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おっちょこちょいのかよちゃん

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100 近づいてきた男

 
前書き
《前回》
 赤軍の長・重信房子は東京に向かい、そこに拘置されている赤軍の一人・和光晴生と東アジア反日武装戦線の面々を救い出す。そして護符の持ち主を探し出す為に異世界の敵が暴れ始める中、清水市内ではすみ子や三河口などが恐ろしい胸騒ぎを覚える。そして合唱コンクールの練習を終えて下校するかよ子の元に一人の男が近づいて来た!! 

 
 奏子は異世界の羽衣を使用して空中を廻る。そして濃藤を発見した。
「あ、濃藤君!」
「徳林さん!?」
「三河口君が敵の気配を感じたの!一緒に来てくれる!?」
「ミカワが?分かった、行くよ!」
 奏子は濃藤の肩にも羽衣をかけて飛び立った。
「これ、徳林さんが文化祭の終わりにエレーヌって人から貰った羽衣かい?」
「そうよ、こんな風に空を飛ぶことができるの。あと、北勢田君も見つけなきゃ」
「ああ」
 二人は飛び立った。途中、北勢田も見つけた。
「北勢田君!」
「徳林さん!?濃藤も!どうしたんだ!?」
「三河口君が敵の気配を感じ取ったの!来てくれるかしら?」
「よし、分かった!俺も感じていたよ!」
 三人は奏子の羽衣で空中に飛び立った。

 三河口はこの激しい心臓の鼓動を手掛かりに敵を捜していた。その時、また違った感触を覚えた。
(ん、この感触・・・)
 三河口は周りを見回す。その時、一人の女子の姿が目に入った。
(あの子は、確か、かよちゃんの・・・!!)
「おうい、君!」
「え?」
「君、確かかよちゃんの友達のまる子ちゃんだったっけ?異世界の炎の石を持っている」
「う、うん、そうだけど・・・」
 まる子はこの男子の事は何度も会っているので知らない訳ではなかった。
「俺はかよちゃんの隣の家に住んでる者だ。異世界の敵と思われる奴が近くに来ている!もしかしたらかよちゃんの杖が奪われるかもしれないんだ!急でなんだが協力してくれるかい!?」
「ええ、かよちゃんが!?」
 まる子は心の中で面倒くさいと思った。
「君、友達がどうなっても知らん顔するつもりなのか?」
「う・・・」
(たまちゃんならすぐにでも行くけど・・・)
「君、石松から選ばれて炎の石の所有者になったんだろ。面倒くさいなんて思うならその石は君にとって何だ?ただのお宝か!?」
「う・・・、分かった、行くよお~」
「よし、かよちゃんを援護に行くぞ!」
 その時、誰かがまる子を呼んだ。
「あら、まる子!?」
「お姉ちゃん!?」
「その人、誰?」
「君、もしやまる子ちゃんのお姉さんかい?」
 三河口は一発で見抜いた。
「そ、そうだけど・・・」
「俺はまる子ちゃんの友達・山田かよ子ちゃんの隣の家に住んでいる三河口健という者だ。俺が通ってる高校の文化祭に君の妹が来てくれた事は感謝しているし、運動会も見させてもらったよ」
「う、うん・・・」
「君ももしかして、石松から異世界の道具を貰ってないか?」
 まる子の姉は見抜かれた。この男、頭が切れると思い、少し恐ろしくなった。
「も、持ってるわ。これよ」
 まる子の姉は石松から貰った七つの宝石を取り出した。
「今、俺の知り合いである山田かよ子ちゃんが危ないんだ!君もその宝石で協力してくれるか!?」
「わ、分かったわ」
「よし、俺について来てくれ!」
 三人は向かった。

