戦国異伝供書

「すぐにです」
「そうか、ではな」
「出陣の容易に入ります」
「城の留守は誰が守る」
　輝宗はこのことを問うた。
「七右衛門を」
「あの者をか」
「もう命じております」
　鈴木元信、彼にというのだ。
「その様に」
「そうか、七右衛門ならば大丈夫じゃ」
「左様ですな」
「ではな、お主の戦が終わればな」
「その時にですか」
「わしは出家する」
　こう我が子に話した。
「その様にする」
「わかり申した」
「では出陣せよ」
　今度は微笑んで告げた。
「これよりな」
「その様にさせて頂きます」
「そしてじゃ」
「これよりですな」
「まずは二本松を手に入れよ」
「それでは」
　政宗も応えてだった。
　すぐに出陣にかかった、即座にだった。
　水色の戦装束に具足を着けて陣羽織を羽織った、そうして出陣したが。
　二本松の城は落ちない、それで政宗は兵を進めつつその報を聞いて言った。
「中々か」
「はい、これがです」
「敵も守ってか」
「中々です」
　報をする者が述べた。
「落ちぬ様です」
「弥太郎が攻めてもか」
「左様です」
「弥太郎は当家一の猛将であるが」
「その小島殿が攻められても」　
　それでもというのだ。
「どうしてもです」
「陥ちぬか」
「敵も必死で守り」
「あの城はです」
　片倉がここで言ってきた。
「天然の要害で周りに砦も多く」
「それでじゃな」
「はい」
　どうしてもというのだ。
「容易にはです」
「攻め落とせぬか」
「そうした城です、しかも」
　片倉はさらに話した。
「敵兵も必死です」
「わしが当主殿を殺し晒し首にしたからか」
「それがです」
「怨みを感じてか」
「それで、です」
「皆籠城してか」
「あくまで歯向かうのかと」
「そうか、嵌めたまではよかったが」
「それからはですな」
「畠山家の意地を見誤ったとなるか」
「いえ、殿は既に」
　片倉はここで政宗に言った。
「もうこのことは」
「わかっておったとか」
「そうではないですか」
「何故そう言える」
「はい、今率いている兵は七千」
　片倉はその兵の数から話した。