戦国異伝供書
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第百十七話 政宗の決意その四
「武家の都であるな」
「古来よりそう言われていますね」
「左様、東国の都でもある」
「だからですか」
「まずは鎌倉じゃ、そしてな」
「そこからですね」
「都じゃ」
そう兵を進めたいというのだ。
「わしはな、そして東国では関東管領にして頂き」
「都ではですか」
「管領にして頂いてな」
「関東管領と管領を兼ねて」
「天下人となる、鎌倉の公方様も都の公方様も奉じ」
そしてというのだ。
「天下を治めるぞ」
「そうされますか」
「これよりな、そして今はな」
「さらにですね」
「飲むぞ、今宵の酒も美味い」
こうも言うのだった、愛姫の顔を見て。
「実にな」
「だからですね」
「心から飲む」
「妾の顔を見て」
「妾を見ているからですか」
見れば政宗はこの時もあまり肴に箸を進めていない、愛姫の顔を見てそうしてそれを酒の肴にしているのだ。
「だから」
「それでじゃ」
「やはりそうですか」
「楽しく飲める、そして明日からはな」
「また政ですね」
「それに励む、だが朝にはまずな」
何といってもというのだ。
「風呂に入ってじゃ」
「すっきりされますか」
「それが第一じゃ」
何といってもというのだ。
「酒が残っておってもな」
「そこですっきりとされて」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「あらためてな」
「朝食を召し上がられて」
「武芸に励んでな」
「その後で、ですね」
「政じゃ、忙しくなるぞ」
「これよりは」
「うむ、領地はしかと治める」
こう言ってだった、政宗は。
今は愛姫の顔を見つつ酒を楽しんだ、そして次の日の朝にはまずは風呂に入って二日酔いを治してだった。
朝食の後で武芸もしてだった。
主な家臣達を集め政に入ろうとしたが。
はじめようとした時に飛び込んで来たその報に驚いて言った。
「何っ、武田家も上杉家もか」
「はい、一戦で降してです」
報をする者が政宗に話した。
「そしてです」
「さらにか」
「はい、東国に入り」
「北条家もか」
「何と小田原の城の傍に付け城を瞬く間に築き」
そうしてというのだ。
「城を囲み北条家の諸城を次々と攻め」
「降しておるか」
「そうなっています、どうやら」
「北条家はか」
「降るのもです」
それもというのだ。
「どうやら」
「左様か」
「既に北条家以外の関東の諸港は織田家に降り」
「関東も織田家のものになろうとしておるか」
「まさに」
「織田家の動きがそこまで速いとはな」
政宗は唸って述べた。
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