言うのだった。
「僕の為にお弁当を作ってくれるなんて」
「当たり前じゃないの?」
「そんな筈ないよ。そんなの誰もしてくれないよ」
 特にだ。高校に入ってから今を思い出しながら答える彼だった。
「お父さんにお母さんもね」
「希望の?」
「うん。お金渡して適当にだよ」
「買って食べろって?」
「そう。それだけだよ」
 そこには義務だけを感じてだ。愛情は感じていなかった。それでなのだった。
「それなのに千春ちゃんは」
「千春希望のこと大好きだから」
「それでなんだ」
「だから作ったの」
 屈託のない笑みでの言葉はここでも同じだった。
「じゃあ食べよう」
「うん、それじゃあ」
「美味しいから。とても」
 こうしてだった。二人でそのサンドイッチをまず手に取った。そこにはレタスやハム、それにだ。
 卵やトマトもあった。どれも丁寧に小さく切られサンドイッチに合う様にしている。
 それを手にして口の中に入れて味わってからだ。希望は言った。
「うん、いいよ」
「美味しい?」
「うん、美味しいよ」
 優しい味だった。実にだ。
 そしてその味を味わってだ。希望は自分の為に作ってくれた千春に言ったのである。
「とてもね」
「そう。有り難う」
「もっと食べていいかな」
「勿論。その為に作ったから」
「それじゃあいいんだね」
「どんどん食べて」 
 実際にそうして欲しいと言う千春だった。
「千春のサンドイッチもっと食べて」
「それとサンドイッチの他にも?」
「コールドチキンにプチトマトもあるから」
 そしてだ。さらにだった。
「それとデザートの無花果も」
「そうだね。無花果もあるね」
「これも美味しいから」
「無花果ね。実はね」
「実は?」
「僕好きなんだよね」
 にこやかに笑ってだ。千春に答えたのである。
「無花果、いや果物が」
「そうなの。好きなの」
「甘いものは全部ね」 
 こう千春に話すのだった。 
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