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レーヴァティン

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第百八十話 トランシルバニアへその十

「しかもそれが自分だけの為なんてな」
「そんな領地この浮島にあったら」
「すぐに潰れるな」
「私達も潰すわね」
「ああ、というかな」
 久志はどうかという顔でさらに述べた。
「軍隊も自分の体制維持だからな」
「隣国の侵略も考えてね」
「それも自分の野心だしな」
「統一という大義があってもよ」
「まあ統一は実は考えていないって言われていてもな」
「どっちにしてもよ」
 清音は冷めた声で言い切った。
「もう自分の為だけにね」
「国を動かしてるな」
「私物化してるわ」
「美味いもんばっかり食ってな」
「それで建築もしているわ」
 今の話の主題のそれもというのだ。
「やたらとね」
「モニュメントとか銅像とかな」
「あとやけに大きな劇場とかも」
「そうだよな」
「ヒトラーを真似てね」
「そういえばヒトラーも建築好きだったな」
 終生巨大でかつ壮麗な建築物を好んだことで知られている。
「自分の為じゃなかったけれどな」
「ええ、しかもドイツは曲がりなりにも国力があったわ」
「そうだったな」
「そしてヒトラーはあんたの言う通り私利私欲で建てていなかったわ」
「ドイツを飾る為だったな」
「国民の意志高揚とね、けれどあの将軍様はどうも」
 件の人物はというと。
「ほぼ完全にね」
「自己満足の為に建てさせているよな」
「人民の意志高揚でなくね」
「自分の国だからな、完全に」
「そう思っているからよ」
 だからだというのだ。
「そうしていると思うわ」
「馬鹿な話だな」
「そしてそんな馬鹿なことは私達はしない」
「それだけでも全然違うな」
「そうよ、本当に明治天皇を忘れないことよ」
「だよな、国を動かすならな」
「贅沢に溺れないことよ」 
 このことが大事だというのだ。
「美味しいものを飲んで食べてもね」
「そうだよな」
「本当に特に建築はね」
「気をつけないとな」
「これが一番お金を使うから」
 国の財政を傾けるからだというのだ。
「それでよ」
「そういうことだな」
「始皇帝もそれが過ぎてね」
「秦はああなったしな」
 滅んだというのだ。
「民を酷使し過ぎてな」
「まああの国は財政負担よりもね」
「民の酷使が原因だな」
「法律は実は弾力的に使われていたらしいけれど」 
 史記等を読むとあまりにも過酷であり民を苦しめたとされているがその真相はそうであったという。
「しかも元々支持されていなかったし」
「嫌われていたっていうな、あの国」
「統一はしたけれどね」
「元々他の国から嫌われていたな」
「そうよ、そしてね」
 それでというのだ。
「そこに建築で民を酷使してね」
「余計に反感買ったな」
「始皇帝の圧倒的な力で治めていたけれど」
 その恐ろしいまでの政治力でだ。 
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