歪んだ世界の中で
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第二話 二人のはじまりその五
「そうね。千春もね」
「千春ちゃんも?」
「植物の本だけじゃないよ」
そうだというのだ。彼女もだとだ。
「木が出る本以外にね」
「うん、それ以外には?」
「人間が出て。希望みたいな人がね」
「僕みたいな?」
「そう、そういう人が出て頑張る本が好き」
こうだ。彼に対してにこりと笑って話すのだった。
「いつもそういう本読んでるの」
「そうなんだ」
「じゃあそういう本を買いにね」
「今から本屋に行こうか」
「うん、それじゃあ」
こうしてだった。二人はだ。その本屋に行くのだった。
そしてそこに行くとだ。希望はすぐにだ。
ライトノベルのコーナーに向かった。千春はその後ろについていく。
彼はある作家のコーナーでだ。足を止めてだ。
その本を見つけてだ。顔を綻ばせてこう言った。
「よかった、売ってるよ」
「その本買うの?」
「うん、買うよ」
その本、小さな単行本を軽く手に取っての言葉だった。
「この本今日発売だったんだ」
「それで今そこにあるのね」
「そうだよ。じゃあこれ買うから」
「希望その本が好きなの」
「大好きだよ」
にこりと笑ってだ。希望は千春に答えた。
そのうえでだ。彼女に顔を向けてこうも言うのだった。
「だから買うんだ」
「そうなのね」
「じゃあ僕はこの本とね」
「その本と?」
「漫画も買うけれど」
それも買うとだ。千春に話したのである。
「千春ちゃんは何を買うのかな」
「千春?」
「そう、植物の本とか買うのかな、やっぱり」
「うん、これ」
言うとだ。すぐにだった。
千春はその両手にあるものを持ってだ。希望に見せてきた。それはだ。
図鑑だった。植物図鑑だ。カラーの表紙に緑の草がある。その本を希望に見せてだ。
そのうえでだ。彼ににこりと笑って言うのだった。
「この本にするの」
「その本買うんだ」
「千春大好きだから」
そのにこりとした顔での言葉だった。
「だからなの」
「それじゃあそれにするんだね」
「うん」
「他には買う本あるの?」
希望はさらにだ。千春に対してさらに問うた。
「まだ何かあるのかな」
「ううん、もういいの」
にこりと笑って首を横に振ってだ。千春は答えた。
「今はこれでいいの」
「その本だけなんだね」
「そう。この本だけでいいの」
「わかったよ。じゃあ今からね」
「お金はあるから」
まただ。千春はこのことを話したのだった。
「だから心配しないで」
「うん、僕もお金はあるけれど」
「お金のことは気にしないでいいから」
自分が出すと言ってだ。千春もここは引かない感じだった。
そしてだ。彼女は希望にだ。さらに言うのだった。
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