八条学園騒動記
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第五百八十七話 開演してその一
開演して
舞台がはじまった、ここで。
マルティは舞台に入る前にネロに声をかけられた。
「じゃあね」
「今から行って来るよ」
「それじゃあね、ただね」
「ただ?」
「あがらないでね」
「ああ、そのことはだね」
「あがるとね」
そうなると、というのだ。
「動きも口調も硬くなってね」
「演技に支障が出て」
そしてというのだ。
「そのうえで」
「演技が下手になるから」
それでというのだ。
「気をつけてね」
「じゃあね、これまでの練習を思い出して」
「そしてね」
それでというのだ。
「落ち着いてやっていってね」
「そうだね、じゃあ」
「練習と思って」
「やっていったらいいね」
「その意気だよ」
こう言ってそうしてだった。
ネロはマルティを舞台に送り出した、すると。
マルティも他の面々の演技もかなり自然なものだった、それを見て今は舞台の裏側にいるスターリングが言った。
「うん、今のところはね」
「大丈夫だね」
菅も頷いた、彼も今は出ていない。
「この調子だと」
「そう、そしてね」
「そして?」
「このままいけばね」
「ああ、最後までだね」
「もうそれでね」
こう菅に言うのだった。
「いいね」
「何もないことが一番」
蝉玉も言ってきた、三人共舞台衣装である。そのうえで話をしているが内心この服は動きにくいと思っている。
「そうよね」
「やっぱりね」
「それに越したことはないわね」
「本当にね、ただね」
「ただ?」
「暑いね」
ギルバートはその衣装の話をした。
「どうにも」
「ああ、そのことね」
「書くがしていたけれど」
「動きにくいし」
「どうもね」
「けれどタイツでないから」
菅はこのことを指摘した。
「随分とね」
「ましだね」
「ギルバートもタイツは嫌だね」
「どうもね」
ギルバートもこう返した。
「あれは恥ずかしいよ」
「そうだね」
「ロミオとジュリエットはエウロパではタイツらしいけれど」
「あっちはもうね」
「この時代の服はタイツだね」
「そこまで再現するから」
菅は話した。
「だからね」
「そうだよね」
「タイツでね、僕達も」
「それでだね」
「かなり恥ずかしいものだったよ」
「そうでないだけましだね」
「本当にね」
二人でこう話した。
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