予防接種は絶対

「あの、その子は」
「何か？」
「僕の犬によく似てますね」　
　こう声をかけてきたのだ。
「どうも」
「そうですね」　
　見ればそうだった、同じ白いマルチーズだった。
「まるで兄弟みたいに」
「この子は雌でして」
「キャン」
　彼は自分が抱いているマルチーズを見ながら言ってきた。一声鳴いたその犬を。
「モカといいます」
「モカちゃんですか」
「僕は竹内雄太といいます、サラリーマンです」
「お仕事は」
「そうです、それでその子ですが」　
　コテツのことをさらに聞いてきた。
「名前は」
「コテツです」
「そうですか、コテツさんですか」
「雄でして」
　和美はさらに話した、そしてだった。
　彼、竹内雄太といい職業はサラリーマンである彼と色々と話しメールアドレスも交換しそこからさらにだった。
　親しくなった、真紀子は和美からその話を聞いてこう言った。
「よかったわね」
「ええ、凄くね」　
　和美もこう答えた。
「同じ種類の犬を飼っていて」
「それで予防接種の時に会って」
「それで縁が出来て」
　そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「メールアドレスも交換して」
「そしてね」
「今じゃ交際もなの」
「いい感じなのよ」
「よかったわね、それでだけれど」
　真紀子はさらに言った。
「それもこれもね」
「雄太さんと会えたのも」
「もう名前で呼んでるの」
「駄目かしら」
「和美も隅に置けないわね」
　このことは祝福する顔で応えた。
「中々。まあそのことはおめでとうとして」
「それでなのね」
「あんたがちゃんと予防接種に連れて行ったからよ」
「コテツをね」
「だからね」　
　それでというのだ。
「今こうしてね」
「縁も出来たのね」
「そうよ、犬を予防接種に連れて行くことはいいことよ」
「犬にとってね」
「病院を怖がらない犬はいないけれど」
　それでもというのだ。