おっちょこちょいのかよちゃん
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94 杯を守り抜け
前書き
《前回》
東京を訪れたありと悠一は東アジア反日武装戦線と交戦する。そのグループの一つ「狼」に対してシャクシャインから給与されたタマサイとテクンカネで応戦するが、彼らは既に赤軍と手を組んでおり、異能の能力をそのまま行使できる機械を赤軍の和光晴生から与えられていた。フローレンスやイマヌエルの介入により辛勝した二人だったが、戦いはまだ終わりではなく、他のメンバーが杯の所有者を狙っていると聞いたあり達は別のメンバーのいる現場へと急ぐのだった!!
安藤りえ。東京に住む小学三年生の女子であり、異世界にて最上位の能力を持つ杯の所有者でもある。りえは下校中に咳こんでいた。
「ゴホッ、ゴホッ・・・」
工業地帯のある地域では本当に過ごすのが辛い。さらには寒さも相まって風邪を引きやすくなる頃である。その為、のど飴を舐める事は毎日と言ってもよい。
「りえちゃん、今日も大変だね・・・」
りえのクラスメイトかつ親友でもある溝口みゆきが心配した。
「うん、静岡はよかったな、空気綺麗で・・・」
りえはあの夏休みの事を思い出す。
「私も静岡行ってみたいわ」
もう一人の友達である藤沢鈴音はりえの夏休みの話を聞いていたので一度は静岡へと行ってみたいという気持ちでいた。
「そうね、いつか一緒に行こうね」
その時、目の前に二人組の男女が立っていた。
「何かしら?」
「貴女、杯ってのを持ってるのかしら?できれば、こっちにくれるかしら?」
りえはビクッとした。杯と聞いたならば相手はおそらく異世界の敵か日本赤軍であろう。
「・・・嫌よ」
「何だと?」
「嫌よっ!絶対に渡さないっ!」
りえはもう一度答えた。
「何、なら、お前事奪ってやるよ」
「り、りえちゃん、逃げよう!」
「う、うんっ!」
三人は反対方向に向かって走り出した。だが、向かいにも別の三人組がいた。
「逃げられないぜ、お前ら纏めてやってやるか」
りえ達はもう戦うしかないと思った。
「りえちゃん、やるしかないわね」
りえ達は決意した。
ありと悠一は、フローレンスとイマヌエルに連れられて上空から東アジア反日武装戦線の他のグループのいる場所を探し、突き止めようとしていた。
「色んな人がいて見分けがつきにくいわね」
「はい、でも、その杯を持ちます者は小学三年生の女の子であります」
皆は工業地帯にある町にいた。
「おい、あれは!?女の子達が囲まれてるぞ!」
「まさにあの地に間違いない」
「少し離れた所に降ろさせてください。私達の姿は本当はあまり見られますといけませんので」
「いいわよ」
フローレンスとイマヌエルは二人を少女達と一つ向かいの曲がり角で降ろした。
「それでは、ご健闘を」
「ええ、さようなら」
フローレンスとイマヌエルは飛び去った。
「あり、行こうか!」
「ええ!」
その時、シャクシャインが現れた。
「お主らも丁度来おったか!」
「シャクシャイン!今杯の所持者が襲われている所なんだ」
「了解した!」
三人は現場へと急ぐ。
「さっさとよこしたまえ」
男の一人はりえ達に迫る。
「りえちゃん、下がってて」
鈴音はりえの前に立った。
「私が相手するわ」
鈴音が三人組の相手に対して出したのは錫杖のような物だった。
「なんだ、それは、君は法師かなんかかね?」
「そうだと思っても仕方ないわね」
鈴音は錫杖を振りかざす。その時、炎が飛び出して三人組の周りを取り囲んだ。
「この杖はね、炎と氷の能力を持っててね、相手を焼き尽くしたり、凍らせたりする事ができるのよ!」
対する二人組の男女にはみゆきが対抗した。みゆきが出したものはブーメランのような物だった。
「行け!」
みゆきがブーメランを二人組の男女に向かって投げるとブーメランから光線が出て周囲を爆発させた。
「そのブーメランは投げると危ないよ!当たったらもっと危ないね!」
ブーメランはみゆきの手に戻った。だが、また別の爆発が起きた。
「え!?」
「こっちも爆弾持ってんのよ!」
女が手榴弾を投げる。だが、みゆきも同時にブーメランを投げて応戦した為、りえ達には無償で済んだ。一方の鈴音が相手した三人組の男もなんと炎を突破していた。
「なんで、あの炎に火傷一つも負ってないの・・・!?」
鈴音には予想もつかない事であった。
(二人が戦ってる間に私も守んなきゃ・・・!!)
りえはみゆきが起こした爆発で転がったアスファルトの破片を杯に入れた。
「出てきて、地の精霊っ!!」
すると、地の精霊が現れた。その姿は小柄な老人だった。
「あいつらを追っ払ってっ!」
「了解した」
地の精霊は岩の壁を作り上げた。
「ふん、そんなもん、爆弾で壊せるぜ!」
男の一人が手榴弾を投げた。だが、地の精霊が作り出した岩の壁は頑丈で壊れなかった。
「く、手強い壁だな」
「あの赤軍の人から貰った機械を使うか」
(赤軍の人から貰った機械・・・!?)
