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戦国異伝供書

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第百十四話 人取橋の戦いその三

 政宗は芦名家の軍勢にも鉄砲を放ち長槍を出してそうして戦い退けた、兎に角多くの鉄砲がものを言っていた。
 芦名家もその後に来た敵も退けていた、伊達軍はよく戦っていると言えた。だがそれでもであった。
 敵の数は多い、そしてその敵がだった。
 政宗の本陣にも迫ってきた、片倉はそれを見て政宗に言った。
「殿、ここは」
「下がれとは言わぬな」
「では」
「何の為に刀を抜いておる」
 片倉に不敵な笑みで返した。
「そして馬に乗っておる」
「さすれば」
「わしも背水の陣の中におる」
「それではですな」
「戦うぞ、そしてじゃ」
「時宗丸様ですか」
「こうした時こそじゃ」
 まさにというのだ。
「あ奴が来てくれるわ」
「さすれば」
「あ奴が来るまでな」
「戦いますか」
「そうする、あ奴はこの戦では常にここぞという時に敵の軍勢を攻めておる」
 その鉄砲騎馬隊であというのだ。
「そうして退けておるかなら」
「この度もですな」
「必ず来る、ではな」
「戦いまするか」
「皆の者臆するでない」
 政宗は周りの兵達にも告げた。
「助けはすぐに必ず来る、そして我等は強い」
「だからですな」
「殿もですな」
「何ともないですか」
「わしはここでは死なぬ」
 絶対にというのだ。
「だからじゃ」
「殿ご自身もですか」
「ここで戦われますか」
「そうされますか」
「そうじゃ、皆もわしと共に戦うのじゃ」
 こう言ってだった。
 政宗は自ら鉄砲を放ち刀を振るってそうしてだった。
 攻め寄せてきた敵の軍勢と戦った、敵の数は多かったが政宗の的確な采配と将兵達の武勇それに質のいい武具がものを言って。
 敵の動きを止めた、そこにだった。
 敵の横に成実が率いる鉄砲騎馬隊が来て鉄砲を撃った後で斬り込んだ、そうして敵軍を退けてだった。
 成実は政宗のところにきてこう言った。
「殿、ご無事ですか」
「この通りじゃ」
 政宗は馬に乗ったまま成実に答えた。
「わしは生きておる」
「それは何よりです」
「よく来てくれたな」
「来ると思われていましたな」
「何があろうともな」
「やはりそうですか」
「お陰で助かった、ではじゃ」 
 政宗は成実にあらためて告げた。
「これからもじゃ」
「はい、鉄砲騎馬隊を率いてですな」
「戦ってもらう、敵はまた攻め寄せて来る」
「左様ですな」
「だからな」
 このことがわかっているからだというのだ。
「また頼むぞ」
「承知しました」
「さて、次はどの家がどう攻めてくるか」
「そのことがですな」
「気になるが」
 それでもというのだ。 
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