怒鳴っても来てくれて
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第一章
怒鳴っても来てくれて
津島佳奈はこの時会社で後輩の太宰茉祐に項垂れて言った。
「今朝駄目なことしたわ」
「どうしたんですか?」
「うちのゴンにね」
「ああ、あの子ですか」
茉祐はすぐに先輩に応えた、雑種の茶色の毛で中型の耳が立った犬だ。佳奈の部屋にお邪魔した時に会ったことがあるので知っているのだ。
「物凄く愛想のいい子ですね」
「けれどそのゴンにね」
佳奈は項垂れて言った、黒髪をおかっぱで奇麗に切り揃えていて一六六程のすらりとしたスタイルで眼鏡をかけた切れ長の目の女性だ。膝までの赤いスーツが似合っている。
「五月蠅いって言ってね」
「出ちゃったんですか」
「昨日疲れてたしね」
「大変でしたね、昨日は」
茉祐もその仕事をしていたので頷けた、黒のロングヘアで目ははっきりとしたやや切れ長の目で唇は小さく紅色だ。やや面長で肌は白く一五九程の背で胸はないがスタイルはいい。膝までの青いスーツである。
「もう大忙しで」
「そうでしょ、だから今朝も疲れが残っていて」
それでというのだ。
「機嫌悪くて」
「それで、ですか」
「怒ってね」
そのうえでというのだ。
「会社に来たから」
「怒ったこと後悔していますか」
「ええ、今うちの人は出張してるし」
「余計にですね」
「あの子フォローする子もいなくて」
それでというのだ。
「反省してるわ」
「そうなんですね」
「どうしようかしらね、帰ったら会わせる顔がないわ」
項垂れて言うのだった。
「本当にね」
「だったら」
それならとだ、茉祐は佳奈のその話を聞いて言った。
「お詫びにおもちゃとか美味しいご飯を買って」
「ペットショップとかで」
「そして」
そのうえでというのだ。
「帰ればいいですよ」
「そこは人間と同じね」
「はい、どうでしょうか」
「そうね」
少し考えてだ、佳奈は茉祐に答えた。
「それじゃあね」
「はい、多分ワンちゃんも不機嫌でしょうが」
怒られてというのだ。
「そこはです」
「そうすればいいわね」
「はい、それでいきましょう。私もご一緒します」
茉祐は自分もと言った。
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