戦国異伝供書
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第百十六話 摺上原の合戦その一
第百十六話 摺上原の合戦
政宗は米沢を出陣した、そこに伊達家の主だった将帥達が揃っていた。水色の軍勢は彼の指揮の下で動いていた。
ここで留守政景が政宗にこう言ってきた。
「芦名家との戦では六千の兵を用いますな」
「もっと持って来たかったがな」
政宗は本音を述べた。
「しかしな」
「今の当家はですな」
「幾ら佐竹家が動けぬといってもだ」
宿敵と言っていいこの家がというのだ。
「しかしな」
「やはり備えは必要ですな」
「そして叔父上にもな」
最上家にもというのだ。
「油断出来ぬからな」
「そちらにも兵を置き」
「北にもな」
そちらもというのだ。
「兵を置いてな」
「上杉家にも」
「うむ、それでな」
「この度の戦は六千ですな」
「それで七千の芦名家と戦う」
敵の数も話した。
「その彼等とな」
「そうなりますな」
「兵ではやや不利、しかしな」
「それでもですな」
「戦うからには勝つ」
まさにというのだ。
「よいな、だからじゃ」
「多くの鉄砲を持って来て」
「鉄砲騎馬隊も持って来てな」
切り札と言える彼等をというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「勝つ、しかもお主達もじゃ」
その留守にも話した、引き締まった端正な顔の彼に。
「皆連れて来たのじゃ」
「そうですか」
「当家の兵は奥羽一の強者達となった」
政宗が鍛えかつ多くの戦に勝って来てだ、今やそう言っていいまでの者達になっているのは奥羽の誰もが言うことだ。
「そしてそこにじゃ」
「我等もですか」
「優れた将帥達がおるとな」
そうなればというのだ。
「鬼に金棒、狼が狼を率いれば」
「無敵ですな」
「千の兵の差もじゃ」
それは決して小さなものではないがというのだ。
「必ずじゃ」
「勝てますな」
「左様、ではまずはな」
政宗はさらに話した。
「猪苗代の城にじゃ」
「入るのですな」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「あの城を拠点としてな」
「この度は戦いますな」
「左様」
まさにというのだ。
「そうするぞ」
「そこから一気にですな」
「攻める、そしてじゃ」
この二人もというのだ。
「芦名家と雌雄を決する、それで我等は一刻も早くな」
「猪苗代の城に入りますな」
「そうする、進むぞ。だが」
政宗はここで今自分達が進む道を見た、そうして顔を顰めさせて今度はこんなことを言ったのだった。
「奥羽の道は狭いというが」
「どうもです」
実際にとだ、片倉が言ってきた。
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