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戦国異伝供書

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第百十二話 はったりその十一

「これより」
「三人でな」
「茶を飲み」
「そしてずんだ餅もな、茶は奥羽ではまだ高いが」
 それでかなりの銭を出して買った、政宗にとっては信長がしているだけあって高い銭を出してもするべきものなのだ。
「わしの懐からな」
「出されたのですか」
「茶の分の銭を」
「まさか民の年貢から買う訳にもいくまい」
 それはというのだ。
「それで茶を買うのならな」
「戦に使いますな」
「そして政に」
「それに使いますな」
「そうしますな」
「それでな」
 だからだというのだ。
「わしが出した」
「左様ですか」
「贅沢をしても民に迷惑はかけぬ」
「そうされますな」
「殿としましては」
「それでわしが買ったが茶器まで揃えるとな」
 それがとだ、政宗は笑って話した。
「もう懐は空じゃ」
「空ですか」
「そうなりましたか」
「それはまた」
「随分なことですな」
「そうなった、しかし上方ではな」
 そちらはというと。
「茶が普通でな」
「織田殿も飲まれている」
「左様ですか」
「しかも天下の茶器を集めておられるそうじゃ」
 信長、彼はというのだ。
「わしは粗末なものを揃えたがそれで懐は寂しくなったが」
「それでもですか」
「織田殿については」
「その様じゃ、上方とこの米沢は全く違う」
「ですな、ここは田舎です」
「上方と比べますと」
「だからな」
 それでというのだ。
「何かと思うが茶を普通に楽しめる」
「そうなりたいものですな」
「当家にしましても」
「全くじゃ」
 政宗は二人に切実な顔で述べた。
「茶はかなりの勢いで広まってきて茶器もそうなっておる様じゃが」
「これからはですな」
「当家も」
「そうなる様にする」
 こう言うのだった。
「茶を誰で楽しめる様にな」
「伊達家の者なら」
「そうなる様にしますか」
「織田家の様に」
「そうなるのですな」
「織田家の様にな、織田家に勝つ為にはな」
 天下を手にする為に天下人である信長を倒すというのだ。
「織田家を手本にするが」
「織田家よりよくなる」
「手本にしてそのうえで」
「よりよいものになる」
「そうなりますな」
「藍じゃ」 
 政宗はこうも言った。
「要するにな」
「藍は青より出るが、ですな」
 片倉がすぐに言ってきた。
「青より青しですな」
「うむ、その通りじゃ」
「左様ですな」
「当家も然りじゃ」
「織田家を手本として」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。 
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