戦国異伝供書
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第百十一話 政宗の初陣その六
「周りに常に多くの目を置き」
「そして見つけ出す」
「そうした敵がいても」
「そうしますな」
「常に」
「そうする、夜討ちや伏兵もな」
そうした攻めもというのだ。
「前以て見付けれていればどうということはないな」
「はい」
その通りだとだ、片倉は主に答えた。
「そのことは」
「そうであるな、だからな」
「ここは、ですな」
「斥候も忍もな」
どちらもというのだ。
「近くにも遠くにも出し」
「敵を見張らせる」
「そうする、それと兵糧であるが」
これの話もするのだった。
「用心しておくことじゃ」
「若しなくなれば」
成実が言ってきた。
「まさにですな」
「戦なぞ出来ぬからな」
「だからですな」
「それがなくならぬ様にな」
「用心することですな」
「そうせよ、ただ民や田畑はな」
そちらはというと。
「相馬家のものであってもだ」
「手出しはせぬことですな」
「やがて当家の民になりじゃ」
そしてというのだ。
「宝となる、だからな」
「手出しはせぬことですな」
「城を青田刈りで攻めることはするが」
それでもというのだ。
「わしが言わぬ限りはじゃ」
「民にも田畑にもですな」
「手を出すでない」
決してというのだ。
「ような」
「さすれば」
「その様にな、領地から兵糧を運ぶ」
自分達のそこからというのだ。
「その道が危うくなるならな」
「その時は」
「すぐに退いてじゃ」
そうしてというのだ。
「戦を終えるぞ」
「わかり申した」
「その様にな」
このことも話すのだった。
「今は」
「はい、それでは」
「兵糧のことはな」
「注意しておきます」
「常にな、そして暫くはな」
「相馬家の軍勢を破っていきますな」
「相手が来ればな」
その時にというのだ。
「よいな」
「では暫くです」
「敵を散々に破っていきましょう」
「そして相馬家の領地を多く奪い」
「かつ若君のお力をですな」
「周りの諸家に知らしめるぞ」
こう言ってだった。
政宗は実際に軍勢を率いて戦い続け相馬家の領地の多くを奪い取った。中には調略で伊達家に取り込んだ者もいた。
そのうえでだ、彼は頃合いと見て片倉と成実に話した。
「ではな」
「はい、これでですな」
「敵を散々に破り多くの領地を得ました」
「数多く戦いに勝ち周りに若君の武勇を見せました」
「だからですな」
「これで下がろう」
米沢までというのだ。
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