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ドリトル先生と牛女

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第十二幕その六

「そして人に牛と書くね」
「人偏でね」
「そう書くね」
「ってことはだね」
「件って漢字は『くだん』から来たんだ」
「そうだったの」
「そう、どうも件は実在していて」
 そしてというのです。
「それでね」
「漢字にもなっていた」
「そうだったんだ」
「実は」
「うん、第二次世界大戦の時も出て来て」
 そうしてというのです。
「戦争を予言したとも言われているしね」
「ううん、滅多に出なくて」
「知名度はそんなにって思っていたら」
「その実はだね」
「結構有名な妖怪だね」
「そうだよ、件という文字は『くだん』からなってね」 
 先生は皆にお茶を飲みながらお話します。
「使われているんだ」
「じゃあ予言の意味もあるんだね」
「件って言葉には」
「『くだん』が予言するから」
「そうなるんだ」
「そうも考えていいね、『くだん』は結構深い妖怪だね」
 先生はしみじみとして言いました。
「生まれてすぐに死んでしまうことは可哀想だけれど」
「予言してすぐに死ぬことはね」
「確かに可哀想だよね」
「長生きしたいだろうに」
「それが出来ないことは」
「そうも思うよ」
 こう皆にお話しました。
「僕はね」
「そうだね」
「そう思うと牛女さんは戦争前から生きていて」
「今も生きていられるからね」
「幸せだよね」
「そうだね」
「うん、僕もそう思うよ」
 先生は皆にしみじみとした口調でお話しました、そうしてです。
 論文を書いて講義をして学問に励みお食事とお酒、お風呂そして皆と一緒の時間を楽しむ中で数日過ごすと。
 お昼休みに牛女さんがお供の人達を連れてやって来てでした。先生に対してこうしたことを言ってきました。
「今回は歯のこととは別にです」
「来られたのですか」
「はい、お渡ししたいものがありまして」 
 こう先生に言いました。
「まことに」
「といいますと」
「こちらです」
 こう言ってでした、牛女さんが出したものは。
 お守りでした、先生にそれを出して言うのでした。
「これを先生にと思いまして」
「お守りですか」
「はい、神社の」
「そうですね、日本の神社の」
「宜しければ持っていて下さい」
 そのお守りを差し出して先生に言うのでした。
「どうか」
「はい、これは何のお守りでしょうか」
「縁結びのお守りです」
「縁結びのですか」
「はい」
 そうだというのです。
「それをです」
「持って来てくれたんですか」
「そうです、この前のお話で」
「ええと、僕は恋愛に無縁という」
「はい、そのお話を受けまして」
 そうしてというのです。 
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