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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十一話 ゲーニッツ、暴れ回るのことその五

「さあ、覚悟するのだ」
「おい、冗談だろ」
「俺達は今味方だぞ」
「勿論本気なのだ」
 しかしまだ言う張飛だった。その手には蛇矛が握られている。
「本気で冗談を言っているのだ。御前達は悪い奴でもそこから変わろうとしているのだ」
「おっ、それがわかるのか」
「ちゃんとわかるんだな」
「そうなのだ。鈴々もそういう奴はやっつけないのだ」
「人を見る目はあるんだな」
「あんた、意外と鋭いようだな」
「確かに鈴々は馬鹿なのだ」
 自分でわかっていると言えた。
「けれど自分の目には自信があるのだ」
「それでわかるっていうのか」
「俺達の目は」
「そう、目がいいのだ」
 その目の話をさらに続ける張飛だった。
「それこそ千里先の針まで見えるのだ」
「いや、それは無理だろ」
「人間の目ではないぞ」
 ホッパーとリッパーは張飛の今の言葉にすぐに突っ込みを入れた。
「まあとにかくだ」
「そういうのはわかるんだな」
「あと御前達はそこの袴に忠誠を誓っているのだ」
 今度はギースを見て言う張飛だった。
「それも絶対的なものなのだ」
「ああ、俺達の主はギース様しかいない」
「他の誰でもないさ」
 そのことにも答える二人だった。
「やっぱりな。ギース様がおられないとな」
「俺達は誰にも仕えないからな」
「言うものだな。私は誰の面倒も見ないのだがな」
 ギースは含み笑いで言う。
「それでも言うのか」
「言わせて頂きます」
「そして行動でも」 
 二人は微笑んでそのギースに答える。
「これからもお傍にいさせてもらいます」
「そして共に」
「私は幸せ者と言うべきか」
 ギースは二人のことばを受けて今度は目を閉じて微笑む。そのうえでの言葉だった。
「周りに何かといるな」
「俺もいるぜ」
 テリーだった。彼も来たのである。
「やっぱりこっちに来てたんだな」
「貴様もいたのか」
「ああ、来てたんだよ」
 こう返すテリーだった。
「暫く見ないうちに結構丸くなったようだな」
「二度程度死んだせいか」
「それもあるかもな。けれどな」
「それに加えてこの世界に来てか」
「ああ、随分変わったみたいだな」
 今のギースを見てだ。こう言うのである。
 そしてだ。テリーはさらにだ。ギースにこうも言った。
「しかしな」
「今度は何だ」
「俺はあの時手前を倒した」
 かつてのだ。ギースタワーでの戦いのことだ。
「俺は手を差し出したがな」
「あの時のことか」
「何で手を振り払ったんだ?」
 問うのはこのことだった。
「それで落ちたんだ?」
「知れたこと。私は誰の助けも必要としない」
 それでだというのだ。
「だからだ」
「それで死んでもよかったっていうんだな」
「それで死んだとしてもそれまでのことだ」
 非常に素っ気なくだ。言うギースだった。
「だからだ」
「それでか」
「そうだ。ましてや貴様はだ」
「仇だっていうんだな」
「その貴様の助けなぞ借りはしない」
 ギースは不敵な笑みに戻ってだ。目を閉じテリーにやや背を向けて話すのだった。
 
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