戦国異伝供書
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第百十七話 政宗の決意その九
「織田家と戦う」
「そうしますか」
「まずそれが出来ねば」
二万の兵が集まらないと、というのだ。
「織田家とは戦えぬ」
「それが最低限のことですか」
「二万なぞ織田家にとっては少ないが」
それでもというのだ。
「我等にとってはじゃ」
「あまりにも大きな数ですな」
「それでも集める、そしてな」
「戦ってですな」
「そのうえで退ける、よいな」
「それでは」
「そしてじゃ」
政宗はさらに言った。
「戦うぞ」
「わかりました」
「それとな」
「それと?」
「戦の場所であるが」
政宗はそこのことも話した。
「摺上原になる」
「あそこですか」
小次郎が言ってきた。
「あの地においてですか」
「戦うであろう」
「そうですか」
「そしてじゃ」
「あの地面で織田家を退ける」
「そうなる、若しそこで織田家を退けるとな」
その場合はというと。
「当家の勝ちじゃ」
「それになりますか」
「うむ、しかしな」
「負けると」
「もう織田家に敵わぬ」
「その二万の兵が、ですか」
織田家のというのだ。
「その兵が奥羽に足掛かりを築いてな」
「そこからですな」
「奥羽を脅かしそれを止められぬわ」
「つまり負ければですな」
「我等は降るしかなくなる」
織田家にというのだ。
「そうなる、だからな」
「それで、ですか」
「勝つぞ、二万の兵に加えてな」
さらにというのだ。
「鉄砲もじゃ」
「使えるものをですな」
「全て持って行ってじゃ」
今度は茂庭に話した。
「そしてじゃ」
「使うのですな」
「ここに伊達家のこれからがかかっておる」
勝つか負けるかでというのだ。
「だから使えるものはな」
「全て使ってですな」
「戦うのじゃ、ではよいな」
「戦の用意にですな」
「入る、無論兵糧もな」
これもというのだ。
「二万の兵の分をじゃ」
「すぐに集めます」
留守が応えた。
「これより」
「よいな」
「はい、兵糧は充分にです」
「あるな」
「これまでの殿の政で」
それがよかった為にというのだ。
「あります」
「ならな」
「兵糧もですな」
「それだけ集めてな」
二万の軍勢の分をというのだ。
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