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おっちょこちょいのかよちゃん

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81 運動会に向けて

 
前書き
《前回》
 三河口は中学生時代の昔話を行う。居候する事になった清水のおばさんの家で従姉のさりに歓迎され、かよ子と初めて出会った事、従姉との別れ、そしてさりが通っていた高校への受験。話を終えて皆が帰る時、かよ子は三河口からかよ子の通う小学校の運動会を見に行くと約束されるのであった!!

 今回からは運動会のエピソードです。「ちびまる子ちゃん」の映画第1作の運動会のエピソードを脚色したものです。なお、りえちゃんの手紙にあるビルの爆発については実際にありました連続企業爆破事件を元ネタとしています。 

 
 10月に入り、かよ子の学校では運動会が近くなっていた。クラスの会議の結果、大野と杉山が隊長と副隊長を務めることになった。そして、かよ子はこういう時にはあの二人が長としては適任だと思った。
「大野くう~ん、頑張ってえ~、私も応援してるわあ~」
 冬田は暑苦しく大野に近寄った。
「ああ、お前も頑張れよ・・・」
「やあん、ありがとおう~」
 冬田は嬉しくて興奮した。そしてクラスは運動会の準備に取り掛かる。かよ子は長山などと共に片付け中心の係なので本番の片付けまでは他の係の手伝い中心となった。
(よし、おっちょこちょいしないように頑張んなきゃ!!)
 かよ子はそう誓った。そして三年生が行う競技も決定した。男子は障害物競走と騎馬戦、女子は借り物競争と大玉転がしを行う予定だった。そして見世物として沖縄民謡を踊る事になった。また、皆は練習の為毎朝7時半には集合する事も決まった。
(7時半か・・・。寝坊しないように気を付けなきゃ!!)
 7時半となると6時前には起きなければ余裕がない。かよ子は少し心配しながら下校した。
「只今」
「お帰り」
 かよ子はまず母に報告する。
「お母さん、明日から運動会の練習で、朝7時半に集合だから早く行かなきゃいけないんだ」
「分かったわ、早く起こすから今日から早めに寝なさいね」
「うん」
「あ、そうそう、東京のりえちゃんから手紙が来たわよ」
 りえというのは東京に住む異世界の杯の所有者・安藤りえの事だった。三河口が通う高校の文化祭で日本赤軍がテロを起こした事をかよ子は手紙で彼女に伝えたのでその返事が来たのである。かよ子はそのりえの返事を部屋に持ち込んで中身を読んだ。

 かよちゃんへ

 お手紙ありがとうございます。赤軍が来たなんて大変だったね。私もかよちゃんが無事で何より安心しました。こちらは大きな会社のビルが幾つか爆発する事件があってそわそわしています。こちらはついこの前、ピアノのコンクールが合ったんだけど、優勝しました。今度は関東ピアノコンクールに参加する予定です。こっちも何かあったら連絡するね。

 安藤りえより

(りえちゃん・・・、そっか、東京も色々大変なんだ)
 かよ子は東京での事件にもぞっとした。

 夜、かよ子はいつもより30分ほど早く寝た。居間にてかよ子の両親が会話する。
「かよ子は今日は寝るの早いね」
「明日から運動会の練習が始まるからね、7時半集合だから早く起きなきゃいけないんですって」
「そうか、大変だね。ところで、東京の安藤りえちゃんからかよ子へ返事が来たって言ってたね」
「そうそう。東京でも企業のビルの爆発事件が相次いでいるそうよ」
「これも日本赤軍とかと関係あるのかな?」
「そうね、明日電話で聞いてみるわ」

