レーヴァティン

「そうしたものだ」
「それも世の中か」
「どの世界でもだ」
「それも真実ってことだな」
「そういうことだ」
　正はまた久志に答えた。
「そしてその領主はな」
「ああ、処刑することはな」
「決めたな」
「そんな奴用いられないからな」
　久志達の考えではだ。
「有能でも野心もなくてもな」
「一領主として留まる様な考えでもな」
「それまでの行いが問題だよ」
「本当にな、じゃあな」
「ああ、トランシルバニアを攻めてな」
「そしてな」
　そのうえでというのだ。
「降したらな」
「領主は処刑だよ」
「そうするな」
「ああ、これまでの罪の報いを受けさせるさ」
　久志は強い声で答えた、そうしてだった。
　軍勢をドナウ川沿いにトランシルバニアの方に向けさせていった、そしてトランシルバニアとの境に入ると。
　急に兵の動きが遅くなった、久志はその彼等に問うた。
「やっぱり怖いか」
「はい、ここから先は悪魔がいます」
「悪魔憑きの領主が」
「そう聞いていますから」
「俺達はどうも」
「それな、実際に捕虜を皆殺しにするらしいからな」
　久志も兵達の言葉を聞いて言った。
「あの領主は」
「それも八つ裂きとかですよね」
「車裂きとか串刺しとか」
「そうしてきますよね」
「捕虜を捕まえたら片っ端から」
「若しお前等が捕まったら俺達が助けてやる」
　久志は兵達に強い声で言った。
「そうするからな」
「陛下がですか」
「そうしてくれますか」
「若し俺達が捕まったら」
「助けてくれますか」
「絶対にな、術もあるしな」
　久志は兵達を安心させる為にも強い声で話した。
「それに俺達には神器もあるんだ」
「神器の力も使って」
「そうしてですか」
「何かあれば」
「俺達が捕まったら」
「助け出す、だからな」
　それでというのだ。
「安心して進め、そして戦いになってもな」
「助けてくれますか」
「俺達が捕虜になっても」
「そうなっても」
「ああ、誰一人としてな」
　兵達だけでなく自分にもだ、久志は誓いとして話した。
「助けてやる」
「そうしてくれますか」
「戦の時も」
「そうしてくれますか」
「だからな」
　それでというのだ。
「安心してだ」
「進めばいいですか」
「公爵の領内を」
「そうしていいですか」
「そして戦いになってもな」
　その時もというのだ。
「安心して戦え、いいな」
「わかりました」
「そのお言葉信じます」
「皇帝陛下のお言葉ですから」
「それなら」
「ああ、任せろよ。ただな」
　久志は兵達にこうも話した。