アクロバティッククラブ
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第四章
「しかしでござる」
「ああ、はじめての競技だしな」
「拙者は二回目でござる」
朋子はそうだった。
「それでもでござる」
「まずはか」
「完走でござるよ」
何といってもというのだ。
「競技に出るからには、そして」
「そして?」
「マラソンを完走した時の達成感も凄いと思うでござる」
「ああ、それはな」
実際にとだ、子安は朋子に答えた。二人共シャツに半ズボンという陸上競技の恰好だ。周りも大抵そうした格好だ。
「あんないい気持ちないぜ」
「それはトライアスロンも同じでござるが」
「遠泳と自転車もあるからか」
「尚更でござるよ」
「そんなに凄いんだな」
「そうでござる」
子安に笑顔で話した。
「だからでござるよ」
「是非か」
「完走するでござる」
「それを目指すか」
「これからそうするでござる」
「それじゃあな」
子安は朋子のその言葉に頷いた、そうしてだった。
朋子と共に競技に参加した、そのうえで。
自転車をやり水泳をやった、最初から汗をかき体力の消耗が激しい、だが。
二つの競技をクリアーしてだった、最後のマラソンに入り。
そのマラソンをだ、子安は走っていった。既にかなりの体力を消耗していたがここまで来て止められるか完走してやると強く願いつつ。
走り続けた、普段のマラソンよりも遥かに辛かったが。
ひたすら走り続けた、そうして。
遂にゴールした、その時に。
これまで感じたことのない達成感を感じた、これ以上はないまでの苦難を乗り越えて最高の何かを実現した様な。
それで何とも言えない気持ちになっていると。
そこに朋子が来て言ってきた。
「完走したでござるな」
「ああ、蜂須賀もだよな」
「したでござる、それでどんな気分でござるか」
「最高、いや」
こう朋子に言った。
「こんな気持ちははじめてだよ」
「そうでござるな」
「とんでもないことを達成したみたいな」
「これがトライアスロンでござるよ」
「そうなんだな」
「優勝も大事でござるが」
一番になる、競技の究極の目的である。
「しかしでござる」
「完走すること自体が」
「素晴らしいことでござる」
「そうなんだな」
「それでどうでござるか?」
朋子は疲れ切っていた、だがこれ以上はないまでの満足感の顔で子安に問うた。
「またこの達成感味わいたいでござるか」
「ここまでくることが最高に大変でもか」
「そうしたいでござるか」
「ああ」
子安も最高の満足感の顔で答えた。
「是非な」
「それならでござるよ」
「続けるべきか」
「また味わいたいなら」
「それじゃあな」
子安はこう言ってだった、そうして。
トライアスロンを続けた、陸上部のマラソンも続けたがそれと共にだった。
あの満足感を味わう為に続け実際に味わった、その横には朋子が常にいた。そうして二人で満足感を堪能した。
アクロバティッククラブ 完
2020・7・14
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