 翌朝、かよ子が起きたのは5時40分頃だった。二度寝すると遅刻すると思ったので、その時点で顔を洗い、着替えた。
「お母さん、おはよう」
 丁度母も起きた所だった。
「あら、先に起きたのね。凄いわ」
 かよ子はその後、母の朝食の準備の手伝いを行った。そして6時40分を過ぎた頃に家を出て7時過ぎには既に学校に到着した。
「あ、たまちゃん、おはよう」
「おはよう、かよちゃん」
 たまえも既に来ていた。それだけではない。殆どのクラスメイトも「眠い」とは言いながらもちゃんと来ていたのだ。約1名を除いては。体操着に着替えてからかよ子は気づいた。
「あれ、まるちゃんは?」
「まだ来てないみたいだね」
 この大事な早朝練習でさえも遅刻かと自分以上のおっちょこちょいに少し呆れるかよ子であった。
「よっ、山田あ!」
 かよ子は杉山と出会った。
「あ、杉山君・・・!!」
「流石に寝坊はしなかったか」
「うん、気にしてたのかいつもより早く起きちゃったんだ・・・」
「そうか、練習頑張ろうな!」
「うん!あ、そうだ、杉山君・・・」
「ん?」
「夏休みに東京に来た安藤りえちゃんって覚えてる?」
「あ、ああ・・・、あいつか・・・」
 杉山は少し顔を赤くした。
(杉山君、りえちゃんが・・・)
 かよ子は微かな焦燥感を覚えた。 
「で、りえがどうかしたのか?」
「この前の高校の文化祭の事で手紙出したら、昨日返事が来たんだ。りえちゃんの住んでる東京でも会社のビルが爆破される事件が起きてるんだって」
「まじかよ!?あいつも大丈夫かな?」
「うん、でも、りえちゃん、ピアノコンクールで優勝したって。それで関東のコンクールの出場の資格貰ったんだ」
「そうか、あいつのピアノ、最高だもんな」
「うん」
「よーし、皆、集合だ!!」
 その時、校庭にて大野が呼ぶ。そして隊長・大野、副隊長・杉山を前に皆集合した。
「全員集まったか?」
「あれ、さくらさんは?」
「まるちゃんがいない!」
「何!?あいつ・・・」
 大野と杉山は寝坊癖のズボラな女子に怒りを覚えた。
「まあ、いいや、皆、校庭一周してそれから準備体操だ!」
 皆はランニングして準備体操を始めた。準備体操を終わった頃、まる子がようやく現れた。大野と杉山はもちろん怒る。
「さくら、遅いぞ!皆ちゃんと来てるのに遅刻したのはお前だけだ!!」
「罰として校庭三周走れ!」
 まる子は走らされた。
「その他の者は競技と踊りの練習だ」
「さっさと移動しろ」
 初日は男子は騎馬戦、女子は借り物競争の練習を行った。かよ子も転んだり、ゴールの方角を間違えるなどのおっちょこちょいをしないように気を付けながら練習に励んだ。練習の中、かよ子はちらっと男子の騎馬戦の練習を盗み見る。大野と杉山の指揮で男子達は連携力を高めていた。
(杉山君達凄い強いなあ・・・)
 かよ子はきっと大野と杉山が統率する騎馬隊なら最強無敵だと思った。借り物競争および騎馬戦の練習が終わると次は沖縄民謡の練習を行う予定だった。この時はランニングで借り物競争の練習に参加できなかったまる子も合流した。
「よし、朝の練習はこれまでだ。放課後は応援の準備に取り掛かるからな」
「授業が終わっても帰るなよ」
 皆は解散した。そしてかよ子はまる子に声を掛ける。
「まるちゃん、まさかこの日も遅刻するなんて・・・」
「ああ、ホントだよお~、急いで走ったのに、また走らされるなんて・・・」
「私でも遅刻はしなかったよ・・・」
「おっちょこちょいのかよちゃんも来てたなんて・・・」
 それを傍で聞いていたたまえととし子は一体どっちが酷いおっちょこちょいなのか分からなくなっていた。

 朝10時半過ぎた時の、山田家。まき子は家事を全て終えた後、ある家に電話した。
『はい、安藤です』
「おはようございます。東京の安藤さんですか。夏休みにお会いしました静岡・清水の山田です」
『ああ、山田さん!ご無沙汰しております』
「先日は娘のかよ子がりえちゃんに出した手紙なのですが、昨日、無事にそのお返事頂きました。どうもありがとうございます」
『いえいえ、こちらこそりえもかよちゃんから手紙を貰って喜んでましたよ。あと、手紙を読んで心配もしていました』
「ああ、そうでしたか、所でりえちゃんのお返事なんですが、東京で様々な企業のビルが爆破されていると聞くんですが、それって日本赤軍とかが関係してあるんでしょうか?」
『ああ、あれは日本赤軍ではなく、極左暴力集団という組織による犯行と言われています』
「極左暴力集団・・・?」
『東アジア反日武装戦線とも言いまして、メンバーの一部が北海道出身で反日やアイヌの革命を目的とする組織の事ですね』
「そうなんですか・・・。安藤さん達も巻き込まれないようにお気をつけなさってください」
『はい、ありがとうございます。では』
「失礼いたします」
 お互い電話を切った。まき子は別勢力の脅威を感じた。異世界の敵や日本赤軍とはまた違った東アジア反日武装戦線の脅威に・・・。

  かよ子は朝の練習で眠たそうにしながらも授業に臨んでいた。途中で・・・。
「山田さん、山田さん?」
 かよ子は戸川先生に起こされた。
「は、はい!」
「大丈夫ですか?居眠りをしてはいけませんよ」
「ご、ごめんなさい・・・」
 かよ子は恥ずかしくなったが、どこかでいびきが聞こえた。まる子もまた居眠りをしていたのだった。当然彼女も注意された。
「皆さん朝の運動会の練習で疲れているのですか」
 皆もちろん「はい」と答えた。しかし、その疲れにも耐えながらも授業を受講するのであった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「北海道と沖縄」
 放課後の運動会の準備も終わり、下校したかよ子は東京の爆破事件の元凶が東アジア反日武装戦線という組織である事を母から聞く。そんな中、かよ子は運動会の競技・沖縄民謡の特訓を続けて行く・・・。 
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