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戦国異伝供書

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第百十七話 政宗の決意その六

「それでもじゃ」
「やはりどうしても遅くなる」
「それで、ですか」
「それはないですか」
「こちらに大軍で来ることは」
「しかも織田家は本願寺を降してから西の毛利家を降し東に大返しを行ってじゃ」
 そしてというのだ。
「さらに武田家を上杉家も降したな」
「連戦で」
「そうしましたな」
「まさに驚くべき速さで」
「天下を争っていたあの両家を降しました」
「そこから関東に入ってじゃ」
 さらにというのだ。
「今戦っておる、では疲れはじゃ」
「溜まっていますな」
「そのことは間違いないですな」
「僅かの間で天下を西に東に動き」
「大きな戦を繰り返したので」
「もう軍勢は疲れておる、それで当家に来るならな」
 それならというのだ。
「大軍を動かしてもな」
「疲れ切ってですか」
「まともに戦えぬ」
「左様ですか」
「だから限られた精兵を率いてな」
 そうしてというのだ。
「来るであろう」
「これまでの大軍ではなく」
「少ない兵で、ですか」
「それで来ますか」
「二万か、しかしな」
 数はそれだけでもというのだ。
「将帥は織田家のお歴々でな」
「あの戦上手のですな」
「長きに渡って織田殿を支えてきた」
「あの御仁達ですな」
「そしてじゃ」
 それにというのだ。
「織田殿ご自身もじゃ」
「来られますか」
「そしてですか」
「我等と戦う」
「そうされますか」
「うむ」
 実際にというのだ。
「あの御仁もな」
「兵は少ないですが」
「それでも強いですか」
「率いている将帥がよく」
「精兵揃いで」
「織田殿ご自身もなので」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ、
「兵は少ないがな」
「強い」
「厳しい戦になる」
「殿はそう言われますか」
「しかし勝つ、そこで退けてな」
 信長が率いる軍勢をというのだ。
「まずは守りきり」
「そしてですか」
「そのうえで、ですか」
「攻めていく」
「そうされますか」
「確かに織田家は天下の大半を手に入れた」
 このことは事実だというのだ。
「九州と伊予、そして奥羽以外はな」
「それでもですか」
「まだ付け入る隙はある」
「殿はそう見られますか」
「一戦を退けてな」
 そしてというのだ。 
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