胸が邪魔

　　　　　　　　　　　　　　　　胸が邪魔
　生天目美名は通っている高校の陸上部に所属している、長めの黒髪をポニーテールにしてい黒髪のはっきりした目に細く長い眉に小さな赤い唇を持っている。わりかし童顔だ。
　だが童顔でも背は高くしかもだ。
「あんたまた大きくなっていない？」
「相変わらず胸大きいわね」
「一体どれだけあるのよ」
「カップ幾つ？」
「九十よ、カップはＥよ」
　美名は部活の後で部室で着替える時に答えた。
「大きくなっていないから」
「そう？」
「大きくなってるでしょ」
「またね」
「そうなってるでしょ」
「だから大きくなっていないから」　
　それは訂正する美名だった。
「全く、何で皆そう言うのよ」
「だってね」
「実際に胸が大きいから」
「滅茶苦茶大きいからよ」
「こう言うのよ」
「羨ましいからよ」
「羨ましいって言うけれど」
　美名はその言葉に返した、下着は上下共白でソックスもだ。学校の体操服である赤い半ズボンを脱ぐとその姿になっていた。
「結構嫌よ」
「嫌ってあれよね」
「重いっていうのよね、胸が」
「重しみたいでね」
「肩が凝って」
「あと走る時に邪魔なのよね」
「そうよ、だからね」
　それでというのだ。
「いいものじゃないわよ」
「いや、それ違うから」
「それだけ大きいと羨ましいわよ」
「物凄く目立ってるから」
「凄くね」
「だからね」
「そう言うけれど」
　それでもとだ、美名は制服に着替えながら返した。ロッカーが並んでいる部室の中で。
「これがね」
「違うっていうのね」
「重くて邪魔だって」
「そう言うのね」
「そうよ、私にしてみればね」
　美名は自分の意見を述べた。
「かえってよ」
「胸は小さい」
「その方がいいの」
「胸は」
「そうだっていうの」
「そうよ、これはね」
　まさにというのだ。
「重くて邪魔でね」
「仕方ないのね」
「どうにも」
「あんたとしては」
「そうよ、いいものじゃないわよ」　
　美名はまた言った。
「これがね、本当に胸はね」
「実は小さい方がいいのね」
「そう言うのね」
「あくまで」
「そうよ、持たざる者がどうとか言うけれど」
　美名は歴史の授業で聞いたマルクスの主張を思い出しつつ言った、語る教師はかなり否定的に言っていたが若い教師だった。その教師が言うには年配の教師はマルクスが好きな人が実に多いそうである。