戦国異伝供書
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第百十二話 はったりその十
「そうする」
「それがよいかと」
「それがしも思いまする」
成実も言ってきた。
「上杉殿にはです」
「互角の兵では戦うべきではないな」
「二倍いえ三倍でなければ」
それこそというのだ。
「戦えませぬ」
「そうであるな」
「武田殿はお強いですが」
「わし以上にな」
「ですが」
その信玄でもというのだ。
「勝てるかといいますと」
「互角であるな」
「はい、兵の数がそうであるのならば」
「わしは武田殿程の戦上手ではない」
政宗は厳しい顔で言った。
「まだな」
「それはこれからですか」
「学び才覚を備えていくが上杉殿はな」
「その武田殿以上ですか」
「本朝であそこまでの戦上手の方となると」
それこそというのだった。
「かつての源九郎判官殿か楠殿か」
「お二人だけですか」
「まさにな、だからな」
「上杉殿とはですか」
「互角の兵では戦わぬ」
間違ってもというのだ。
「三倍以上の兵でないとな」
「戦われぬ」
「そうする、例え攻めてきても」
謙信、彼がというのだ。
「北条殿がそうされた様にな」
「戦を避けますか」
「戦えば必ず敗れるならな」
それならというのだ。
「決してな」
「戦うものではないですな」
「だからな」
それ故にというのだ。
「その様にする」
「上杉殿とは」
「力が備わるまでは」
「それもまた戦ですな」
「戦わぬこともな、この前まで戦い勝つことだけを考えておったが」
それがというのだ。
「織田殿を見ているとな」
「戦わぬことも戦である」
「その様にお考えになられましたか」
「そうなった、だからな」
それでというのだ。
「その様にする、それでじゃが」
「それで?」
「それでといいますと」
「これから茶を飲まぬか」
政宗は笑って二人に話した。
「わしが煎れるからな」
「茶ですか」
「それをですか」
「そうじゃ、それを飲むか」
こう言うのだった。
「ずんだ餅と共にな」
「あの餅ですか」
ずんだ餅と聞いてだ、片倉は述べた。
「殿が厨房で考えられた」
「うむ、あれでじゃ」
「茶を飲むのですな」
「そうするか」
こう言うのだった。
「これより」
「よいですな、では」
「それがしもですか」
成実も言ってきた。
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