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スイッチオン

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第四章

「どうして試合前元気なかったの?」
「どうしたの?」
「そのことは」
「それはね」
 麻美はこう答えた。
「何となくなの」
「理由ないの」
「そうなの」
「理由なくスイッチオフになるの」
「そうなるの」
「そういえば」
 言われてみると、とだ。部員達も頷いた。
「麻美ちゃんそうよね」
「いつもそうよね」
「その日はオフでもね」
「次の日はスイッチ入ってたりするし」
「その逆もあったりして」
「波凄いわね」
「そうよね」
「それでね」
 麻美はさらに話した。
「今回もね」
「今日はオフだった」
「そうだったのね」
「理由なく」
「私どうも朝起きて」
 それでというのだ。
「スイッチ入ってたりなかったりするの」
「それで今日は入ってなくて」
「急に入ってなのね」
「頑張れたのね」
「そうだったの」
 これがというのだ。
「けれど入ってよかったわ」
「本当にそうね」
「そうなって何よりだったわ」
「どうしてスイッチ入ったかわからないけれど」
「勝てて何よりだったわ」
 皆このことは素直に喜んだ、そして学校に帰るとお菓子とジュースで祝勝会を開いた。そのうえで全国大会に向かうことにしたが。
 家でこのことを話した麻美にだ、母はこう言った。
「ああ、あんたのスイッチね」
「今日急に入ってよかったわ」
「それね、あんたお握り食べたり名前聞くとね」
「私お握り大好きだけれど」
「スイッチ入るのよ」
 そうなるというのだ。
「それでね」
「えっ、そうだったの」
「あんた確かにその日その日で滅茶苦茶波があるけれど」
 スイッチが入ったりそうでなかったりというのだ。
「それでもね」
「スイッチが入ってなくてもなのね」
「もうね」
「お握りでなの」
「昔から入るのよ」
「そうだったのね」
「自分では気付いていなかったみたいだけれど」 
 それでもというのだ。
「昔からあんたはね」
「そうだったのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「今日もロッカーでね」
「お握りって聞いてなの」
「スイッチが入ったのよ」
「成程ね」
 麻美はこのことに気付いていなかったがそうだったのだ、それで気付かないまま母の言葉に頷いたのだ。
「そうだったのね」
「だからあんたいつも調子がいいままでいたかったら」
「お握りね」
「それ食べればいいのよ」
「今そのことに気付いたわ」
 麻美自身もだ。
「正直驚いてるわ」
「そうでしょ、けれどこれですいっちは言ってない時のことはわかってでしょ」
「その時の私本当に動かないけれど」
 かろうじて歩ける位だ、自分でもその時はスイッチが入っていないとわかるのだ。
「そうすればいいのね」
「そう、お握り食べてね」
「そうして」
「頑張っていけばいいのよ」
「じゃあこれからはそうしていくわね」
「それがいいわ、じゃあ試合の日はね」
「お握りね」
「これから大事な時はそれを食べなさい」
 娘に微笑んで告げた、そうしてだった。
 麻美はこの時から大事な日は朝にお握りを食べる様になった。するといつも調子よく頑張ることが出来た。


スイッチオン   完


                  2020・8・19 
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