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歪んだ世界の中で

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第二話 二人のはじまりその十一

「いいところなんて全然ないのに」
「ですから。誰も上城君の内面を見ていないんです」
「友井君は違ってるんだ」
「上城君の内面を見ているつもりです」
 外面や成績、そうしたものではなくというのだ。
「子供の頃からそうですから」
「子供の頃から」
「幼稚園の頃からの付き合いじゃないですか」
 まただ。暖かい笑みで希望に言ったのである。
「それでどうして外面なんて」
「じゃああの娘も」
「きっとそうですよ。スポーツや勉強なんかよりも」
「僕の内面を見てくれていて」
「その方はそういうことを仰っていませんでしたか?」
「そういえば」
 言われるとだ。希望もふと思い出したのだった。
「言われたよ」
「では余計にです」
「安心していいんだね」
「その方は遠井君にとって大きな力になってくれます」
「大きな力に」
「はい、なってくれます」
 こう言うのだった。希望に。
「ですから。その方ともう少し一緒にいてですね」
「一緒に?」
「その方が信頼できる方なら」
 それの見極めはもう少し時間をかけるべきだというのだ。慎重にだ。
 そのうえでどうするか。彼は希望に述べた。
「お二人で」
「いつも一緒にいていいんだね」
「そうされて下さい」
 こう言ってだ。真人は希望の背を押したのだった。
 そしてそれからだった。希望は真人の病室を後にした。
 そうして少し歩いているとだ。その前にだった。
 また千春が出て来てだ。彼に言ってきた。
「こんにちは」
「あっ、千春ちゃん」
「ここにいたんだ」
 笑顔でだ。町中で彼に言ってきたのである。
「少し探したよ」
「ううん、偶然会ったんだ」
「大体ここにいるのはわかってたよ」
「えっ、わかってたの」
「希望の匂いがしたから」
「匂いって」
「希望のことは何でもわかるから」
 それでだとだ。千春は彼に話す。
 そのうえでだ。彼にこうも言って来た。
「それでね」
「それで?」
「今日は何処に行くの?」
 千春に対して何か妙なこと、彼女の言葉から感じた希望にだ。こう言ってきたのだった。
「昨日は商店街だったけれど」
「そう言われると」
「千春は何処でもいいよ」
 にこりと笑って顔を前に出して。千春は希望に言ってきた。
 その両手は後ろで組んでいる。その市井で言ってきたのだ。
「希望と一緒なら」
「何処でもいいんだ」
「うん、何処か面白い場所知ってる?」
「中華街かな」
 神戸にあるからだ。それで出したのだった。
「それじゃあ」
「ああ、あそこなんだ」
「そう、中華街ね」
 またその場所の名前を出した希望だった。
「そこに行こうか」
「うん、じゃあね」
 千春も笑顔で応えてだ。そうしてだった。
 二人は中華街に行くことになった。その時にだ。
 希望は千春にだ。こんなことを言った。
「じゃあ八条町から距離があるから」
「電車に乗らないと駄目よね」
「うん、八条鉄道に乗ろう」
 関西全域はおろか日本中を走っている鉄道だ。八条グループの重要な企業の一つだ。
 その八条鉄道を使ってだ。中華街に行こうというのだ。
「ここからだと駅も近いし」
「うん、じゃあ電車に乗ろう」
 このことについても笑顔で応える千春だった。そうしてだ。 
 二人で電車に乗り中華街に向かうのだった。この日も二人で過ごすことになった。


第二話   完


                  2012・1・3 
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