りえは相手の会話に違和感を覚えた。赤軍の人間から貰った機械という事は少なくとも彼らは日本赤軍ではないのか。では異世界の人間か。その時、敵の一人が体当たりで岩の壁をぶち壊した。
「な、なんと!儂の鉄壁の壁が!!」
地の精霊にも予期せぬ事であった。
「なんで、貴方達は日本赤軍じゃないのっ!?」
りえは聞く。
「いいから寄こしな!」
相手はりえの質問に答えず、迫ってくる。
「返り討ちにしてっ!」
りえは地の精霊に命じた。鈴音も錫杖を使い、凍らせようとし、みゆきもブーメランで攻撃しようとした。だが、どれも利かなかった。
「まさか、私達みたいに元から持ってる能力があるのっ!?」
「はあ?そんなのなくても平気なんだよ!さあ、その杯を貰おうか!」
男の一人がりえに飛び込んでくる。りえは男の威圧に押されて動けなくなった。だが、その時、バギッという音がした。
「んだ!?」
「地の精霊、守ってっ!」
地の精霊は地面を爆発させた。そして男は他の者共々吹き飛ばされた。そして誰がやったのか急に電撃が発生し、りえ達には当たらなかったが敵は一瞬で気絶した。
「この人達、急に気絶しちゃったよ!」
みゆきは急な出来事に驚いた。
「何があったのかしら?」
「大丈夫、貴女達!?」
三人組の男女がその場に駆け付けた。
「貴方達は・・・!?」
「俺は北海道から来た煮雪悠一、こちらは妻のありだ。そしてこの人は異世界から応援に来たシャクシャイン。今の電撃は妻のこのタマサイという首飾りでアイヌの神を召喚して起こしたものだよ。それからこいつらは日本赤軍じゃない。東アジア反日武装戦線だよ」
「それって・・・」
「今都内の企業のビルを爆破している集団なんだ。奴らはいつの間にか日本赤軍と手を組んでいたんだ」
「それに静岡の清水に住む私の従弟の能力を複製して機械にしたものを使ってるからさっきの岩の壁や囲まれた炎を突破できたのよ。赤軍はその機械をこの人達に渡していたわけ」
ありは一名の人物のポケットを探ってある物を取り出した。
「これだわ。壊れちゃったけど」
「これを壊したのは俺のこのテクンカネってブレスレットで呼んだ二人の異世界の人間だよ」
「これが・・・」
「ああ、私が授けた物だ」
「そういえば貴女ね。杯の所有者ってのは」
「はい、安藤りえって言います。そういえば清水に従弟がいるって言ってましたよね?私、夏休みに清水に行った事があるんです。それに異世界の杖を持っている子とも会いました」
「へえ、もしかして、その杖の所有者って山田かよ子ちゃんって子?」
「は、はいっ!どうして知ってるんですかっ!?」
りえは驚いた。
「私。清水生まれでね、その実家に従弟が居候してるの。実家はそのかよちゃんの隣の家なのよ。それから異世界の護符ってのも知ってる?」
「あ・・・」
りえは夏休みに清水を訪れた日々の事を思い出した。確かかよ子が連れて来た高校生男子は自分は凡人とは違うものを持っている、さらに、その人物が連れて来た高校生男子は確か従姉が自分の杯やかよ子の杖と同様の位を持つ異世界の護符の所有者である、と言っていた。
「はい、夏休みに高校生の男の人とあってその話を聞きました。名前は確か・・・」
「三河口健っていうのよ。そして異世界の護符の所有者は私の妹なの」
「そうだったんですか・・・」
「俺達は君の持ってる杯を奪いに来た奴等を追い払う為に来たんだ。それで、君達のその杖とブーメランも異世界のものなのかい?」
悠一が聞く。
「はい!」
みゆきが答えた。
「そうか、俺達は明日北海道へ帰るけどまた君達と会えるかもしれないね、こいつらは俺達が警察に連絡しておくよ。君達は急いで帰るんだ」
「は、はい、さようならっ!」
りえ達は帰って行った。悠一とありも近くの電話ボックスにて警察に通報して空港のホテルへと戻るのであった。
(今日の事、かよちゃんにも伝えておいた方がいいわね・・・)
りえはそう思いながらみゆき、鈴音と共に下校し、電車通学の為、近くの駅にて電車に乗車するのだった。
フローレンスとイマヌエルは遠くからその様子を見ていた。二人は東アジア反日武装戦線が和光から託された機械を相手に気付かれずに念力のように破壊していたのだ。
「何とか杯は守り抜けたね」
「はい、ですが、また奪おうと赤軍は考えますでしょう」
「その時にまた、助けに行くべきだね」
二人は自分達が住む世界へと帰って行った。
かよ子は歌の練習をし続けていた。だが、歌の練習を続けるうちに喉が疲れてしまった。
「はあ、はあ、休憩しよう・・・」
かよ子は水でも飲もうと下の台所に降りた。
「かよ子、歌ってたのね」
「うん、クリスマスの合唱コンクールがあってね、私のクラスは『大きな古時計』を歌うんだよ。それで、私、1番の独唱の部分を歌う事になったんだ」
「あら、頑張ってね」
「うん!」
かよ子は母から水を貰って飲んだ。
後書き
次回は・・・
「遠方の出来事」
おばさんの娘やりえが東京で東アジア反日武装戦線や赤軍と戦っていた事を知り、脅威を感じるかよ子。りえは清水にいる友達の事を思い出す。かよ子は戦いの激化を実感すると共に合唱コンクールの練習を進めて行く・・・。
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