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戦国異伝供書

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第百十話 兄と弟その十一

「茶器も揃えてな」
「そうしてですか」
「しようとな」
 その様にというのだ。
「考えておる」
「それでそれがしもですか」
「するか」
「はい、何やらです」
 小次郎は興味深そうに頷いて述べた。
「面白そうなので」
「そうしたことをすることもな」
 それもというのだ。
「武士の嗜みになってきておるからな」
「だからですか」
「家の他の者達も集めてな」
「そうしてですか」
「皆な」
 家の者達もというのだ。
「飲もうぞ」
「茶を」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「楽しもうぞ、何でも織田家ではな」
「あの家では」
「その茶道が織田殿ご自身がお好きでな」
「織田吉法師殿が」
「それでじゃ」
「家中で、ですか」
「広まっておるという」
「左様でありますか」
「随分とな」
 そうなっているというのだ。
「どうもな」
「天下人の家では」
「織田殿は何でも酒が飲めぬという」
「そうなのですか」
「それでな」
 このことがあってというのだ。
「あの方はな」
「茶をですか」
「お好きでな」
 それでというのだ。
「何かとじゃ」
「そうですか」
「だからわしもな」
「茶道もですな」
「していく」
「そうですか」
「奥羽は都と遠くな」
 そしてというのだ。
「どうしてもそういうことはな」
「縁が薄いですな」
「安達ケ原では鬼が出るとさえ言われた」
 かつてはというのだ。
「鬼婆がな」
「あの話ですか」
「まことの様じゃが」
「あれはまことの話ですか」
「どうもな」 
 政宗は真顔で話した。
「その様じゃ」
「そうだったのですか」
「うむ、しかしな
「鬼が出るまでに」
「奥羽は僻地と言われ」
 そしてというのだ。
「そうしたな」
「文化の話とはですな」
「縁が薄いと言われておったが」
「これからは」
「上方に入り天下も治めるし」 
 それを目指すこともあってというのだ。
「それでzた」
「そうしたこともですな」
「どんどん学んでな」
「身に着け」
「奥羽の者は野蛮だの何だのな」
「その様なことは言われぬ」
「その様にしていこうぞ」
「さすれば」
「だから茶道もな」
 これもというのだ。
「していこうぞ」
「そうなりますな」
「うむ、ではな」
 政宗は弟とこうした話もして茶道も入れていっていた、奥羽にあっても彼はその隻眼で遠い都そして天下を見ていた。


第百十話   完


                 2020・8・15 
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