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べとべとさんがいたので

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第二章

「ここにな」
「住んでもらえればいいわね」
「ああ、家があるならな」
 それならというのだ。
「住めばいいだろ」
「雄馬さんの職場上本町だし」
「桜井からなら電車で一直線だ」
 近鉄線でというのだ。
「ならな」
「それでもいいわね」
「そりゃ東大阪よりずっと遠いけれどな」
 それでもというのだ。
「家ならな」
「ここにあるから」
「住んでもらってな」
 そしてというのだ。
「通勤してもらえばいいだろ」
「美沙がパートを言っても」
「それはそれでな」
「お話した方がいいわね」
「それがいいな」
 夫婦でこうした話をした、そしてだった。
 娘一家が来たのを迎えた、二人は娘夫婦以上に孫達を笑顔で迎えて思い切り可愛がった、するとだった。
 娘の美沙、三十五になって昔は夫婦が見て可愛かった顔に皺ついでに肉がついてきた彼女にこう言われた。少し皺と肉が目立ってきている顔は目はアーモンド形で細い眉で茶色の髪の毛を短くしている。背は一六〇位で身体にも肉がついてきている。大きな口が目立っている。全体的に母親似であるが目元と口元は父親に似ている。
「お父さんもお母さんもね」
「幸也と美香子をか?」
「甘やかし過ぎっていうのね」
「そうよ。和菓子とか玉露とかね」
 そうした高価なものはというのだ。
「出さなくていいから」
「普通のお菓子とお茶か」
「それでいいの」
「いいわよ」
 そうしたものでというのだ。
「本当にね、うちは贅沢はさせてないから」
「子供達にか」
「そうなの」
「それで躾もね」
 これもというのだ。
「厳しくしてるし」
「そう言うけれどな」
 父は娘に話した。
「わし等にとっては孫だしな」
「孫は可愛くて仕方ないものよ」
 母も娘に話した。
「折角出来たのに」
「大事にしたいだろ」
「だからね」
「そこはな」
「駄目よ、孫でもね」 
 幾ら可愛くてもというのだ。
「甘やかさないことよ」
「お前うちに来たらいつもそう言うけどな」
「たまにはいいじゃない」
「たまにでも駄目よ」
 娘の言葉は強いものだった。
「いつもそれなりに厳しくしないと」
「だからお菓子やお茶もか」
「普通のでいいのね」
「そうよ」
 それはというのだ。
「本当にね」
「美沙は厳しいわね」
 母はやれやれといった顔で言った。
「本当に」
「誰に似たんだ」
「不思議よね」
「何言ってるの、お父さんとお母さんに躾られたからよ」
 娘の言葉は強いものだった。 
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