 かよ子は下校中、飛鳥時代の役人のようないでたちの人間に話しかけられた。
「君、異世界の杖の所持者だね?」
「は、はい」
 男は優しく話しかけた。
「今、この国は大変な事になっている。今、異世界の敵が護符を狙って今、暴れ出しているんだ」
(やっぱり、そうなんだ・・・!!)
「私は異世界から君を助けに来てね、イルカって言うんだ」
「イルカ・・・。可愛い名前ですね」
「はは、可愛いか・・・」
「はい、海に住んでるあのイルカみたいで。」
「そうか、ゆっくり話そうか」
 イルカという男を公園に連れて行った。
「異世界の人間があちこちの都を暴れまわらせているって話だそうだか」
「うん、護符を持ってるお姉さんが大丈夫か心配なんだ・・・」
「へえ、護符を持ってるお姉さんか・・・。その人は今どこにいるんだい?」
「名古屋だよ」
「そうか、見つからないで済むといいね。ところで、君のその杖を見せてくれるかな?」
「うん」
 かよ子は躊躇いもなく杖を取り出した。
「これを色んなものに杖を向けるとね、向けたものと同じ能力(ちから)を得る事ができるんだよ」
「へえ、凄い杖だね。護符や剣、杯と同じくらい強力なものだとか・・・」
「うん、フローレンスさんとイマヌエルさんくらいしか知らなかったっていうものだったんだって。でも、これを狙いに戦争が正義だっていう異世界の人や赤軍が来て大変なんだ」
「そうか・・・。この杖があれば怖いものなしかな・・・?」
 イルカはその時、かよ子から杖を強引にひったくった。
「あ、何するの!?」
「杖は貰った!!フハハハハハ!!」
 イルカはその場から駆け足で去る。
「ま、待ってー!!」
 かよ子はやってしまった。とんでもないおっちょこちょいを。
「これで杖は手に入れた!護符の場所も分かった!!」
「待てーー!!」
 かよ子は追いかける。その時、別の男性二名が立ちはだかった。同じく朝廷の役人のような格好をしている。
「杖がなければお前も無力だ」
「だ、誰!?そこをどいて!!」
「我は蝦夷(えみし)
「我は馬子(うまこ)。杖を失くしたからにはサッサと消えて貰おうか」
 かよ子は一人で、杖無しでどうすればいいのか分からなかった。
「我々蘇我(そが)氏は仏教を広めた事で知られる。我のこの念仏で静粛してくれる!南無阿弥陀仏・・・」
 馬子が念仏を唱える。
「い、嫌だ!」
 だが、防御に特化した武装の能力(ちから)を持つかよ子にはその念仏攻撃は通用しなかった。
「なぬ?」
「父上、我々の攻撃が通用せぬとは、何かの間違いか何かでは!?」
「いや、異世界の道具を持つ者には何か異なる能力(ちから)があると聞く。つまり、この者は攻撃を防いでしまう能力(ちから)があるのだ!」
 相手がごちゃごちゃ喋っている間にかよ子はその場を突っ走ってイルカを追いかけようとした。
「もう、相手にできない!」
 かよ子は猛ダッシュする。
「蝦夷!この娘、入鹿(いるか)を追いかけようとするぞ!取り押さえよ!」
「はっ!」
 蝦夷と馬子が取り押さえようとする。だが、かよ子の武装の能力(ちから)が発動した。馬子と蝦夷がかよ子に触ろうとする直前に弾き飛ばされた。
「うおおおーー!!」
 かよ子は蝦夷と馬子を無視して杖を奪った入鹿を追い駆け始めた。
「かよちゃん・・・!!」
「え・・・!?」
 かよ子は途中、すみ子、山口、川村、ヤス太郎と遭遇した。
「すみ子ちゃん達・・・!!」
「何があったんだ!?」
 山口が聞く。
「わ、私の杖が盗られちゃった!!」
「何だって!?」
 その時、蝦夷と馬子が起き上がった。
「待て、小娘!!」
「こいつらは俺達が食い止める!お前は杖を盗った奴を追いかけろ!」
「うん・・・!!」
 かよ子はフローレンスから貰った異世界の羽根を取り出し、飛行した。

 三河口はさくら姉妹と共にかよ子や敵の行方を探す。
「どこにいるのお~?」
「俺の胸騒ぎ次第では近くに違いない」
 その時、まる子の姉の黄色い宝石が光り出した。
「あら・・・?」
「それは君の宝石の能力(ちから)か」
「ええ、七つの宝石があってそれぞれ違う能力(ちから)を持つって言われているの」
「ええ、凄い!まる子も欲しい~」
「ダメよ、私の物よ」
「ええ、まる子のと交換してよ!」
「嫌よ!」
「やめろ!!」
 三河口は怒鳴って姉妹喧嘩を鎮めた。
「この宝石は君のお姉ちゃんのだろ。欲しがってもくれないし、勝手に盗ったら君の『炎の石』も没収されるぞ。奪って悪用したら、自分に天罰が下る事を覚えておけ」
「ぶー・・・」
 まる子は不貞腐れた。
「で、この宝石は何を見せてくれるんだ?」
「待って!」
 黄色い宝石・トパーズは姉に未来の行動を頭に移させた。飛鳥時代の役人のような人間が杖を持って喜んでいる。それを何らかの組織に献上する姿が見えた。
「今、予知能力なのを感じたわ。なんか昔の人間みたいな人が棒のような物を持って誰かにあげようとしていた」
「棒・・・。つまり、かよちゃんの杖だ!奴等はかよちゃんの杖を奪いに来たのか!」
「ええ!?」
「俺の胸騒ぎでは奴は近くにいる・・・」
 三河口は目を閉じた。そして・・・。
「あっちの方角だ!奴は異世界の奴だから空も容易く飛んでしまうぞ」
「空を飛ぶ・・・。私に任せて!」
 まる子の姉はトパーズとサファイアを取り出した。トパーズが光りだし、三人は空を飛んだ。
「す、凄い!」
「この黄色い宝石はトパーズって言ってさっきみたいに未来予知して、私が想いついた空想や幻を現実にしてくれるの。次はこの青い宝石を使うわよ!」
 そしてサファイアの能力(ちから)が発動された。
「このサファイアは私達にチャンスをくれるの!」
 そのサファイアに導かれたように三人は高速移動する。そして杖を持った「敵」にあっという間に接近した。
「待て、お前!」
 三河口はその敵を呼ぶ。
「何だ、お前は!?」
「その杖を返してもらおうか!」
「お断りだね!」
「てめえ・・・!!」
 三河口は威圧の能力(ちから)が発動された。
(こ、こいつ、能力(ちから)を・・・!!) 
 

 
後書き
次回は・・・
「蘇我氏の一族」
 入鹿と交戦する三河口とさくら姉妹。蝦夷、馬子と交戦するすみ子達、組織「義元」。激しい戦いを繰り広げた後、かよ子の失態に対して三河口は・・・。 
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