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夢幻水滸伝

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第百六十七話 正攻法その十四

「それが大事だ」
「そういうことですね」
「勝鬨をあげるまでは」
「その時まではですね」
「勝ったと思わないことですね」
「特にこの戦で覇者が決まる」
 そうした戦だからだというのだ。
「尚更だ」
「そうですね」
「だからこそ余計に引き締めるべきですね」
「これで決まる戦だからこそ」
「尚更ですね」
「そのことは肝に銘じてもらう、そして」 
 英雄はさらに言った。
「海の中のことだが」
「モンスターですね」
「連中は戦の時も来ます」
「獣にしましても」
「奴等にも気をつけることだ」
 このことも忘れるなというのだ。
「いいな」
「承知しています」
「鮫は普通に出て来ますし」
「今も艦の周りをうろついています」
「下手に落ちれば餌食です」
 見れば沈もうとしている船の周りに背びれがちらちらしている、水兵達は戦の中で鮫達を槍や銃で攻撃して倒したり退けたりしている。
「そうした連中にもですね」
「注意しつつですね」
「戦っていくことですね」
「そうしてもらう、いいな」
 彼等のことも話しつつだった。
 吉川も采配を振るっていた、海での戦も激しいものであり日本軍と連合軍は戦闘開始間もなくながら多くの血を流していた。
 その中で太宰は兵達に言った。
「最初から激しい戦ですが」
「それでもですね」
「戦っていくことですね」
「その激しさに臆することなく」
「そうです、私もです」
 太宰は砲撃と銃撃、術と術の応酬、刀と槍がぶつかり合う中で話した。
「そうします」
「宰相さんは戦は苦手と言われますが」
「それでもですね」
「今はですね」
「戦場にいるのですから」
 だからだというのだ。
「戦い抜きます」
「なら我等もです」
「そうしていきます」
「宰相さんと一緒に」
「宜しくお願いします」 
 芥川は彼等に強い言葉で返した、そうしてだった。
 必死に采配を振るい術を使った、彼もまた戦っていた。戦場はその流す血を一瞬ごとに多くさせていた。


第百六十七話   完


                  2020・6・23  
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