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歪んだ世界の中で

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第三話 小さな決意と大きな一歩その十二

 そうしてだ。希望はまた言うのだった。
「けれど。走ってそれがストレス解消になるのならね」
「それで勉強も進めばですね」
「それに越したことってないよね」
 少しだけ、ほんの少しだけだが晴れやかになった顔で述べた希望だった。
「それに身体を動かせば」
「痩せますしね」
「うん、少しでも痩せて」
 そしてなのだった。
「勉強が出来る様になればね」
「それに越したことはないですよね」
「うん。だからこれから両方やってみるよ」
「走って。それでストレスを解消させてお勉強もですね」
「どっちも頑張ってみるよ」
 親友、無二と言っていい真人にはだ。希望はこう話せた。
「本当にどっちもね」
「疲れには気をつけて下さいね」
「あっ、筋肉痛とかだよね」
「筋を痛めたり。そういうことがあれば」
 その場合はだ。どうなるかと話す真人だった。
「また同じですから」
「あっ、それは大丈夫だから」
「大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ」
 そう言ってだ。真人に千春が自分にくれたその薬をだ。真人の前に差し出して言うのだった。
「これがあるからね」
「お薬ですか」
「これを塗ればどんな痛みや怪我もすぐに治るんだ。実際に昨日走って早速筋肉痛を感じたけれど」
「塗ればですか」
「うん、すぐに消えたから」
 それでだというのだ。
「大丈夫だよ」
「そうですか。それではですね」
「それでは?」
「安心して。頑張って下さい」
 微笑みだ。そうしてだった。
 真人は希望に顔を向けて。そして言ったのだった。
 そのうえでだ。顔を今の彼から見て正面、天井に顔を向けてだった。
 そうしてだ。彼は希望に言ったのである。
「僕は今ほっとしています」
「千春ちゃんが僕の傍にいてくれるから」
「そうです。ですから」
「安心できるんだ」
「こんないいことはありません」
 微笑みだ。そうしての言葉だった。
「遠井君は。辛かったですよね」
「高校に入ってからね」
「そんな中で。僕がこんなことになってしまって」
 申し訳ない顔になってだ。そのうえで言ったのである。
「心配でした」
「けれど今は」
「その千春さんがいてくれるから」
「安心してくれてるんだ」
「そうなっています。遠井君はその人と一緒に頑張って下さい」
 そしてだ。真人もだった。今度は自分自身に言ったのである。
「ですから僕も」
「うん、その怪我だけれど」
「怪我、ですか」
「今気付いたんだ。この薬だけれど」
 今彼が持っているだ。千春から貰った薬をだ。
 真人に見せたままでだ。笑顔で言ったのである。
「骨折にも効くらしいんだ」
「そういえばさっきどんな怪我にも効くと」
「千春ちゃんが言ってたから。だから」
「今このお薬と塗れば」
「ひょっとしたら。骨折が治るかも知れないね」
 そのことに希望、彼の名前をそのまま出してだ。彼は真人に言うのだった。
「だからどうかな」
「お願いできますか」
 思わず身を乗り出しそうになってだ。真人は希望に言った。
「今はギプスですけれど」
「ううんと。ギプスだったらどうしようかな」
「そのお薬は水に染みさせることができますか?」
 真人はギプスの上からでは塗れないとだ。困ってしまった希望にだ。 
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