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ケルベロス

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第六章

「だからな」
「それでか」
「あの者を許した、そしてな」
「ケルベロスもか」
「わしも認めたのだ」
 オルフェウスの願い、それをというのだ。
「だからな」
「そうしたか」
「それでだが」
 ハーデスはゼウスにあらためて言った。
「これでおおよそわかったか」
「ケルベロスのことはか」
「あの者は真面目で忠誠心が高くな」
「犬らしくだな」
「あの様に音楽も好きだ」
「だからか」
「あれでだ」
 まさにというのだ。
「可愛いところがあるのだ」
「犬らしいか」
「性格はな」
「そういうことか」
「これでわしの言ったことがわかったか」
「姿は怖いがな」
「それでもだ」
「真面目に働いてくれてそなた達への忠誠心は高く」
 ゼウスも言った。
「よく懐いていてか」
「音楽も好きでな」
 それでというのだ。
「我等冥界の神々にとってはな」
「頼りになる可愛い者か」
「そうだ、だからわしは好きだ」
 ケルベロス、彼がというのだ。
「心からな」
「そういうことか」
「そうだ、では今度は海界に行くか」
「そこでだな」
「ポセイドンと遊ぼう」
 自分達の兄弟であるこの神と、というのだ。
「そうしよう」
「そうだな、ではな」
「今度はそうしよう」
「是非な」
 ゼウスは笑顔で応えた、そしてだった。 
 酒を飲みつつまたケルベロスを見た、犬は今も音楽に聴き入っていた。
 それで宴が終わり冥界を去る時にだ、ケルベロスに自分から声をかけた。
「またな」
「はい、またいらして下さい」
 ケルベロスはゼウスとヘラを笑顔で送った、そしてだった。
 ゼウスはオリンポスに戻るとヘラに言った。
「ハーデスはいい者と暮らしているな」
「左様ですね」
「頼りになる者だ、ケルベロスは」
「心のいい」
「非常にな」
「ハーデスの言う通りに」
「実にな」 
 こう言ってそしてだった。
 今度はポセイドンのところに行こうと話した、そしてまた楽しもうと。


ケルベロス   完


                 2020・8・17 
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